岩谷圭介さん講演会リポート

講演会「“やってみる”から始めよう! ~チャレンジ! 夢の宇宙写真!~」(1)

絵本『うちゅうはきみのすぐそばに』の文章を手がけた岩谷圭介さんは、風船を使って宇宙の写真や映像を撮影する「ふうせん宇宙撮影」を行いながら、その実験と研究の過程で知った「やってみる」ことの大切さを、講演会やワークショップを通じて、子どもたちに伝えています。
2018年2月24日に宮崎科学技術館で行われた講演会では、大きなプラネタリウムに絵本を投影した読み聞かせから始まり、「ふうせん宇宙撮影」について、「やってみる」ことの大切さについて、じっくり聞くことができました。当日の様子をリポートいたします。

講演会「“やってみる”から始めよう! ~チャレンジ! 夢の宇宙写真!~」

岩谷圭介

風船で宇宙を撮影する?

こんにちは、岩谷圭介です。先ほど読み聞かせがあった『うちゅうはきみのすぐそばに』、いかがでしたか。この絵本は、私のしている仕事の中で感じたことをお話にしています。
私は風船を使って宇宙の写真や映像を撮ることを仕事にしています。絵本の中に、風船があったことに気づきましたか? この丸い風船は、私が実際に飛ばしている風船と同じものなんです。風船がこんなに高い所まで行くなんて不思議ですよね。どうやって飛ばしているんでしょうか。


実際どんな風になっているのか、見てみましょう。まず、カメラや機械が入っている装置に大きさが2mくらいの風船を取りつけて、空に飛ばします。風船は、雲を超えてどんどん上がっていきます。さらに上がっていくと、空気が少なくなってきて、昼間なのに空が暗くなります。地上では見ることができない、不思議な景色です。そしてもっと上がると、もう空はほとんど真っ暗。空気もなくなります。風船は、周りの空気がなくなると大きくなる性質があるので、ここまでくると飛ばした時の100倍くらいの大きさになっています。膨らみすぎた風船が割れると、装置は地球の引力に引かれて落ちていきます。パラシュートが開いてゆっくりと海の上に落ちるようにしているので、GPSが教えてくれる場所まで、船に乗って取りに行きます。波が高い日は、振り落とされそうになったりしてとても大変です。このあたりにはイタチザメっていう獰猛なサメがいるので、落ちるわけにはいかないんですね。命がけで回収しています。
こんなことを8、9年続けているうちに、いつの間にかこれが仕事になっていました。

大好きな宇宙に、どうしても自分で触れてみたい!

原点は、大好きだった絵本と映画

誰もやっていない風変わりな仕事をしているので、「なんでこんなこと始めたの?」ってよく聞かれます。「なぜ始めたか」、それは自分でも分からないんですが、「どうしてやりたいと思ったか」は説明できると思いますので、それをお話ししたいと思います。


みなさん、大好きなものがあると思います。子どもの頃から大好きなものってなかなか変わらないんじゃないでしょうか。私には、『宇宙ステーション』(福音館書店・品切)という大好きな絵本がありました。今でもすごく細かいところまで覚えているので、この本が私を宇宙好き・科学好きにしてくれたんだなと思います。もう一つ大好きだったのが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画に出てくる、「ドク」というちょっと危ない感じの科学者です。科学を使って何でも可能にしてくれるその姿が、私の憧れだったんです。

諦めきれない、宇宙開発への思い

科学と宇宙と発明が大好きなまま育った私は、大学では航空宇宙の研究をしていました。自分自身でロケットを飛ばして宇宙に触れられるかな、という淡い期待を持っていたんです。今日はここにロケットの模型を持ってきました。これはサタン5という、月面まで人を送ったロケットです。アポロ計画に使われました。このロケットに対して、人って皆さんの爪くらいの大きさです。そしてこのロケットは、40万個のパーツで作られています。

大学で学べば学ぶほど、そんな複雑なロケットを自分で作ることは到底不可能だと分かってきたんです。でも、自分で宇宙のことをやってみたいという気持ちも捨てられずに、どうしたら何かできるんだろうと、悶々としていたんですね。
そんな時に、風船だったら宇宙に触れることができそうだということを知ったんです。ロケットはとても複雑ですけど、風船は簡単ですね。だから自分でもできるかもしれない、じゃあやってみようと思いました。そんなわけで、「どうしてこんな仕事をしているの?」の答えは、「大好きだったからやっているだけ」というのが正直なところなんです。



「“やってみる”から始めよう!」(2)へ
 
いわや けいすけ
1986年、福島県生まれ。北海道大学工学部在学中より風船を使った宇宙開発に取り組み、卒業後会社を設立し研究開発を進めている。執筆や講演活動なども。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。』(キノブックス)がある。詳しくは、ホームページ(「ふうせん宇宙撮影」)へ。

2018.03.20

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事