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読み終わると、あたたかい気持ちが広がるクリスマスの物語『クリスマスがちかづくと』

読み終わると、あたたかい気持ちが広がるクリスマスの物語

『クリスマスがちかづくと』

だれもが胸を躍らせる、楽しくて華やかなクリスマス。でも、10才の男の子セロは、毎年憂鬱な気持ちでクリスマスを迎えます。クリスマスの日はいつも、お父さんも、お母さんも留守。仏頂面の子守のおばさんと二人で過ごすクリスマスは、セロにとって寂しくて寂しくてたまらない一日なのです。「クリスマスなんて、だいきらい」と、セロはいつも思っていました。
ある日、セロは思い切ってお母さんに聞いてみました。

クリスマスは家族でにぎやかに過ごすって本当なの? 
どうしてお父さんは冬になると家に帰ってこなくなるの? 

するとお母さんは、お父さんの驚くべき秘密を、セロに告げたのです。言われてみれば、思い当たる点はたくさんありますが、その秘密を知ったからといって、クリスマスが近づくにつれて募っていく寂しさは変わりません。セロの気持ちを知ったお父さんは、今年のクリスマスはどこにもいかないと約束してくれ、セロも喜んでいたのですが……。

独特な世界観を持ったクリスマスのお話を書いたのは、『どろぼうのどろぼん』『せなか町から、ずっと』を手がけた、詩人の斉藤倫さん。セロが感じる寂しさと、それを乗りこえたところに現れるあたたかさを、巧みな情景描写とともにつづります。そして絵を描いたのは、マンガやアニメーションも手掛ける、くりはらたかしさん。セロの心の動きに寄り添ったイラストレーションは、斉藤さんの言葉と響き合いながら、物語の世界を広げます。

きらびやかな街中のイルミネーション、ずらりと並んだごちそう、プレゼントを持ってきてくれるサンタクロース。子どもたちが楽しみにしている華やかなクリスマスの陰には、セロとお父さんの物語がひっそりと隠れているのかもしれませんね。

2017.12.18

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