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大根の生きざまが、人に教えてくれるもの『大根はエライ』

大根の生きざまが、人に教えてくれるもの

『大根はエライ』

大根は日本でもっとも食べられている野菜のひとつで、日本の食卓には、毎日のように大根が登場します。おでんや鍋だけではありません。すりおろせば大根おろし。納豆やナメコに合わせたり、焼き魚やおそばに添えられたりします。ほかにも、漬けものやみそ汁、千切りにしてお刺身のツマにもなりますし、サラダにもなります。そして、料理として味わうだけでなく、ビタミンが豊富で、胃腸にやさしく、殺菌効果もあります。


でも、そんな実力派なのに、大根はどこか奥ゆかしい感じがします。メインの食材を引き立てるため脇役に徹しているよう。“大根ってほんとうはすごいのに、なぜか目立たない。大根は、もっと主張してもいいのではないか?”……作者の久住昌之さんが、そんな思いから大根の生きざまについて考え、シンプルで味わいのあるイラストとともに、独自の目線でユーモラスに描いたのが、この『大根はエライ』です。

漫画家、エッセイスト、音楽家など、多方面で活躍をされていて、最近では、テレビドラマにもなった漫画『孤独のグルメ』(扶桑社 刊)の原作者として知られている久住さんは、この『大根はエライ』のために大根のことを調べながら、次のように思ったとしたためています。
「大根は逆らわない。いろんな形で、ほかの食べ物となじむ。ほかの味と戦って自分の美味しさを通そうとしない。いつも相手の味を取り入れて、自分の味を相手に渡して、仲良くゆっくり、おいしい料理になる。みんなが大根のようなやさしい気持ちになれば、戦争もなくなると思うんだけれど、ちょっと大げさ?」と。

この冬は、『大根はエライ』を読んで、そのあとは、あたたかな大根料理に舌鼓を打ちながら、大根の生きざまに思いをはせて、平和について考えてみたり、話し合ってみたりするのもいいかもしれませんよ。

2018.01.15

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