岩谷圭介さん講演会リポート

講演会「“やってみる”から始めよう! ~チャレンジ! 夢の宇宙写真!~」(3)

「失敗して、やってみる」を100回くりかえして

計画通りの場所に落ちたのに……

それからいろんな研究を重ねて、また空に飛ばしてみました。上げてみると、今度は思った通りの方向に飛んで、計画通りの場所に落ちてきてくれました。研究したのが報われたようで、すごく嬉しかったです。GPSで確認してみても、見つけやすそうな場所に落ちているみたいだったので、喜び勇んで行ってみました。行ってみた先、藪でした。農地だって地図には書いてあるんですけど、高さが4mくらいある藪でした。その日も次の日も探しまわりましたけど、全然見つかりませんでした。目の前にあるはずのものを見つけられなくて、すごく悔しかったです。もっと探したいという気持ちもあったんですが、北海道の山奥なので、ヒグマがいるんです。会ったら命はない、そして長くいればいるほどヒグマとの遭遇率が上がります。探しても見つかる見込みがない装置と、命の危険とを天秤にかけなければいけないということで、泣く泣くあきらめたんです。目の前まで来ていたという手ごたえはあったので、機械をもっと改良して、次こそはうまくやってやろうと思いました。

悔しさの先に、ついに宇宙の景色が!

苦労すると新しいアイデアが浮かぶものなんですね。今度は、着地すると音が鳴るような仕組みがついた新しい装置を作って飛ばしました。同じような飛行経路をたどって、落ちたところでピーピー鳴っていたので、すぐに見つけられました。思った通りにいって、すごく嬉しかったです。宇宙の映像が撮れているだろうと思って、喜んで見てみたら、こんぺいとうみたいなものしか写っていませんでした。これは、調べてみたら「結露」でした。宇宙を撮れる高さまで上がっていたのに、結露で写っていなかった、すごく悔しかったです。今度は結露の対策をすれば、きっと写るに違いないと思って、また改良を始めました。こんな繰り返しです。失敗して、やってみる。失敗して、やってみる。こんなことを100回くらい繰り返したころに、やっと宇宙の景色を見ることができました。嬉しかったです。きれいだなって思いました。でも宇宙の景色は、そんなことよりずっと大切なこと教えてくれたんです。

「やってみる」からすべてが始まった

それは、「やってみると成長できる」っていうことでした。考えても分からないこと、やってみると一発で分かります。失敗でもいいんです。その結果はたくさんのことを教えてくれるので、どんどん先に進めるんです。わたしは宇宙の景色が撮れてからも、あれをやってみたら、これをやってみたらどうなるんだろうと、その先もどんどん改良をしていきました。時計の宇宙使用の実験や、新型カメラの耐久テストに協力したり、様々なプロジェクトに関わることもできたんです。風船を使っていますが、いろんな形で宇宙開発にも貢献しているんですね。今は、プラネタリウムで体験できるようなドーム型の映像を作ってみたいと思っています。まだ映像が揺れていますが、地上から宇宙まで続いていくような体験ができる映像を作りたいなと思って、開発を進めているところです。

風船で宇宙旅行ができるかもしれない

いろいろやっていくと、今まで見えなかったようなことが見えてきます。今の私には、風船で宇宙旅行ができる未来が、うっすらと見えています。とんでもない夢物語のように感じるかもしれませんが、人を飛ばせるくらい大きな風船って、もうすでに世界にあるんです。「大気球実験」という、JAXAがやっている大きな風船を使った実験です。これだと重さ500kgのものを飛ばせるということなので、人間を何人かを飛ばせそうですね。もちろん上空30000mは空気がないので、人間がそのまま行ったら死んでしまいます。でも、宇宙に近いところで人間を守るための機械は、すでに開発されているんです。例えば、アポロの地球への帰還船です。これは50年前のものなのですが、宇宙の高いところから帰ってくるものだったので、とてもしっかりしたもので作る必要がありました。でも風船はもっと地上に近いところからやんわりと帰ってくるので、こんなにしっかりしたものである必要はありません。さらにいろいろ妄想が膨らんでいきます。宇宙旅行するために、まずは生物実験が必要です。私が選んだ生き物はメダカです。宇宙に連れて行かれたこともあるくらい丈夫な生き物です。魚をやって、小型哺乳類をやって、中型哺乳類、ダミー人形を飛ばして、その先はもしかすると人が上がれるのではないかと。私の試算では一人100万円くらいで、2~3時間宇宙を見て帰ってこられるのではないかと。

「やってみる」仲間になりませんか?

私はこれからも、「やってみる」ことを続けていきたいと思います。皆さんも大好きなこと、ぜひやってみてください。「もうやっているよ!」とう方は、すでに「やってみる」仲間ですね。「まだやってないよ」という方、ぜひ自分の大好きなこと、やってみてください。一つだけ助言するとしたら、取り返しのつかない大失敗は、避けた方がいいということです。例えば、自分の命や、誰かの命を失ってしまったりすること。失われた未来は、絶対返ってこないです。けがも同様です。そういう元に戻らない失敗を避けさえすれば、失敗はとてもいいものです。たくさんのことを教えてくれるので、もっと先に進んで、成長できます。何かをやってみるときには、取り返せない失敗だけは避けながら、失敗からいっぱい学んで、いろいろ挑戦してもらいたいと思います。
みなさんも、自分自身の夢を追いかける、そんな「やってみる」仲間になりませんか? 
 

(主催:宮崎科学技術館)

 
いわや けいすけ
1986年、福島県生まれ。北海道大学工学部在学中より風船を使った宇宙開発に取り組み、卒業後会社を設立し研究開発を進めている。執筆や講演活動なども。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。』(キノブックス)がある。詳しくは、ホームページ(「ふうせん宇宙撮影」)へ。

2018.03.27

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