日々の絵本と読みもの

飼い主のことが大好きで大好きでたまらない、やんちゃな犬「あむ」の物語

『あむ』

「かっちゃんと いっしょじゃないと おれはさびしい。」
「かっちゃんが いないと おれは おれは ひとりぼっちの いぬだ。」
これは、やんちゃな黒い犬「あむ」の語りです。

犬がどのくらい飼い主のことを想っているか、犬の気持ちが切ないほど伝わってくる絵本『あむ』をご紹介します。

友だちと海に遊びにでかけた飼い主の少年「かっちゃん」を追って、「あむ」は自ら首輪をはずして冒険にでかけます。たんぼを見つけても、踏み切りを見つけても、落ちている食べものを見つけても、冒険の途中で思い出すのは、かっちゃんのことばかりです。ひとりで懸命に海への道をたどるあむ。やがてあむの前に初めて見る海が姿をあらわします。「男の友情」とも言える一匹と一人のかたい絆が、ユーモラスに、ときにしんみりと、鮮やかに描き出されます。


「わにわに」シリーズの小風さちさん、山口マオさんのコンビによる作品です。絵を手がけた山口さんが実際に飼っていたラブラドール・レトリバーがモデルになっています。小風さんは、山口さんやあむと千葉県千倉の海岸を何度も散歩しながら、あむのことばを紡ぎました。犬のひとり語りが歯切れのいい文体で小気味よく語られ、声にだして読むのにぴったりの台詞まわしです。

犬と少年の友情の物語は、家庭で動物を飼っている子どもたちにはもちろんのこと、飼っていない子どもたちにも、大切なことを教えてくれることでしょう。ぜひ親子で声にだしてお楽しみください。

2018.04.13

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