日々の絵本と読みもの

大晦日の夜に起きた奇跡『かさじぞう』

『かさじぞう』
「読んだことはある…でもはっきりとは覚えていない…」という方が多いかもしれない、日本の昔話『かさじぞう』のお話。つつましく暮らしている、おじいさんとおばあさんに起きた、大晦日の夜の奇跡を改めて読んでみませんか。

主人公は貧しい生活をしているおじいさんとおばあさんの夫婦。おじいさんが編み笠をつくっては街で売って生計を立てています。

ある年の大晦日、五つの編み笠をつくったおじいさん。それを街で売って、餅でも買って帰って、いい新年を迎えたいと出かけていきます。でもお正月間近の賑やかな市で地味な編み笠は一つも売れず……



おじいさんは意気消沈して帰路に着きますが、その途中で吹雪に見舞われます。そこで雪をかぶった六体のお地蔵さんに出会います。


おじいさんは「あやぁ、むごいことだなあ。はだかでゆきをかぶってさぞさむかろう」と言って、作ったけれど一つも売れなかった五つの笠、さらに自分がかぶっていた笠も合わせて六体のお地蔵さんにかぶせてあげた後に、家に帰ってお正月を迎えることになるのですが……

気持ちのやさしいおじいさんとおばあさんが、お正月にお地蔵さんから恩返しをしてもらうという、なんとも心温まるストーリーの昔話。福音館書店の『かさじぞう』では、再話を担当した瀬田貞二さんの語りの文章が耳に心地よく、画の赤羽末吉さんは日本の降雪地帯特有の「ベタ雪」の表現にまでこだわった、しっとりした雪景色を描かれています。

年末年始にこたつなどで暖を取りながら、ゆっくりみんなで読んでみてください。きっと「大切な何か」を感じられる作品です。

担当F・文中に出てくる、雪が「もかもか」降る、という響きがとてもいいですよね。信州の言葉にあるようですが、ちょっと大きめの雪がどんどん降り積もる様子が思い浮かびます。東京は、今年は雪が積もるでしょうか。困ることもありますが、ちょっと楽しみでもあります。

2023.12.28

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