日々の絵本と読みもの

柳原良平さんが愛した船の絵本『貨物船のはなし』

柳原良平さんが愛した船の絵本

『貨物船のはなし』

船は大昔から世界中で使われてきた乗りものです。「大船に乗ったつもりで」という言葉のとおり、大きな船には頼れる安心感があります。大きな荷物、重たい荷物、大量の荷物、そして人など、船は何でも運べます。

『貨物船のはなし』では、かつて中国からイギリスに紅茶を運んでいた帆船や、日本の北前船と樽廻船、移民を乗せた南米航路の船など、船の歴史を順を追って紹介しています。貨物だけでなく人も乗れる貨客船、人が快適に移動する目的に特化した客船、そして移動するだけでなく、船そのものがレジャー目的になっている大型クルーズ客船まで、色々な船が登場します。自動車などの専用船、ばら積み貨物船、コンテナ船、タンカーなど、貨物船の構造や種類もわかりやすく解説されていて、現在研究中の未来の貨物船までが描かれています。


作者の柳原良平さんは、アンクルトリスの絵でも有名ですが、大の船愛好家でした。この絵本の船は、貼り絵で一見シンプルに表現されていますが、それぞれの特徴はしっかりと描きこまれています。そして、描かれた船は堂々としていて、いかにも誇らしげです。柳原さんは語ります。
「船はただ単に仕事をする乗り物ではなくて、一隻一隻個性のある人間のような存在なのです。人間と同じようにそれぞれの船にそれぞれの一生があるように感じられて、いっそう船が好きになったのです。」
絵ハガキや写真集を見ながら、絵を描いたり模型を作ったりしていた少年時代、大好きだった船の多くが戦争で沈められてしまいました。船の消息をたずねて、船会社に手紙を出したこともあったそうで、この絵本にも、沈められた船へのオマージュとも読めるページがあります。

船への大きな愛を感じるこの絵本は、柳原さん生前最後の船の絵本となりました。柳原良平ワールドを楽しみながら、親子で人と船の関わりについて思いを馳せてみてください。

※柳原さんが描いた船の絵本は他にも、『たぐぼーとの いちにち』『しょうぼうてい しゅつどうせよ』(いずれも現在品切)があります。

2017.11.24

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