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 武蔵国秩父郡浅葱村に生まれた“ねぎぼうずのあさたろう”は、色白の丸顔でピリリと元気な畑育ちの男の子。
 ある日、評判の悪い親分“やつがしらのごんべえ”が小さな椎の実の女の子をいじめているのを見て堪忍できなくなり、畑をとびだすと、目にしみるねぎ汁をとびちらせて、ごんべえを追いはらいました。しかし悪者のごんべえの復讐を避けるため、あさたろうは村をあとにし、旅に出ることにしたのです。
 ところが旅先の峠で、ごんべえに雇われた浪人者“きゅうりのきゅうべえ”に襲われます。あさたろうは母親がもたせてくれたわさびととうがらしの粉で、きゅうべえを退け、旅を続けていくのでした。(その1 とうげのまちぶせ


 東海道の宿場で寝ていたあさたろうの荷物をねらって、盗人“にんにくのにきち”が現れますが、あさたろうはすぐに起きてねぎじるの吹き矢でにきちをこらしめます。これですっかり改心したにきちは、あさたろうの旅についていくことになりました。
 宿場はずれの山道で、追ってきた“やつがしらのごんべえ”と大勢の子分たちに襲われますが、勇敢に立ち向かうふたりの前に、ごんべえは自ら足をすべらせ谷底に落ちていったのでした。(その2 しゅくばはずれのけっとう


 通りすがりの山道でふたりは、江戸の吉原から逃げてきた娘を助け、村まで連れていきますが、追っ手の男たちがやってきて、五十両の借金の証文をかたに娘を連れもどそうとします。そこに三度笠を深くかぶった旅人が現れ、五十両を男たちにわたし、名前も告げずに去ってゆくのでした。
 あさたろうたちが村を出て渡し舟にのると、その舟にはさっきの旅人がいます。額に三日月形の傷のあるその顔には、あさたろうが幼いときに別れた父の面影があったのです。(その3 人情渡し舟


 旅の途中、あさたろうとにきちは、“灰かぶりの豆ぞう”という親分が悪事をたくらんでいるのを偶然聞いてしまいました。3年前闇討ちにした火の玉一家の親分の忘れ形見“おてつ”を、今年の祭りにのりこんで、出店のもうけもろとも我が者にしようとしているのでした。
 翌日、豆ぞう一家に取り囲まれた火の玉おてつの前に現れたあさたろうとにきちは、おてつに豆ぞうが父の仇であることを教え、仇討ちに助太刀ました。それを物陰から見守っていたのは、3年前おてつを救ったあさたろうの父、“ながきち”だったのです。(その4 火の玉おてつのあだうち


 父との再会を果たしたあさたろうは、にきちとふたり旅を続け、とある宿場で腹を空かせて倒れていた浪人姿の“そばがきげんえもん”を助けます。げんえもんは江戸に届ける密書を入れた財布を盗まれてこまっていたのです。にきちは昔の盗人仲間“とちのみこぞう”からげんえもんの財布をとりもどしてやりますが、そこに密書をねらって追いかけてきた“とうがんぐみ”が現れます。ふたりはげんえもんを助け、とうがんぐみを追い散らすと、また旅を続けるのでした。(その5 いそぎたび そばがきげんえもん

 味噌づくりで知られている八丁村のはずれで、男の子が泣いていました。聞けば、まるまめやという大きな味噌屋の子どもで、商売敵の親分“みそだまのでんごろう”がおしかけてきて、24月寝かせた大事な味噌を強奪し、姉のおはなを連れ去ったというのです。
 朝、相棒のにきちは置き手紙を残して姿をけしましたので、あさたろうは、その夜ひとりで、でんごろうの屋敷にしのびこみ、おはなを助け出そうとしますが、取り囲まれて味噌玉の中に固められてしまいます。しかし勇気のねぎ汁で味噌をとかし、逆にでんごろうを一刀両断。みやげにもらった八丁味噌を手に、また旅をつづけるのでした。(その6 みそだまのでんごろうのわるだくみ

 東海道の難所、鈴鹿峠。“旅は道づれ”と、道中知り合ったおじいさんと孫娘の大きな荷物を背負ったあさたろうは、いっしょに急坂を登っていきました。ところが茶店で待ちかまえる山賊“まつぼっくりのもんえもん”の一味に、眠り薬茶を飲まされ、荷物を奪われて、三人とも木に縛られてしまいました。
 夜になって、どこにいっていたのか、あさたろうの弟分 “にんにくにきち”が助けに現れます。縄から抜け出ると反撃開始。あさたろうのねぎ汁をあびたもんえもんのまぶたの裏には、幼くして亡くした娘の姿が浮かんできたのでありました。改心したもんえもんは……。(その7 さんぞくまつぼっくりのもんえもんのなみだ

 話はもどって、八丁村のはずれ、寝ているあさたろうにそっと置き手紙をして走り去ったにんにくにきち(その6)は、昔の盗人仲間とちのみこぞうに導かれ、桑名の宿場はずれで料亭を営んでいるという、幼いときに生き別れになった、おっかさんを訪ねます。折しもその夜、やくざ者こんにゃくだまのもんじ一味が押し込みに入ると聞きつけ、二人は一味を追い払おうと店の庭にひそんで待ちかまえます。ところが、気配を察して二人を見つけたおっかさんは、やくざ者のなりをしたにきちに、おまえなど息子ではないというのです。その時、奥から出てきた娘が「あっ、にいさんじゃない!」……。
 やがて始まる、もんじ一味との戦い。男にきちの見せどころとなります。 (その8 にんにくにきち はしる!



飯野和好(いいの かずよし)
絵本作家・イラストレーター。1947年埼玉県秩父郡に生まれる。『むかでのいしゃむかえ』(福音館書店1998)の農家は生家がモデル。子ども時代の経験は『ハのハの小天狗』(ほるぷ出版1991)に投影されている。東京デザイナー学院卒業後、婦人服デザイナーとして勤務。長沢セツ・モードセミナーで水彩画とイラストレーションを学ぶ。『小さな山神スズナ姫』(富安陽子文 偕成社1996)など「小さなスズナ姫」シリーズで第11回赤い鳥さし絵賞、『ねぎぼうずのあさたろう その1』(福音館書店1999)で第49回小学館児童出版文化賞。本の制作以外にも、舞台人形デザイン(結城座)、絵本読み語り講演、ブルース・ハーモニカ奏者としてのライブ活動などで活躍。神奈川県在住。

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Illustrations (C) Kazuyoshi Iino 1999,2000,2001,2003,2005,2006,2008,2010 このページのトップへ△

 

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