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精緻な絵とみずみずしい文による桜の木の一年間
著者紹介
長谷川摂子(はせがわ せつこ)
1944年、島根県生まれ。絵本に『めっきらもっきら どおんどん』『おっきょちゃんとかっぱ』『きょだいな きょだいな』(以上、福音館書店)など。評論に『子どもたちと絵本』、童話に『人形の旅立ち』(ともに福音館書店)、「かがくのとも」には『みず』『じめん』『こいのぼり』『どろんこ』などがある。
矢間芳子(やざま よしこ)
1945年、中国生まれ。絵本に『すみれとあり』(福音館書店)『くらしのなかのわた』(童心社)など。「かがくのとも」には『つゆくさ』『つばき』『かき』『おおいぬのふぐり』がある。
編集担当からのメッセージ
 春の到来を華やかなピンクで告げる桜。そんな満開の桜の強烈な存在感も、ほんのいっとき。花が散ると忘れ去られてしまいます。お花見のとき以外の桜の姿も気にとめてみませんか? 近所にはきっと何本かの桜の木が見つかるはずです。花が散った後の結実、新緑の美しさ、真夏のたくさんの虫や鳥の楽園としてのにぎわい、紅葉……。知らなかった桜の姿を見ることができますよ。また、桜の木を通して見る風や雨、太陽の光、暑さや寒さ……。四季の変化もより鮮やかに感じられるかもしれません。
 画家の矢間芳子さんは、この作品のために3年間、桜の観察、スケッチをしてくださいました。本作品ではソメイヨシノを描いています。「桜は、ひとつの花芽からたくさんの蕾を出すから、あんなにもボリュームがあって美しい」「枝先の小さな葉芽から若葉が出て、そこから今年の新しい枝を伸ばすから、1年でひとまわり樹形がふくらむ」「根は水のあるほうに伸びるから木全体もそちらのほうに傾く」など、矢間さんからは桜についていろいろなことを教えてもらいました。
 この絵本を読みながら、お子さんと一緒にぜひ桜の木を観察してみてはいかがでしょう。一年間観察した翌年には、満開の桜にいつもの年とは違った輝きを見い出すことでしょう。
くわしい内容紹介
 お花見といえば桜。春の訪れを感じさせてくれる桜は、日本人にとって一番馴染みのある木と言ってもいいかもしれません。でも、お花見のとき以外の桜の姿は、意外と知られてはいないのではないでしょうか。花が散った後、桜はどんな暮らしをしているのでしょう? この絵本を読めば、桜の一年の様子がとても良く分かります。
 満開の桜には、蜂や鳥が蜜を吸いに来ます。スズメは穀物や実を割るのに適したペンチのような短いくちばしで、花の基部をギュッとはさみ絞るようにつぶして蜜を吸います。満開なのに花びらが5弁ついたまま地面に落ちていたら、それはスズメの仕業。また、花は「風で散る」というよりも「寿命」による部分が大きいです。曇りや雨の日よりも晴れの日のほうがより花が散るという事実があり、これは晴れの日に生長が進むからで、「はなは ちるときが くるのです」という一文に表現されています。
 木の外側から始まる紅葉、ひとつの蕾から4つ5つの花が咲く開花の様子(一般の植物はひとつの蕾からひとつの花しか咲きません。これが桜の花がボリュームがあって美しい理由のひとつ)、花びらに含まれる色素は一定のため開花が進むと濃いピンクから薄ピンクに変化する様子などなど……しっかりした観察による科学的事実が、絵にも文にもきちんとふんだんに盛り込まれた内容です。
(「かがくのとも」2005年4月号で刊行した作品です)


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