特別企画 たくさんのふしぎ 編集長インタビューたくさんのふしぎ編集部 編集長

たくさんのふしぎ編集部 編集長 似顔絵

その道の専門家たちが子どもたちに自慢話を披露する?
「人の思い」がつまった「科学の読み物」

Q1毎月のテーマは編集部でどのように決めるのですか?

右手に「企画の種」、左手に「人」と編集部でもよく話すのですが。子どもに伝えたい「企画の種」をいっぱい右手に握っていて、左手には研究者、写真家、画家など「人」の情報のせておく。その2つを結びつけることで、テーマが決まっていくことが多いです。

例えば、2015年度のラインナップのひとつである『南極を行く(仮題)』の著者・水口博也さんはクジラの写真家の第一人者です。でも、水口さんのお話を聞いているうちに、私が「企画の種」としてぼんやりと考えていた「地球規模の栄養の移動」と水口博也さんという「人」が結びついて、クジラではなく今回のテーマが作られていきました。『南極を行く』では、水口さんがクジラを撮影する中で訪れた南極での体験や、豊かな南極の海が実は「ナンキョクオキアミ」という小さな生き物に支えられているというドラマが子どもたちに語られます。

その事柄に知識があるとか、その場所に何度か行ったことがあるだけではなく、その事柄や事象を考えぬいている人。「その人だから知っている」「その人が本当に知っている」、そういうものをお持ちの著者を見つけられるかがとても大事です。

Q2専門的なテーマをあつかうことも多い「たくさんのふしぎ」ですが、小学3年生の子どもたちにわかりやすく伝えるために、意識していることはありますか?

とにかく普通の言葉で書くということを意識します。研究者やその道の専門家は、「正確に嘘をつかないこと」をとても大事にされます。少しでも例外がある場合は言い切ってくれない。でも、例外のことをふくめて書いてしまうと、文章がわかりにくく「本当に伝えたいこと」が子どもたちに伝わらなくなってしまいます。

そういうときは、今回の作品を通じて本当に伝えたいことを一から構築しなおしたりしますね。その上で余計だと判断した部分を大きく削ったりもします。「簡潔に、でも嘘をつかない」とでも言えばよいでしょうか。

ただ、そういったやりとりをする上では専門家である著者と対等に近い形で、その分野の話ができることが必要になってきます。そのため、ひとつ企画をすすめているときは、必死ですね。著者以外の関係者にかたっぱしから会いにいき、話を聞き、資料を読みあさって、瞬間的には自分自身もその分野の専門家になるぐらいの勢いで情報を集める編集担当者もいますね。

Q3小中学校の教科書の補助教材として使われることも多いと聞きますが。そのあたりは意識されていますか?

教科書は網羅的であることや、限られた時間で要点を伝えることが求められます。ですから、授業をやっているときや、終わったあとに、それに類似したテーマの「たくさんのふしぎ」を子どもたちが手にとることができる環境があるといいですね。

著者の方々には作品に取りかかっていただく際、「私はこんなものを見てきたよ。知っているよ」と子どもたちにご自分の専門分野を「きちんと自慢」してくださいとお伝えしています。そこには、教科書やウィキペディアの検索結果にはない「人の思い」が宿ります。そういう思いにふれることで、教科書で習った知識に奥行きが生まれ、これまで見えていなかった世界に目をむけるきっかけが作れると思います。

Q42015年で創刊30周年をむかえる「たくさんのふしぎ」ですが、どんな思いを込めてこれからの作品を作っていきたいですか?

「たくさんのふしぎ」のような「科学の読み物」は、子どもを取りまく外の世界、この世のことを肯定的に伝えるという役割を持っています。例えば、生物であれば、どんな小さな生き物も次世代に命を残すための仕組みを持っていて、その調和と美しさには目をみはるものがあります。人間の生活や暮らしであれば、私たちが何げなく使っている鉛筆や階段といった道具は、先人が周囲の人々や子孫がよりよい暮らしができるようにと工夫し発明した、世代をこえた思いやりの結果だと思います。

子どもたちには、そういったテーマを通じて「君たちを取りまく世界は素晴らしい」「よりよく生きようとすればこの世はこたえてくれるんだ」ということを、伝えていけたらと思っています。

編集部では笑い話で“「たくさんのふしぎ」は読んでもすぐには役にたちません”などと言っていますが、目先の知識ではなく、不思議の世界を子どもたちが探検できるような「科学の読み物」を作っていきたいです。

※インタビューでご紹介した2015年度のラインナップは、予定です。編集の都合上変更になることがございます。