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 ★  あのねメール通信~福音館書店メールマガジン  2002年5月2日 Vol.6 ★
                

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         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 木の実の力『ガオ』 松居直
《2》 月刊誌最新号<2002年6月号>のご案内
《3》 「母の友」編集室の窓から
《4》 50周年記念出版『みつけたよ! 自然のたからもの』について
《5》 5月の新刊のご案内
《6》 『カモノハシくんはどこ?』訳者・河野万里子さんのエッセイ
《7》 特別講演会・仙台会場のご案内

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《1》 木の実の力『ガオ』 松居直
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 この絵本を手にして書名を読むと、おもわず何だこれはとおもい、さらに表紙の
絵の正体不明の動物らしい形を眼にすると、ますます不審を感じます。よくみると
この動物は、無数の木の実でつくられているようです。
 おもわず表紙をめくると、扉には“おやまの あかいわの てっぺんに げんき
な やまいぬが すんでいた”とあり、この山犬が突如として力一杯に吠えるとこ
ろから、この絵本の変型譚がはじまります。
“吠える”という姿は絵では表現できても、吠える声は形になりません。ところが
作者の田島征三さんはその声のガオという猛然としたひびきとエネルギーを、数え
きれない木の実で画面一杯にみごとに造形表現します。このあたりから読者は田島
征三さんの魔力に呑みこまれてしまいます。
 そのあとの一見支離滅裂にみえる世界にこそ、この稀有の絵本画家のゆるぎない
メッセージと、造形美へのあくなき探究心を感じとることができるのです。それは
大人よりも、子どもたちのほうがはるかに深く強く感じることができるでしょう。
ただ読み手の大人が拒否反応や疑惑を抱いていると、その気持ちは聴き手に敏感に
伝わり、残念ながら子どもも絵本の世界へはいろうとはしません。
 反対に子どもがこの絵本をとおして木の実に興味をもち、思いもかけぬ木の実に
よる造形表現に触発されて、実際に木の実に触れ、拾ったり並べたりするようにな
ると、この絵本の変型譚-犬が蛇や鳥になり、さらに蛙になり、再び元の山犬に
戻るという変身の話-の真のおもしろさと意味を感じとり、またとない物語体験
をするにちがいありません。
『ガオ』は絵本らしからぬ「絵本の傑作」です。作者が自らの実存をかけたメッ
セージを子どもに伝えようと渾身の力をそそいだことが感じられます。わかるわか
らないといった次元をこえて、自然の内に秘められている美と驚異を伝え、私たち
の内にひそんでいるものをみる眼と表現の意欲、つまり生きる力をかきたててくれ
る絵本です。

(「全日私幼連PTAしんぶん」第489号より転載)

『ガオ』 田島征三 作 (「こどものとも」2001年11月号)


松居直(まつい ただし)
1926年京都府生まれ。同志社大学法学部卒業。福音館書店の設立と同時に編集長に
就任。現在は相談役。編集長時代に月刊絵本「こどものとも」を創刊。児童文学な
どの評論活動も行う。絵本の作品は『ももたろう』『ぴかくんめをまわす』(とも
に福音館書店)、評論に『わたしの絵本論』(日本エディタースクール)などがあ
る。絵本の最新作に『桃源郷ものがたり』(福音館書店)。

『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵

『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 絵

『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵

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《2》 月刊誌最新号<2002年6月号>のご案内
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◎本日5月2日は月刊誌最新号<6月号>の発売日です。

◇◆ こどものとも0.1.2.『くまさん おっき』
                           かたやま けん 作          ◇◆
黒クマと白クマの子どもが、起きたり寝たり、食べたり泣いたり遊んだり……。赤
ちゃんの日常をクマの子どもに託して描きます。

◇◆ こどものとも年少版『みんなで はしろう』
            白川三雄 作              ◇◆
ライオン、カメ、ダチョウ、カンガルー、カバたちが一輪車、二輪車、三輪車……
に乗って走り回ります。爽快な気分になる絵本です。

◇◆ こどものとも年中向き『はるかぜのホネホネさん』
             にしむら あつこ 作・絵        ◇◆
郵便屋さんのホネホネさん。春風にのり、自転車をこいで配達です。ホネホネさん
のいる町に春の催しの楽しい手紙が行き交います。

◇◆ こどものとも『みずたまり』なかの ひろたか 作・絵     ◇◆
雨が降って庭にできた水たまり。そこからなんとペンギンがとびだし、オットセイ
とカメも出てきて……。ふしぎで愉快な絵本。

◇◆ ちいさなかがくのとも『おいしい おと』
                          三宮麻由子 文/ふくしま あきえ 絵   ◇◆
春巻きを食べると、どんな音が聞こえてくるかな? ウインナやレタスはどうか
な? ある日の食卓の、おいしい音が勢ぞろい。

◇◆ かがくのとも『ほたる』 神沢利子 文/栗林慧 写真       ◇◆
昆虫写真家の栗林慧さんが、20年かけて撮ったほたるの写真の集大成です。数知れ
ないほたるが夜空に乱舞します。

◇◆ おおきなポケット【かがく】「ぐるぐるぷかぷか あそび島」
                 藤本ともひこ 作
           【ものがたり】「ベルナーおばさんの
                  <グリム>がはじまるよ!」
                  ロートラウト・ズザンネ・ベルナー 作
                  松沢あさか 訳       ◇◆
【かがく】「ぐるぐるぷかぷか あそび島」
じゃんけんやおにごっこを使った楽しい創作遊びを紹介しています。
【ものがたり】「ベルナーおばさんの<グリム>がはじまるよ!」
ドイツの翻訳絵物語です。

◇◆ たくさんのふしぎ 『ほっぺたおちた』
            織田道代 文/古川タク 絵         ◇◆
のどから手が出る。ネコをかぶる。まっかなうそをつく……ふだんなにげなく使っ
ている、ふしぎでゆかいな言葉の数々。

◇◆ 母の友 特集“子どもに伝えたい生活術”          ◇◆
生活していく上で必要なこと・大切なこととは何でしょう。子どもに伝えたい「生
活の知恵」を見直してみませんか。

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《3》 「母の友」編集室の窓から
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 取材やインタビューなど、特集記事を作っていく過程では、さまざまな人との出
会いがあります。今月は、思いがけない出会いが重なった、その裏話を。
「子どもに伝えたい生活術」のインタビューをお願いした青木玉さん、奈緒さん母
娘をお訪ねしたとき、撮影に同行してくださったカメラマンのお祖父様がかの有名
な岡倉天心という偶然の組み合わせ。しかも、青木玉さんとカメラマンのお父様
は、疎開先でご一緒に過ごされよくご存じの間柄だったことが判明。本番前にひと
しきり話の花が咲きました。
「家事こそ最良の子育て」と、家事の持つ魅力と工夫を本に書いている町田貞子さ
んは、残念ながら数年前に亡くなられていたので、五人いらしゃるという子どもさ
んのどなたかにお話を聴きたいと、八方手を尽くした結果、次女の田中周子さんが
会ってくださることになりました。その田中周子さん、20年前古セーターから考
案したセーター人形“ヒロン”の生みの親で、そのころ「母の友」で紹介したこと
があったのです。
 そして、町田貞子さんの本を出している出版社のメンバーの一人が、これまた以
前「母の友」の連載ページのイラストを描いてくださっていた方ということもわか
り、思いがけない再会が重なったというわけです。 
 出会うべくして出会ったと思えるような、そんなご縁を感じさせられた取材でし
た。
 ぜひ、「母の友」本誌も手にとってご覧ください。

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《4》 50周年記念出版『みつけたよ! 自然のたからもの』について
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かがくのとも編集部が創立50周年を記念して企画、出版する、今までの図鑑とは
まったく違う図鑑、5月15日発売予定です。

『かがくのとも版 親子でたのしむ ずかん絵本
        みつけたよ! 自然のたからもの』(全3冊セット:分売不可)
付録:本に登場するすべての生きものを実物大で描いた一枚図版
澤口たまみ 文/かみや しん 絵/吉谷昭憲・島津和子 図版

 幼いころに、たっぷりと自然とふれあった経験は、かけがえのない思い出として
心に残り、やがて命への思いやりや、生きることへのひたむきさとなって、子ども
たちを支えてゆくのではないでしょうか。この本をきっかけとして、ひとりでも多
くの子どもが、自然との楽しい出会いを経験できるよう願っています。

                              澤口たまみ

〔かがくのとも〕は、1969年、世界で初めての「月刊科学絵本」として創刊され今
年で34年目、この7月号で通巻400号を迎えます。これも、著者のかたがたをはじ
め、読者の子どもたち、お母さん、お父さん、園の先生がたのご協力のたまもの
と、厚く御礼申し上げます。
〔かがくのとも〕編集部では、福音館書店創立50周年を記念し、今までの図鑑とは
まったく違う図鑑を企画、出版いたします。
 幼い子どもたちは、身の回りのさまざまな事象に「なぜ? どうして?」を連発
し、関心を持ちはじめます。〔かがくのとも〕は創刊以来、そのような子どもの好
奇心=科学の芽を大切に、自然や生き物の驚きや不思議の世界を紹介してきまし
た。最近、テレビやゲームなど、いわゆるバーチャル・リアリティーの世界が子ど
もにも広がり、実際の自然の不思議や実体験の感動が遠いものになっているのでは
ないでしょうか。そのような子どもとそしておとなのかたに、〔かがくのとも〕編
集部が考えたのがこの「ずかん絵本」です。
 まず、おとなが子どもに読み聞かせ、絵本の世界をお楽しみください。そのあ
と、本をリュックにいれ、いっしょに外へ出かけてみましょう。いままで、身近に
ありながら目には入らなかった植物や生きものが、新たな輝きをもってあらわれて
くることでしょう。
 この図鑑絵本を仲立ちに、子どもの心が歓びと感動で耕され、これから生きる世 
界がより豊かなものになっていくとしたら、それはわたしたちにとっても大きな喜
びです。
                           かがくのとも編集部

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《5》 5月の新刊のご案内
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 今月は『かがくのとも版 親子でたのしむ ずかん絵本 みつけたよ! 自然の
たからもの』の他に以下の3点を出版いたします。

《5月15日(水)発売予定》
◎小さな泣き虫お化けが自立するまでの楽しいお話
『おばけのおーちゃん』 市川宣子 作/さとう あや 絵

《5月22日(水)発売予定》
◎世界の鉄道の歴史を美しい絵で伝える
『機関車・電車の歴史』 山本忠敬 作

◎美術の基本を解説したポップアップ形式の本
『立体で見る 美術がわかる本』
 ロン・ファン・デル・メール&フランク・ウィットフォード 作
 市川恵理・池上理恵 訳

*6月14日、ついに福音館文庫が創刊いたします。

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《6》『カモノハシくんはどこ?』訳者・河野万里子さんのエッセイ
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 “生きていることはそれだけで”

 この絵本ができあがったら、ナオミさんに贈ろう―。『カモノハシくんはど
こ?』を訳しながら、私は時々そんなことを考えて、ひとりで笑顔になっていた。
ナオミさんは私と同年代の友達。ことばのセンスが鋭く豊かで、天体観測や作曲や
絵も好きという多才な人だ。もう十年来のつきあいで、お互いの誕生日には必ず
カードを送り、最近では何かあれば電子メールで連絡しあっている。
 きっかけは、以前私が翻訳した本について、彼女が出版社にお礼の手紙をくれた
ことだった。その本は、世界で初めて自閉症の人が自らの心の内を綴った自伝で、
ナオミさんは「ずっとこういう本を待っていた、ありがとう」と書いてきてくれた
のだ。そう、ナオミさんもまた自閉症、それも知的障害のない高機能自閉症の人
だったのである。
 手足などの身体の障害に比べて、高機能自閉症は、目で見てすぐにはわからな
い。その分周囲から理解されにくく、いじめにあったり壁にぶつかったりすること
も多いと聞く。彼女もずっとそうだったらしい。
 「うまれつきのことだけでなんでもきめるのは ふこうへいじゃないの? この
ちじょうでも うみのなかでも いきものは いろんなふうに いきている」この
絵本の主人公カモノハシくんの叫びは、きっと彼女の叫びと同じだったと思う。そ
して「みんな じぶんにできることや とくいなことをいっしょうけんめいやって 
ちからをあわせ」る世界は、彼女の夢であるにちがいない。昔も、今も。
 だがそうした世界は、ごくふつうの子どもにとっても、そして私たち大人にとっ
ても、夢でありまた目標なのではないだろうか。だからこの絵本は、訳者として日
本中の子どもたち、大人たちに、贈りたい気持ちでいる。
 特に子どもたちは、大きくなっていく過程で学校をはじめいくつもの集団に入
り、これからさまざまな友達や人々に出会っていくわけだ。時にはそういった集団
や人々になじめなかったり、自分をひとりぼっちだと感じたりすることもあるかも
しれない。どこにも居場所がないと思うことも、あるかもしれない。
 そんな時、この絵本を思い出してもらえたなら。はじめはよそよそしく見えたク
ラスのみんなが、いっせいにカモノハシくんを探しにいったことを。やがてカモノ
ハシくんも、みんなと一緒にのびのび個性を発揮しはじめたことを。そしてついに
は「おともだちの一等賞」に選ばれて、輝いたことを。
 もちろん長い人生では、短い絵本ほどすぐには、事態は変わっていかないかもし
れない。でもみずみずしい子どもたちの胸に、いきいきした動物たちの姿を通し
て、伝えたい。生きていることは、それだけですばらしい、と。あなたにも、ぴっ
たりの居場所はきっとある、と。そしてもし、あなたではなく他の誰かがカモノハ
シくんのようだったら、あたたかく見つめてあげて、と。
 外は、春―。絵本の舞台と同じ新年度という新しい時間、新しい世界に、子ども
たちはもう、踏み出している。

『カモノハシくんはどこ?』
ジェラール・ステア 作/ウィリー・グラサウア 絵/河野万里子 訳

河野万里子(こうの まりこ)
1959年生まれ。上智大学外国語学部卒業。1993年『愛は束縛』その他の作品に対し
てバベル国際翻訳賞新人賞を受賞。訳書にサガン『逃げ道』、ウィリアムズ『自閉
症だったわたしへ』(以上 新潮社)、著書に『赤毛のアンの翻訳レッスン』(バ
ベル・プレス)などがある。東京在住。

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《7》 特別講演会・仙台会場のご案内
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 創立50周年を記念して、昨年10月からはじめた記念講演会「21世紀、子どもの本
の可能性」もこれまで全国7会場をまわり、この仙台会場が最後となりました。今回
は6月15日から9月1日まで「はじめての美術 絵本原画の世界」展を開催する宮城県
美術館と共催という形で行ないます。原画展とともに、絵本の多面的な魅力を多く
の方に触れていただければ幸いです。

開催日 2002年6月22日(土)13:00~16:30
会 場 宮城県美術館講堂
    仙台市青葉区川内元支倉34-1 TEL 022-221-2111
定 員 300名
主 催 宮城県美術館 (株)福音館書店
後 援 日本国際児童図書評議会(JBBY)

講師は三宮麻由子さんと松居直さんです。
*締め切りは2002年5月31日ですが、受付は先着順ですのでお早めにお申し込み下
さい。
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◆発行者:株式会社福音館書店 販売促進部宣伝企画課
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