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 ★  あのねメール通信~福音館書店メールマガジン 2002年7月3日 Vol.8 ★
                
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         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 知識の枠をこえた科学の絵本『みんなうんち』 松居直
《2》 『シートン』著者・今泉吉晴さんのエッセイ
《3》 7月の新刊のご案内
《4》 月刊誌最新号<2002年8月号>のご案内
《5》 「母の友」編集室の窓から

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《1》 知識の枠をこえた科学の絵本『みんなうんち』 松居直
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 十数年前、中国の北京師範大学で絵本についての講演をしたことがあります。そ
のとき科学の絵本の一例として、『みんなうんち』をとりあげました。排泄は万人
共通です。科学の絵本といいますと、とかく科学的知識や情報を教えこむための絵
本と考えられがちですが、それは教科書や参考書の役割です。絵本は、教科書とは
まったく違う働きかけをする不思議な、おもしろい力をもっている本です。
 教えられたことは、知識や情報として頭のほうに入ります。しかし絵本は心に働
きかけ、心を動かす力をもっています。頭に入るのではなく、心に絵本体験として
残るのです。
 ああ、おもしろかった! ああ、楽しかった! という印象をもったとき、幼児
の気持ち、好奇心はいきいきと働き、その絵本体験は心に深く残ります。その意味
では、科学の絵本の働きは、物語絵本とすこしも異なりません。事実の不思議や発
見の驚き、ものとものとのかかわりのおもしろさなどを、冷たい論理や知識でな
く、わくわくするような推理、推論のたのしさをとおして体験します。
 それは絵本のなかに仕組まれている、ユーモアや温もりや物語性が、科学や情報
をより身近なものとして感じさせてくれるからです。『みんなうんち』は、そうし
た絵本の実例として、中国語で語っていただきました。
 三百人ほどいた学生たちは、はじめ“うんち”=“大便”の絵本というのに戸
惑ったり、あきれ顔だったのですが、話が進むにしたがい、五味太郎さんの意表を
ついた話の展開や、ユーモラスな語りや絵に引きこまれ、表情をくずし、読みお
わったときは、はじけるような大爆笑でした。その笑いの渦に、中国の若者の健康
な感性を満喫させられ、“これが改革解放だ”と、わたしは独り悦に入っていまし
た。
 生きるために食べる、食べれば出る、という人間の基本的な生理を、あっけらか
んと白日の下にさらけだした意外性と語りのユーモアは、排泄という科学的な事実
を、知識の枠をこえた人間的な共感として受け入れ、心に残る絵本体験を生みだし
ました。
 この絵本がアメリカでも人気があるのは、実に興味深いことです。

(「全日私幼連PTAしんぶん」第475号より転載)

『みんなうんち』 五味太郎 作

松居直(まつい ただし)
1926年京都府生まれ。同志社大学法学部卒業。福音館書店の設立と同時に編集長に
就任。現在は相談役。編集長時代に月刊絵本「こどものとも」を創刊。児童文学な
どの評論活動も行う。絵本の作品に『ももたろう』『ぴかくんめをまわす』(とも
に福音館書店)、評論に『絵本とは何か』(日本エディタースクール出版部)など
がある。絵本の最新作に『桃源郷ものがたり』(福音館書店)。

『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵

『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 絵

『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵

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《2》『シートン』著者・今泉吉晴さんのエッセイ
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“シートンの生き方”

 この本で、私が読者のみなさんにお伝えしたかったことの一つは、シートンのた
ぐいまれな生き方です。シートンは小さな子どものころから、動物や生き物や自然
が大好きでした。美しい自然の中にいると、どきどきするような喜びを感じまし
た。つまり、シートンは、子どものころすでに自分の心の底に、動物や自然に感動
する何かがあるのに気づいていたのです。
 シートンは、そのような自分の本当の心を大切にする生き方を生涯をつうじて、
つらぬきとおしました。つまり、生涯をつうじて子どもの心で生きようとしたので
す。すると、動物や自然ととても仲良くなれたばかりではありません。仲良くなれ
たすばらしい経験を日記に書いて、たくさんの記録を重ね、そこからだれも書けな
かった動物物語を書く作家になりました。シートンが書く動物物語はいつでも動物
がヒーローです。愛する美しい動物の姿をスケッチするうちに、偉大な動物画家に
もなりました。そこで、シートンの動物物語は、すべてシートン自身がかいた美し
い挿絵でかざられています。
 シートンはただ動物や自然と心がつうじただけではありません。同じ心をもつ、
動物や自然にやさしい人とも、とても仲良くなれました。シートンが生涯の大部分
をすごした北アメリカ大陸では、動物や自然にやさしい人の代表は、アメリカ先住
民でした。シートンにとって、アメリカ先住民とその文化は動物や自然に接する本
当の考え方や方法を教えてくれる先生でした。シートンはアメリカ先住民の土地を
奪い、権利をみとめない白人の横暴な生き方や考え方に反対しました。そして、ア
メリカ先住民に土地を返し、権利を回復する運動の先駆者になりました。同時に、
動物にやさしくし、美しい自然をたいせつにする環境運動の先駆者にもなったので
す。つまり、シートンは自分の本当の心を大切にすることで、社会に広く目を向け
ることができました。
 シートンは50冊近いたくさんの動物物語を書いた大ベストセラー作家です。お
そらくたいへんな努力家だったことでしょう。ですから、私が「シートンのたぐい
まれな生き方」を伝えたいというと、偉人の生き方を思い浮かべる人が多いことで
しょう。でも、すでにお気づきのことと思いますが、シートンの「たぐいまれな生
き方」とは、動物と仲良くし、自然を楽しむ「子どもの心で生きた」という、すば
らしい生き方をいっています。いったいシートンは、どのようにして、そのような
生き方を自覚していったのか、その秘密を私はこの本で読者のみなさんにお伝えし
たい、と考えました。
 シートンが生きたのは今から100年まえの北アメリカ大陸です。豊かだったア
メリカの自然を目撃した最後のナチュラリストです。シートンがかたる自然の物語
は、私たち動物や自然に関心をもつものにとって、バイブルといってもいいでしょ
う。私はこの本で、シートンの作品を可能なかぎり紹介し、また絵のかずかずもそ
えるようにしました。それらを通して読者のみなさんに、いつも楽しく愉快なシー
トンに思い切り親しんでいただこう、シートンと友だちになってもらおう、という
のが、私がこの本を書いたもう一つの目的です。

☆オオカミの鳴き声をまねているシートンの肉声をホームページでお聞き頂けま
す。

今泉吉晴(いまいずみ よしはる)
1940年、東京に生まれる。東京農工大学獣医学科卒業、長岡市立科学博物館学芸
員、国際基督教大学自然科学科助手などを経て、現在、山梨県の都留文科大学文学
部社会学科教授(環境生態論、博物館学担当)。子どものころから動物、とくにモ
グラ、野ネズミ、リス、ムササビなどの、小哺乳類の毛並みの美しさとかわいらし
さにみせられた。現在は、山梨と岩手の山林に小屋を建て、渓流をながめ、植物の
手入れをして、森でくらす小哺乳類のくらしに、自分もくわわるという方法で彼ら
の生き方の謎を研究している。著書に『がんばれひめねずみ』(新日本出版社)、
『ムササビ』(平凡社)、『空中モグラあらわる』(岩波書店)など、翻訳書に
『文明にとらわれた動物たち』(思索社)、『シートン動物誌・十二巻』(紀伊國
屋書店)などがある。

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《3》 7月の新刊のご案内
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 今月は上記『シートン』のほかに、本日配本の『鉄道記』『ジンガくん いちば
へ いく』『こぐまのともちゃん』を含め、合わせて5点刊行します。

≪7月3日(水)配本≫
『鉄道記』
30年の長きにわたり、ファインダーごしに鉄道を見つめてきた真島満秀が、1200点
を超える写真でつづった入魂の一冊。

『ジンガくん いちばへ いく』
ジンガくんがおばあさんに卵を届けに市場へいきます。アフリカの大地でたくまし
く生きている人々の日常風景を描いた絵本。

『こぐまのともちゃん』
元気なお兄ちゃんに比べて、ともちゃんはちょっぴりこわがり屋で、のんびり屋さ
ん。でも、そんなともちゃんだから、できたことがありました…。

≪7月10日(水)配本予定≫
『きつねのルナール』
まる穴屋敷のあるじ、赤毛の性悪狐ルナールが縦横無尽にワルの限りをつくす。フ
ランス中世の雰囲気漂う、痛快でおおらかな動物ばなし。

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《4》 月刊誌最新号<2002年8月号>のご案内
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☆本日7月3日は月刊誌最新号<8月号>の発売日です。

◇◆ こどものとも0.1.2.『ワン ニャン プー』
              真木文絵 文/石倉ヒロユキ 絵         ◇◆
 「まってよ まって わん」と、犬が猫を追いかけ、猫はねずみを、ねずみはひ
よこを、ひよこはめんどりを追いかけていくと……。

◇◆ こどものとも年少版『ももちゃんの おみせたんけん』
             村田エミコ 作                  ◇◆
 買い物を頼まれた、ももちゃんとお姉さん。商店街の中を1軒1軒のぞいて歩きま
す。職人さんの仕事を見るのは、楽しい!

◇◆ こどものとも年中向き『コップ』
             いまき みち 作                ◇◆
 みなちゃんがコップの水を飲もうとしたら、猫のごぼちゃんの姿がコップの中
に。コップの透明な水をとおして見た、川べりの出来事。

◇◆ こどものとも『カッパのカールくん』
         油野誠一 作                      ◇◆
 川はどこまで続いているんだろう? ある日カッパのカールくんは川を下ってい
きました。初めて見る世界にカールくんビックリ!

◇◆ ちいさなかがくのとも『くさはら どん』
                          松岡達英 作                   ◇◆
 くさはらに、どんと足をおろすたびに足もとからたくさんの生き物がとびだして
きます。あぜ道で、林で、川原で、どん!

◇◆ かがくのとも『せいたかだいおう』
         広松由希子 文 
         大森雄治、ヴィジュアルフォークロア 写真
         大森雄治 監修                       ◇◆
 せいたかだいおうはヒマラヤの極寒の地で、人の背丈まで育ち、自ら温室まで
作っている不思議な植物です。その謎にせまります。

◇◆ おおきなポケット【かがく】「かえるのそうしき」
                斎藤隆夫 作
           【ものがたり】「水は、」
                  山下大明 写真・文            ◇◆
 かがくは、カエルのおなかをなでると眠ってしまう性質を活かしたごっこ遊び。
ものがたりは、水の詩的な写真絵本。

◇◆ たくさんのふしぎ 『じいちゃんの自然教室』
            さとうち藍 文/関戸勇 写真              ◇◆
 じいちゃんは野外遊びの達人だ。山や川や海のことなら何でも知っている。さ
あ、みんなも一緒に行こうよ!

◇◆ 母の友 特集“ひとりひとり考える「平和」”             ◇◆
 子育ての悩みはいろいろあれど、小さなことに悩めるのも「平和」なればこそ。
揺れ動く今、子育ての基本、「平和」を考えます。

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《5》 「母の友」編集室の窓から
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 ご好評を頂いている連載「人育ての唄『わらべうた』」。私たちスタッフも、毎
月平野恵理子さんのイラストとにらめっこをしながら、わらべうたを練習していま
す。 今月の「やんやのいん」は、遠野に伝わるじゃんけん。「石まつ たいまつ 
はさみで 三本 大指 小指 ちょいとだして かーみ、やんやのいん!」と続き
ます。
 初めの「石まつ」というのは「グー」のことですが、これについてはちょっと
ショックなこと(?)が判明しました。イラストと自分の手の形がなんだか違うの
です。あれ? と思いよく見てみると、違いはグーを握るときの親指の位置。イラ
ストでは外側に出ていますが、私の場合は内側に握りしめていたのです。他のス
タッフに聞いてみると、皆「普通、親指は外でしょ」。物心ついたころから、じゃ
んけんのグーはこうして出してきた私は、しばし呆然としたのでした。
 それはともかく、昔からの「人育て」の知恵がたっぷり詰まった「わらべう
た」。ぜひ、親子で楽しんでくださいね。

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