☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 ★  あのねメール通信~福音館書店メールマガジン  2002年8月7日 Vol.9 ★
                
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 これこそお母さん!『ちいさな ねこ』 松居直
《2》 『鉄道記』著者・真島満秀さんのエッセイ
《3》 8月の新刊のご案内
《4》 月刊誌最新号<2002年9月号>のご案内
《5》 「母の友」編集室の窓から

*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ェ━━
《1》 これこそお母さん!『ちいさな ねこ』 松居直
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ある講演会で、興味あるエピソードを耳にしました。近ごろ「ままごと」遊びを
幼稚園などで子どもたちがしなくなった。先生が誘って遊ぼうとしても、まずお父
さん役になる子がいない。お父さんのイメージがはっきりつかめないほどに、その
存在感が稀薄になったにちがいありません。
 つぎにお母さん役を募ると、意外なことにイヤという子が多い。昔なら競ってな
りたがったお母さん役ですが、今の子には抵抗感があるのか、お母さんの姿に歓び
や幸せを感じるより、何となく不安やイライラを感じて満足感がもてないのかもし
れません。
 では何になりたいかと尋ねると、「ペット!」という答えが返ってくるのだそう
です。可愛がられるだけのペットの姿が眼に焼きついているのでしょうか。これは
世の中が変わったのだと笑ってすませられる話ではありません。
 わたくしたち大人が、親が、人間の生きる姿の本質、いわば人間性を自らの態度
や言葉で子どもに伝えることをしなくなったしるしです。子どもの心に生きる力と
憧れを求める気持ちを育てるすべてを失った大人の、痩せ衰えた生き方をさらけだ
している姿の反映です。
 この講演を聞きながら、ふと頭に浮かんだのが『ちいさな ねこ』という絵本の
お母さん猫の姿でした。そしてあの絵本を子どもたちに読んでやってほしいと思い
ました。この絵本は今から40年近く前に出版された絵本です。“ちいさな ねこ、
おおきな へやに ちいさな ねこ。”にはじまります。
 お母さん猫が見ていない間に、子猫が独りで外へ出て、思いもかけぬ冒険や危険
につぎつぎ出会い、最後に大きな犬に追いかけられて高い木に登って逃げたのはよ
いが降りられません。
 子猫の姿がないことに気づいたお母さん猫が懸命に探して、やっと木の上に居る
子猫を見つけますが、木の下には犬が待ち構えています。お母さん猫は敢然と犬に
立ち向かって追い払い、子猫を助け降ろして、口に銜えて連れ帰ります。
 この場面の堂々としたお母さん猫の姿と、次の子猫におっぱいをのませているや
さしく温かいお母さん猫のまなざしと存在感は、子どもたちの共感と安心感をきっ
と誘うことでしょう。

(「全日私幼連PTAしんぶん」第483号より転載)

『ちいさな ねこ』 石井桃子 作/横内襄 絵

松居直(まつい ただし)
1926年京都府生まれ。同志社大学法学部卒業。福音館書店の設立と同時に編集長に
就任。現在は相談役。編集長時代に月刊絵本「こどものとも」を創刊。児童文学な
どの評論活動も行う。絵本の作品に『だいくとおにろく』『ぴかくんめをまわす』
(ともに福音館書店)、評論に『絵本とは何か』(日本エディタースクール出版
部)などがある。絵本の最新作に『桃源郷ものがたり』(福音館書店)。

★『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵

★『だいくとおにろく』 松居直 文/赤羽末吉 絵

★『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《2》『鉄道記』著者・真島満秀さんのエッセイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「時」

 じつは、この本ができるとは2年前まで、まったく想像もしていませんでした。
 というのも、こんな本が作りたいと思い立って福音館を訪ねたのが8年前のこ
と。
「表現者は、自分の新しい指向を積極的かつ声高にプレゼンテーションしなけれ
ば……」などと、ことあるたびにスタッフや周囲のクリエーターに説教をしていま
したが、そのじつ、自身は考えた末の思いきった編集部行きだったのです。
 それには二つの理由がありました。鉄道写真は、そのほとんどがフィールドワー
クで天候に左右されることと車両が次々に登場し、要望された撮影が切れ目なく山
積している状態が10年以上も続いていたために、新しい表現活動ができなかったこ
とがひとつ。二番目の理由は、皮肉なことに一番目の理由の反動だったのです。
 10年前には(現在でもそうですが)、書店の本棚には鉄道書といえば、どの本も
車両を中心に編集されたものばかりが並んでいました。ちょうどその頃、作品ファ
イルのなかに、視点が車両ではないが、しかし、鉄道の世界が写っている写真が数
多く眠っていることに気づいたのです。それは、以前から駅も線路も踏み切りも車
両群と同等のおもしろい存在として目に映っていましたが、なにより、鉄道は乗客
の想いを乗せて、四季をくぐり抜けて行くものという思いをもって撮影していた結
果でした。それらが行方をもたない写真として哀しい鳴き声をあげていたのです。
 ──これをまとめることができたら、世の中にない本ができる、はずだ。だが、
出版社は時代の風潮を選択して、車両に目が行くのでは……。そうなれば、また同
じような忙しい日々が続く、などとかなりの葛藤があり、逡巡しながら編集部を訪
ねたのです。
 担当者のYさんは持参した写真を見終えると、いいんじゃないですかと一言。そ
のうち連絡しますと二言。あっさりした応対の真意を読み取れぬまま帰路についた
のですが、それから6年後、今から2年前に、とつぜんある本に手紙が添えられて送
られてきました。 そこには、同封してある新刊本の次がわたしの番だと記されて
ありました。“そのうち”は、なんと6年後のことだったのです。
 しかし、8年前に提示した思いは風化するこなく、かえって6年の間にいっそう醸
成して日本の鉄道を撮影し続けていました。増幅した思いは、幅広い視界と強い視
線を生み、鉄道が人に見せることのなかった表情までもたっぷりと捉まえさせてく
れたのです。
 そうして、『鉄道記』が産声を上げました。ひょっとすると、この本は眠りの中
で成長する子供のような時を経て誕生したのかも知れません。

                                 真島満秀

★『鉄道記』真島満秀

真島満秀(ましま みつひで)
1946年、信州に生まれる。写専を経て広告代理店に勤務。エディトリアルフォト、
作家活動を目指して独立。「メカニズムと人」をライフテーマに撮影領域を世界に
広げる。特に、鉄道写真に関しては、人、生活、旅情、といった心の部分をも写し
込む写真家として、国内、海外を問わず、高い評価をうけている。1992年度ADC
(アートディレクターズクラブ)賞受賞、アメリカ合衆国ARベストフォト部門受
賞、他受賞多数。真島満秀写真事務所主宰。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《3》 8月の新刊のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今月は福音館文庫に新たに2点加わりました。『木かげの家の小人たち』の続編で
長らく品切れとなっていて手に入らなかった『くらやみの谷の小人たち』と、ご存
知インガルス一家の物語の2冊目『大草原の小さな家~インガルス一家の物語(2)
~』です。

≪8月6日(火)配本予定≫
★『くらやみの谷の小人たち』
◎小人たちと邪悪なものたちとの壮絶な戦い。

☆『大草原の小さな家~インガルス一家の物語(2)~』
◎ローラ一家は幌馬車ではるか大草原へ旅立つ。

≪好評既刊≫
★『木かげの家の小人たち』
◎第二次大戦中、少女ゆりはイギリス生まれの小人たちをひたむきに守り続けます
が……。いまわしい戦争の時代に貫かれた愛と信頼の物語。日本のファンタジーの
最高傑作。

☆『大きな森の小さな家~インガルス一家の物語(1)~』
◎幼いローラの1年間。暖かい家がここにある。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《4》 月刊誌最新号<2002年9月号>のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆月刊誌最新号<9月号>発売中です。

◇◆ こどものとも0.1.2.『だれか いますか』
              たかどのほうこ 文/夏目ちさ 絵        ◇◆
 1軒の家の前で、子グマが「だれか いますかぁー」と声をかけると、窓からタヌ
キが顔を出しました。次々に動物が現れる楽しい絵本。

◇◆ こどものとも年少版『わにわにのごちそう』
             小風さち 文/山口マオ 絵             ◇◆
 ワニのわにわには、冷蔵庫の中に肉を見つけました! わにわには肉をフライパ
ンで焼き、豪快に食べます。ああ、何ておいしいこと!

◇◆ こどものとも年中向き『とうだいのひまわり』
             にいざかかずお 作・絵             ◇◆
 岬の灯台に住むひろみちゃんは、石段に風船が落ちているのを見つけました。そ
の風船には手紙とひまわりの種がついていました。

◇◆ こどものとも『ちいさな あおいさかな』
         松居スーザン 文/原田ミナミ 絵             ◇◆
 外の世界がこわくて、かくれがにひそんでいた小さな青い魚は、ある日、大きな
緑色の魚に連れられて、初めて広い海へと出かけます。

◇◆ ちいさなかがくのとも『はっぱを ゆらすの どんなかぜ』
                          富安陽子 文/荻 太郎 絵             ◇◆
 ちりをまきちらす風おばさん、かさをひっぱる風のいたずらこぞう……風の国の
住人たちが、さまざまな風をおこします。

◇◆ かがくのとも『からだの みなさん』
         五味太郎                         ◇◆
 男の子のポケットからアメがでてきました。すると、頭や、目や、指先がそれぞ
れに勝手なことをいうのです。体ってなんでしょう。

◇◆ おおきなポケット【かがく】「こどもの瞬間」
                市谷 健 作
           【ものがたり】「やさしいワニくん」
                  土屋富士夫 作              ◇◆
 学芸会をはさんで子どもの一瞬の成長を記録した写真集「こどもの瞬間」と、ナ
ンセンスものがたり「やさしいワニくん」の2本だて。

◇◆ たくさんのふしぎ 『屋上のとんがり帽子』
            折原恵 写真・文                   ◇◆
 世界屈指の大都会ニューヨークに林立する高層ビルのてっぺんを探険してみまし
た。そこには、こんなふしぎなものがありました!

◇◆ 母の友 特集“物語というメディア-言葉がつむぎだす世界”      ◇◆
 日本に住み、日本語で詩作を続けるアメリカ人、アーサー・ビナードさんの福音
館書店創立50周年記念講演録です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《5》 「母の友」編集室の窓から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 毎月頭を悩ませるのが、本誌連載ページで紹介する映画のこと。試写会の後、著
者の方と顔を見合わせ「よし、これで行きましょう」と即決できるのは希なことで
す。ぜひ紹介したいと考えていても、公開時期が雑誌の発売日と合わなかったり、
候補がたくさんありすぎてしぼりきれなかったり。
 そんなもろもろの事情で紹介できなかった映画ひとつが、現在も公開中の「ノー
マンズ・ランド」です。
 2001年のカンヌ国際映画祭において脚本賞を、2002年アカデミー賞では外国映
画賞を受賞したこの作品で描かれるのは、ボスニア紛争。そのテーマの重さにもか
かわらず、全編に溢れるユーモアで、試写室は何度も笑いに包まれました。しかし、
ラストシーンが近づくにつれ、何とも形容しがたい静寂が、見ている私たちを支配
していくのが分かりました。
 戦争をテーマに、笑いとメッセージ性を見事に融合させたこの作品。機会があれ
ば、ぜひごらんになってみて下さい。

*************************************
このメールの再配信、および掲載された記事の無断転載を禁じます。
◆発行者:株式会社 福音館書店 販売促進部 宣伝企画課
*************************************