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 ★  あのねメール通信~福音館書店メールマガジン  2002年9月4日 Vol.10 ★
                

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         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 高齢者と絵本『おじいさんならできる』松居直
《2》 『きつねのルナール』訳者・山脇百合子さんのエッセイ
《3》 出版100周年記念・ピーターラビット新版出版のお知らせ
《4》 9月の新刊・限定復刊のご案内
《5》 月刊誌最新号<2002年10月号>のご案内
《6》 「母の友」編集室の窓から
《7》 あのねぶっくくらぶ2O02年度下半期受付中!

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《1》 高齢者と絵本『おじいさんならできる』松居直
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 今の子どもたちは、おじいさんやおばあさんのことをどのくらい知っているので
しょうか。核家族が一般化し、都会では身近にお年寄りの姿を見ない子どもも多い
ことでしょう。たまに道ですれちがっても、お年寄りと言葉を交わすこともないで
しょう。
 幼児もまたたくまに少年少女になり、青年になり、大人になり、親となります。
そしていつか高齢者の仲間入りをします。昔は老人は高砂の翁と媼としてめでたい
存在でしたが、今は高齢者を社会福祉の課題として取りあげはするものの、お年寄
りの人間性や人間の尊厳についての意識が稀薄です。
 おそらく老いについては、子どもたちは全く無知と無関心で、大人もまた感情的
にはむしろ避けて、日常ほとんど話題にしません。こういう環境に育つ子どもは、
自分が老人になったとき、どのように老いを主体的に生きるのかがとても気掛かり
です。
 おじいさんがあんな暮らしをしていた、おばあさんはこんなことを話してくれ
た、やさしい笑顔をむけてくれたといった、思い出の中の姿やそれにともなう感情
体験が自分の内にある場合は、どんな些細な思い出でも、それを手掛かりに自らの
態度や姿勢や人としてのあり様を探りあて、日々を生きてゆくことができるでしょ
う。人の生き方には意識するとしないにかかわらず、何らかのモデルやお手本があ
るものです。そうしたモデルなしに生きることは、先が見えずまことに不安で、闇
の中をさまようことになります。
 日常生活でおじいさんと、とりわけおばあさんと身近に接する機会のもてる幼い
子どもは、かけがえのない人生経験をしているのです。
 そんなことを考えていたとき、カナダの絵本『おじいさんならできる』に出会い
ました。作者ギルマンの物語は三世代の親子をとてもよく語っていますが、それに
も増してさし絵が秀逸です。手の指先から顔の表情まで実によく気を配り、言葉に
ならぬ人物の思いや愛情が伝わってきます。おじいさんと孫の心の交流がとりわけ
見事に描きだされています。この絵本はお年寄りや親にとっても子どもにとって
も、大切な心の糧となるでしょう。

『おじいさんならできる』 フィービ・ギルマン 作・絵/芦田ルリ 訳


松居直(まつい ただし)
1926年京都府生まれ。同志社大学法学部卒業。福音館書店の設立と同時に編集長に
就任。現在は相談役。編集長時代に月刊絵本「こどものとも」を創刊。児童文学な
どの評論活動も行う。絵本の作品に『ぴかくんめをまわす』『だいくとおにろく』
『ももたろう』『こぶじいさま』(ともに福音館書店)、評論に『絵本とは何か』
(日本エディタースクール出版部)などがある。絵本の最新作に『桃源郷ものがた
り』(福音館書店)。

★『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵


★『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵


★『だいくとおにろく』 松居直 再話/赤羽末吉 画


★『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 画


★『こぶじいさま』 松居直 再話/赤羽末吉 画


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《2》『きつねのルナール』訳者・山脇百合子さんのエッセイ
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“ルナールも見ていた星空”

 ブルゴーニュ地方にあるヴェズレーは、小高い丘の上に中世のたたずまいをその
ままに残す小さな町です。2000年9月、狐物語の旅に出たときの1日目の宿泊
地がここでした。
 旅に出たというのは、ある日とうとう『きつねのルナール』の訳がすんだので
す。今度は絵の準備です。ルナールが歩きまわっていたあたりを見てこなくては。
編集部の松本さんが狐物語の大家、福本直之先生(1)にお尋ねしたところ、クロワ・
アン・ブリーの村と周辺の森や田園風景、それに古い教会や修道院の跡を見てくれ
ばよいでしょうとのことでした。
 パリ在住の稲葉宏爾さん(2)が、この目的に適うのみならず、その地方の魅力も味
わえるようにと、お手のものの絵入り地図「狐物語の旅」を作って、松本さんに
送って下さいました。そこにはシトー会修道院跡や中世の城塞農園など見逃せない
ものが九つも書かれていて、フォントネー(3)とヴェズレーには大きな星が四つもつ
いています。これを参考に計画を立て、我々はレンタカーでパリを出発しました。
一行は4人、松本団長、ナビゲーターの青年悠君、私の夫、私。9月18日朝9
時、天気は上々。第1日目は一番遠いヴェズレーまで足をのばしたのです。まず稲
葉さんの狐に会って行きましょう。地図には、2年前にヴェズレーの麓の村で本当
の狐(狐が狐に化けるでしょうか!?)を飼っているのを見たと、絵入りで記入さ
れています。木靴屋さんだったそうです。オーセール、アヴァロンを経てサン・
ペール村に着きますと、なんと、川を背にした場所にうっそうとした木立や納屋を
従えて、木靴作りの看板の出ている建物がありました。
「ごめんください、お尋ねします。こちらに狐が……」団長の質問におじいさん
が出てきて「だんぜんノン!」の返事でした。そうかなあ、残念。そこからヴェズ
レーまで森の中の道をのぼって行きました。明るい森でした。木々は細く背も高く
ないのです。狐はこういう森を自由自在に走りまわっていたのかな? 夕方早く
ヴェズレーに着きました。宿に荷物を置いて教会を見に行きました。坂道ですれ違
う人たちはほとんど皆、緑色の表紙のガイドブックを手にゆっくりのんびり静か
に、満ち足りた感じで歩いてました。ガイドブックは持たないけれど、私たちもそ
うでした。つばめの巣がありました。教会では修道女たちの歌で夕方のミサが始ま
りました。静かな夕暮れそのものでした。
 そのあと夕ごはんです。ぶらぶらもどりながら通りのレストランをいくつかのぞ
いた末に、宿の斜め前のレストランにしました。テーブルに着くと大きな窓から日
没が見えました。はるかはるかむこうまで見渡せる窓でした。お店の人たちは気持
良い人たちで、私たちはすっかりくつろいで窓からの眺めやお料理、飲み物、お
しゃべりを楽しみました。楽しくておいしくて、心も身体も太りましたとも! あ
あ幸せ、ああ満足、と外に出ますと、その上更に、すごいおまけがありました。ふ
り仰ぐまでもなく、すぐそこまで空で、その星のみごとなこと、そして天の川も。
見飽きるまで夜じゅう見ていたい位でした。これが第1日目の素敵なおわりです。
 ……その後、昔々のフランスを4泊5日にわたって訪ね歩いた4人は、幸い狐に
化かされることもなく、パリに帰り着いたのでした。

                                山脇百合子

(1)国際動物叙事詩学会会長。本書の解説をお願いしました。
(2)作家、イラストレーター。パリ近郊の旅のエキスパートです。
(3)12世紀創設の大修道院跡(世界遺産)があります。
                                 
★『きつねのルナール』レオポルド・ショヴォー 編/山脇百合子 訳・絵


山脇百合子(やまわき ゆりこ)
絵本作家・画家。「ぐりとぐら」シリーズをはじめとする多数のロングセラー絵本
を子どもたちに届けつづけてきました。作・絵を担当した『そらをとんだけいこの
あやとり』、童話や単行本への挿絵などをふくめ、活躍の舞台は多岐にわたりま
す。いっぽう抜群のフランス語力をもち、若くして石井桃子氏との共訳で『のうさ
ぎのフルー』ほかの作品を世に送りました。文学作品の読書や現地を歩いた経験を
通して、フランスの歴史や風土、文化に広く深く通じています。

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《3》出版100周年記念・ピーターラビット新版出版のお知らせ
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 今回の新版は、『ピーターラビットのおはなし』出版100年を記念して企画されま
した。これからの100年に向けて、シリーズ全体をより完全なものにしようというこ
とです。作者のポター自身がこうあってほしいと望んだ絵本の形に限りなく近づけ
ようという試みなのです。最新の製版・印刷技術と新しいデザイン感覚によって、
初版の雰囲気が見事によみがえっています。
 今までのものも十分美しいと思っていましたが、今回の新版は、さらに鮮やかに
美しく印刷されています。ポターの原画が本来持っていた味が理想的な形で実現さ
れていると思います。例えば、登場する動物たちの毛並みが、これまでは、やや硬
質な印象だったのが、より自然な柔らかい感じになり、全体的に動物たちの世界が
より一層生き生きしてきたような気がします。
 造本も、カバージャケットを付け、表紙は落ち着いたブルーで統一し、用紙はク
リーム色のしっとりした風合いの紙を使用し、クラシックな雰囲気でまとめていま
す。いつまでも手元に置いておきたい本だと思います。
                               
                         福音館書店 絵本編集部

★ピーターラビットの絵本の新版は9月20日(金)から買い物かごがご利用できる予
定です。全作品のご紹介はこちらをご覧ください。


☆『ピーターラビットの絵本 贈り物セット』
◎全24巻を、ピーターラビットのキャラクターがちりばめられた美しい化粧ケース
といっしょにどうぞ。


★みんなの人気者・ピーターラビットのページもリニューアルしました。ビアトリ
クス・ポターと湖水地方についての記事や彼女の年譜に、ピーター以外のキャラク
ターもくわしく紹介しています。こちらも、ぜひご覧ください。


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《4》9月の新刊・限定復刊のご案内
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【新刊】
≪9月4日(水)配本予定≫
★『そらとぶテーブル』佐々木マキ 作

◎女の子のきのこと犬のイワンがテーブルに乗ると……。佐々木マキさんは今回、
「オイルパステル」という画材に挑戦され、今までとは違った雰囲気の絵を描いて
くれました。

≪9月11日(水)配本予定≫
★『ボリボン』マレーク・ベロニカ 文・絵/みや こうせい 訳

◎おなかを切られたくまのぬいぐるみがいなくなった!『ラチとらいおん』でおな
じみのマレーク・ベロニカさんが17歳のときに初めて出版した絵本を全面的に描
き直して出版します。

≪9月18日(水)配本予定≫
★『森からのてがみ(3)』N・スラトコフ 文/松谷さやか 訳/あべ弘士 絵

◎森の動物たちのわくわくするお話が4篇。動物の生態をしっかり観察して楽しい
お話に仕立てていく、スラトコフおじさんの動物記、第3弾。

★『ヘスースとフランシスコ -エル・サルバドル内戦を生きぬいて』
長倉洋海 文・写真

◎写真と文で生き生きと描き出す民衆の現代史。入魂のルポルタージュ。

【福音館文庫】
≪9月10日(火)配本予定≫
★『TN君の伝記』なだ いなだ 作/司修 画

◎自由を求めた明治の思想家、波瀾万丈の一生。

★『太陽の木の枝』フィツォフスキ 再話/内田莉莎子 訳/堀内誠一 画

◎鮮やかな色彩感覚あふれるジプシーの昔話集。

☆福音館文庫ページがリニューアルして、福音館文庫編集部からのページができま
した。ぜひご覧ください。


【限定復刊】

≪9月11日配本予定≫
★『てんにのぼったなまず』たじま ゆきひこ 作
◎異才、田島征彦の美しく力強い絵は、子どもはもちろん大人の心までゆさぶりま
す。
★『きんいろのしか -バングラデシュの昔話』
ジャラール・アーメド 案/石井桃子 再話/秋野不矩 画
◎インド、パキスタン、バングラデシュの広大な風土に展開するお話に、迫力ある
美しい絵が添えられた極上の絵本。日本・バングラデシュ国交樹立30周年記念で復
刊です。

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《5》 月刊誌最新号<2002年10月号>のご案内
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☆月刊誌最新号<10月号>発売中です。
表紙画像、くわしい内容紹介、定期購読のお申し込みはこちらをご覧ください。


◇◆ こどものとも0.1.2.『ありの あわわ』
              つちはしとしこ 作              ◇◆
 お風呂場で泡だらけになって遊ぶ、ありのあわわ。ダンスをしたり、スケートを
したり。勢い余って、タイルの壁にドシーン、あわわ。

◇◆ こどものとも年少版
『いろいろおせわになりました
            -わらべうた「おちゃをのみにきてください」より』
            やぎゅうげんいちろう 作              ◇◆
 いったいどんなお世話になったのか、それを絵の中から見つけだすのが楽しい。
わらべ歌を題材にした、想像力が刺激される愉快な絵本。

◇◆ こどものとも年中向き『びっくりビック』
             ふせわかこ 作                ◇◆
 猫のビックは、脅かすのが大好き。ある日、いらずらが過ぎてお巡りさんに捕
まって牢へ。さあ、どうする? ビック。

◇◆ こどものとも『はがぬけたよ』
         安江リエ 作/山口マオ 絵                ◇◆
 ドアノッカーのライオンが、こうじのぐらぐらに抜けそうになった歯めがけて、
近づいてきた。こうじは逃げますが……。

◇◆ ちいさなかがくのとも『こならぼうやの ぼうし』
                          八百板洋子 文/高森登志夫 絵           ◇◆
 帽子をなくしたこならぼうや、いろんなどんぐりの帽子をかぶってみますが、
ぴったり合いません。帽子はみつかるのでしょうか。

◇◆ かがくのとも『くるみ』
         松岡達英 作                       ◇◆
 クルミの実はどうやって実るのでしょう? 森のクルミの木を観察し、実の秘密
にせまってゆきます。クルミ料理もたくさん登場します。

◇◆ おおきなポケット【かがく】「カメレオンたちの森」
                千石正一、松久保晃作 作
           【ものがたり】「月の狩場」
                  さくらいともか 文・絵          ◇◆
 (科学)森の精霊、カメレオンが棲むマダガスカル島を、生きもの大好きな二人
組が探検します。(物語)モモンガのクルルが夜の森で聞いた伝説とは? 月の神
秘深まる長編。

◇◆ たくさんのふしぎ 『旅をするチョウ』
            佐藤広 文/平出衛 絵/佐藤英治 写真        ◇◆
 日本の中を1000キロ以上も旅をする蝶、アサギマダラ。彼らが、いかに長い距離
を移動しているか、自分の手で確かめてみませんか。

◇◆ 母の友 特集“夢見るための時間 三宮麻由子”     ◇◆
 福音館書店50周年記念講演会より、三宮麻由子さんのお話を収録しました。幼い
ころに視力をなくし、「読み聞かせの海に育った」という三宮さん。そのころに耳
から聞いた言葉の数々が、その後どのように花開いていったのかについて語りま
す。
☆「母の友」10月号の目次はこちらをご覧ください


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《6》「母の友」編集室の窓から
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 10月号「プロデューサーという仕事2」で取材に行った、映画「リターナー」の
完成披露記者会見。「リターナー」は今公開中の、CGなど特殊映像効果を駆使し
た、SF要素もあるアクション作品です。アメリカ映画や日本のサブカルチャーの
洗礼を受けて育った少年の夢が、大人の技術と洗練を獲得して熟し、素直に花開い
たという好もしさを感じる映画でした。
 その会見上、主演の金城武が、“まるで大きな子ども”とスタッフから評される
山崎貴監督についてどう思うかと質問された答えを「編集だより」で紹介しまし
た。この言葉には前段があり、監督を「自分の年がわかっていない」人と答えたあ
と、「でも、その子どもっぽさと言われるものが、想像を現実にする原動力になっ
ていると思う」と言っています。《大人の中の子ども》というのは、絵本や童話の
創作についてもよく言われる言葉ですが、これを聞いたとき、それは、ものを創る
こと全体に共通したものなのかも知れないなと思いました。そしてまた、実は「子
どもの要素」というよりは、大人子ども関係なく存在する、ただ、大人になると少
なくなる傾向がある要素ではないだろうかとも。

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《7》あのねぶっくくらぶ2002年度下半期受付中!
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 大変ご好評いただいております“絵本の定期便”あのねぶっくくらぶの2002年度
下半期の受付を開始しました。年齢、興味に応じた6つのコースに、福音館えりすぐ
りの本が目白押し。締切は10月31日です。お申し込みお待ちしております。
★各コースのラインナップのご紹介、お申し込みはこちらをご覧ください。


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