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 ★  あのねメール通信~福音館書店メールマガジン  2003年2月12日 Vol.15 ★

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         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 絵本の絵を読む 『あおい目のこねこ』 松居直
《2》 復刊絵本・限定出版4点のご紹介
《3》 2月の新刊・福音館文庫のご案内
《4》 『なんだか うれしい』著者・谷川俊太郎さんのエッセイ
《5》 月刊誌最新号<3月号>のご案内
《6》 「母の友」編集室の窓から

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《1》絵本の絵を読む 『あおい目のこねこ』 松居直
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 絵本の絵を読む

 新しい絵本を手にしたとき、大人はまず文を読み、その後に絵を見るのが普通の
絵本の読み方でしょう。しかし絵本の一番大切な読み方は、まずは絵を初めから終
りまで眼を通すことです。このときただ絵を見るのではなく、“絵を読む”ことが
肝要です。絵はすべて言葉ですから“絵を読む”のです。絵本は絵を読まなければ
物語の半分も読めません。
 文字をまだ読めない幼児がひとりで絵本を見ているときは、絵を通して物語を読
んでいるのです。それと同じように大人もまず、絵を初めから終りまでしっかりと
読んでみることがとても大切です。このとき絵がどれほど物語を語っているかいな
いかを確かめてください。絵を読むだけで物語が読みとれる絵本は、良い絵本だと
考えてもよいでしょう。
 その上で今度は、文を一語一語声に出して読んでみると、文の良し悪しがよくわ
かります。絵本の文は黙読でなく音読をすると、文の出来不出来の違いがよくわか
ります。子どもは読み手の言葉を耳で聴くのですから、音読で効果のあがる言葉づ
かいや文体がとても大切です。それと子どものための物語は、眼に見えるように書
かれていることが鉄則です。
 文を読みながら、先に読んだ絵と文の言葉とがしっかりと支え合い、助けあって
いるかを確かめてください。絵を生かす文と文を生かす絵の絶妙な組合わせができ
ていますと、読んでもらっている子どもの中に、いきいきとした物語の世界、生き
た絵本が見えてくるのです。それこそが心に残る絵本体験となるのです。
 こうした絵本体験を積みかさねた子どもが、童話本へと読書を進めてゆくときに
ぜひ薦めたいのが、デンマークの絵本作家エゴン・マチーセン作の『あおい目のこ
ねこ』です。動きのすばらしい絵がつぎつぎと現われて、どんどん物語を語りか
け、読者は思わず主人公の青い目のこねこに引っぱられ、その勢いに乗せられて文
を読んでしまいます。瀬田貞二さんの日本語訳がみごとです。絵本から童話の本へ
の橋渡しとしては最適の絵本です。もちろん子どもに読んでやるのにも、独特のお
もしろさが味わえる傑作です。

                                 松居直

『あおい目のこねこ』
 エゴン・マチーセン 作・絵/瀬田貞二 訳

松居直(まつい ただし)
児童文学家。京都生まれ。1951年同志社大学法学部卒業後、福音館書店の創業に参
画し、編集部長、社長、会長をへて、1997年より相談役、現在に至る。1956年月刊
物語絵本「こどものとも」を創刊し、編集長として赤羽末吉、長新太、堀内誠一、
安野光雅、加古里子、中川李枝子など、多くの絵本作家を世に出す。また、『もも
たろう』(1965年サンケイ児童出版文化賞受賞)『だいくとおにろく』や、陶淵明
の詩をもとにした『桃源郷ものがたり』など多数の絵本を執筆。著書は、『絵本と
は何か』『絵本の森へ』(日本エディタースクール出版部)、『絵本・ことばのよ
ろこび』『子どもの本・ことばといのち』(日本基督教団出版局)、『にほんご』
(共著、福音館書店)、『絵本の力』(共著、岩波書店)など多数。現在、担当し
たNHK人間講座「絵本のよろこび」の再々放送が、NHK教育テレビ毎週土曜午
前2:15~2:45で放送中。

★『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 画
★『だいくとおにろく』 松居直 再話/赤羽末吉 画
★『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵
★『にほんご』安野光雅 大岡信 谷川俊太郎 松居直 編

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《2》復刊絵本・限定出版4点のご紹介
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 今回の復刊絵本は、『ひよこのがずはかぞえるな』『まりーちゃんとおおあめ』
『すばらしいとき』『七わのからす』の4点です。いずれも、ゆったりとしたのび
やかな雰囲気の魅力的な絵本です。
 はじめの3冊は、子どもの本の黄金時代といわれる時代のアメリカの絵本です。
つまり1950年代前後に発表された作品です。この時代のアメリカの絵本は、子
どもたちに最高の絵本を与えたいという作り手の熱い思いが感じられる傑作がたく
さんあります。
『ひよこのかずはかぞえるな』の作者は、ヨーロッパ生まれのドーレア夫妻です
が、二人は結婚してからアメリカに渡り絵本作家になりました。二人は石版画によ
る美しい絵本をたくさん作りましたが(『トロルのばけものどり』もその1冊で
す)、その中でも、この『ひよこのかずはかぞえるな』は、むかしばなしのような
おおらかさを持った、とびきり愉快な絵本です。
『まりーちゃんとおおあめ』も、実におおらかな絵本です。雨がどんどん降ってき
て、ついに、洪水になってしまい、まりーちゃんは、あわてて、馬や牛や豚やヤギ
などの動物を避難させますが…。全体に南ヨーロッパ的なのどかな空気と明るい光
が感じられます。この絵本は、アメリカの絵本ですが、作者のフランソワーズは、
実はもともと南フランスの人です。なるほどと納得がいきます。
『すばらしいとき』は、『かもさんおとおり』の作者、ロバート・マックロスキー
のすばらしい絵本です。マックロスキー一家が夏のあいだ暮らす、アメリカ合衆国
メイン州のペノスコット湾に浮かぶ小さな島が舞台です。早春から夏のおわりまで
の島の自然の移り変わりと一家の暮らしぶりがどきどきするほどみずみずしい筆致
で描かれています。大気の匂い、光のざわめき、潮のかおり、真夏の太陽、せまり
くる嵐の気配、ふきあれる大風、そして夏のおわり…。読み返すたびに胸がじーん
としてしまいます。
 さて、最後の『七わのからす』は、スイスの絵本で、グリム童話を絵本にしたも
のです。これも前述の3冊と同じ時代の絵本です。画家は、グリム童話を描かせた
ら右に出る者はいないと言われるフェリクス・ホフマン。生き生きした線としっと
りとした色合いの石版画で、このグリム童話の持っている不思議な世界を見事に描
いています。
 というわけで、今回の4冊は、40年以上前に発表された絵本でありながら、決
して古びていない、むしろ新鮮に感じられる作品ばかりです。

                               絵本編集部
★『ひよこのかずは かぞえるな』
 イングリとエドガー・バーリン・ドーレア 作/せた ていじ 訳

★『まりーちゃんとおおあめ』フランソワーズ 文・絵/きじま はじめ 訳

★『すばらしいとき』ロバート・マックロスキー 文・絵/わたなべ しげお 訳

★『七わのからす』フェリクス・ホフマン 絵/せた ていじ 訳

◆「復刊絵本・童話 限定出版」のページにて、ご紹介しました4点の見開きペー
ジなどを掲載しています。

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《3》2月の新刊・福音館文庫のご案内
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【福音館文庫】
≪発売中≫
★『シルバー・レイクの岸辺で -インガルス一家の物語4』
 ローラ・インガルス・ワイルダー作/ガース・ウィリアムズ画/恩地三保子 訳
◎シルバー・レイクに移り住んだローラは、失明した姉のメアリイを助け、かあさ
んの片腕として一家を支えます。

★『子どもを食べる大きな木の話 -ショヴォー氏とルノー君のお話集2』
 レオポルド・ショヴォー 作/出口裕弘 訳
◎子どもを食べて肥え太ったブナの大木と木こりが死闘を演じる表題作ほか、とこ
とん自在に物語の世界を広げる傑作5編が大集合!(文庫版として復刊です。)

【新刊】
≪2月19日(水)配本予定≫
★『だれかな? だれかな?』 なかや みわ 作
◎ちょっとだけ顔をのぞかせる動物。「だれかな? だれかな?」と呼びかけながら
ページを開くと、その動物が正体を現します。

★『とってください』 福知伸夫 作
◎カメが「とってください」と頼むと、サルやハトやキリンが、木の上からいろい
ろなものを取ってきてくれました。

★『お日さまをみつけたよ』 M・ミトゥーリチ 原案・絵/松谷さやか 文
◎シベリアの森にすむ動物たちがお日さまを探しに出かけることになりました…。
ロシア画壇の巨匠が渾身の力で描いた絵本。

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《4》『なんだか うれしい』著者・谷川俊太郎さんのエッセイ
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 うれしいって何?

 嬉しさには理由が分かる嬉しさと、理由がはっきりしない嬉しさがあるように思
います。たとえば欲しかったものが手に入ったとき、あるいは好きな人と友だちに
なれたとき、私たちは嬉しさのわけを言葉にすることができます。しかしたとえ
ば、きれいな花を見てきれいだなあと感じたとき、あるいは朝の晴れ上がった青空
を見て昨日の不愉快なできごとが心の中から消えてしまったとき、その気持ちの中
には嬉しさがひそんでいると思いますが、その嬉しさのわけを花や青空だけに限っ
てしまうと、どこか言い足りないような気がするのではないでしょうか。
 花がきれいだから嬉しい、青空が気持ちよくて嬉しい、それはたしかにそうなの
ですが、嬉しさはどこかもっと深いところから湧いてくるように感じられます。絵
本『なんだか うれしい』の最初の場面は「ごはんのたけるいいにおい」を喜んで
いる女の子の写真から始まりますが、じゃあ「ごはんのたけるにおいがどうしてそ
んなに嬉しいの?」と、この子に問いかけても、多分「だっておなかがすいてるん
だもの」というような答えが返ってくるだけでしょうし、さらに「おなかがすくの
がどうして嬉しいの?」と問いつめても、この子はきっと困ってしまうと思いま
す。
 理由がある嬉しさも、そんなふうに問いつめていくと理由がだんだん分からなく
なってきそうです。最後には「だって嬉しいから嬉しいんだ」と言うよりほかなく
なってしまう。でも私はそこにこそ、嬉しさ、あるいはもっと深く喜びという感情
の本質があると思います。嬉しさの理由はつきつめるとただひとつ、自分が「生き
ている」という事実にあるのではないでしょうか。ふだんは私たちは生きているこ
とをあたりまえだと思っています。しかしたとえば自分が病気になったときや、親
しい人が亡くなったときなど、あたりまえだと思っていた生きていることが、どん
なにありがたいことか、どんなに貴重なことかを自覚します。そのとき何も理由が
なくても、私たちは生きているだけで嬉しいのです。
 その反対に、生きているだけで悲しい、生きているだけで腹が立つ、というよう
なときも人間にはあります。それらもまた人間にとって大切な感情ですが、もし人
生の目的が幸せになることだとしたら、嬉しさ、喜びの感情は人間にとってもっと
も望ましいもの、もっとも大切なものだと言えます。生きていることがそれだけで
嬉しいと感じられるとき、ほんのちょっとしたこと、ごく小さいものにも、私たち
の五感は開き、そこに私たちの生きる世界のすばらしさを発見することができま
す。大きいこと、強いものだけが大事なのではありません、身のまわりのふだんは
気がつかないような小さなことにも、私たちは生きる喜びを感じることができま
す。そしてそういう小さな感動が、どこかで私たちを変え、世界を変えるのだと私
は信じています。『なんだか うれしい』がそういう小さな力のひとつになること
を願っています。

                                谷川俊太郎
 
★『なんだか うれしい』 谷川俊太郎+だれかとだれか

谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
1931年、東京に生まれる。1952年に詩集『二十億光年の孤独』を刊行以来、詩、
エッセイ、絵本、童話、翻訳など多くの仕事を手がける。幼児の心の奥底から大宇
宙のはてまで、あらゆる境界をつきぬけて生動するイメージを、やさしく美しい日
本語でうたう日本を代表する詩人。著書多数。

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《5》月刊誌最新号<3月号>のご案内
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☆月刊誌最新号<3月号>発売中です。

◇◆ こどものとも0.1.2.『はねちゃんの ピクニック』
              なかがわりえこ 文/やまわきゆりこ 絵    ◇◆
 はねちゃんが動物たちと一緒にピクニックに出かけます。ピクニックに行って一
番楽しいのはお弁当。どんなお弁当なのでしょう。

◇◆ こどものとも年少版『おーい、めだか』
            島津和子 作                        ◇◆
 水草についていたのは、めだかの卵。卵から小さなめだか(ひめだか)が出てき
て、大人のめだかになるまでを丹念に描いています。

◇◆ こどものとも年中向き『へんてこロボットのぼうけん』
             平山暉彦 作                  ◇◆
 机の後側に落ちて忘れられてしまった文房具やおもちゃたち。ある日、みんな一
緒になるとロボットとして動けるようになりました。

◇◆ こどものとも『だるまちゃんとてんじんちゃん』
         加古里子 作                     ◇◆
 だるまちゃんは池で知り合った3人の天神ちゃんの家に行き、片づけ、ご飯炊
き、お握りつくりなど一生懸命仕事を手伝います。

◇◆ ちいさなかがくのとも『ことりの ゆうびんやさん』
     ニコライ・スラトコフ 原作/松谷さやか 文/はた こうしろう 絵     ◇◆
 セキレイの夫婦が、郵便受けに巣をつくりました。郵便屋さんが手紙を入れよう
とすると大さわぎ! ひなは無事に育つのでしょうか。

◇◆ かがくのとも『ぼくの キャベツくん』
         さとうち藍 文/津田櫓冬 絵                ◇◆
 キャベツを収穫しても、そのままにしておくと、またキャベツができ、さらに芽
が伸び、種ができます。新しい発見を描いた観察絵本。

◇◆ おおきなポケット【かがく】「へんしんしよう!」
                あや さちこ 作/竹石裕 デザイン
           【ものがたり】「パピプペンギンズ 探偵ものがたり」
                  根岸礼子 文/ひこね のりお 絵    ◇◆
「へんしんしよう!」手作りの仮装グッズですきなものになりきって遊ぼう!
「パピプペンギンズ」ユーモラスなペンギン探偵が事件に挑みます。

◇◆ たくさんのふしぎ『ぼくの影をさがして』
           飯沢耕太郎 文/minim++ 絵         ◇◆
 さまざまに形を変える影。影絵遊びや影絵芝居。影で描いた絵!? 忘れかけて
いた影の魅力を思い出し、新しい影の魅力を見つけよう。

◇◆ 母の友 特集“「ゆとり教育」って、なんだろう”           ◇◆
 2002年度より週5日制と新学習指導要領が実施されました。「ゆとり教育」
を目指した教育改革の実際を探ります。

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《6》「母の友」編集室の窓から
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「母の友」では、創刊50周年を記念して、ただいま創作童話「こどもに聞かせる
一日一話」を募集中です。その締め切りがいよいよ3月1日(消印有効)に迫りま
した。
 詳しくは、福音館書店ホームページの「お知らせ」をごらんいただくとして、大
人が子どもを、肉声で物語の世界にいざなうことの大切さは、今の時代こそ、改め
て見直されるべきでしょう。「でも、原稿用紙2枚から2枚半ぐらいの長さで、ど
んな面白いお話が書けるの?」と疑問を持つ方のために、昨年12月号に掲載した
募集広告では、かつて本誌に載った一日一話から2話をご紹介しました。
 その1つ、上沢謙二さん作の「モモがながれだすまで」は、山の奥にたった1本
はえているモモの木に、花が咲き、たった1つ実がなり、どんどん大きくなってい
く様子を、巧みな筆で、「次は何が起こるんだろう」と読み手の大人までつい引き
込まれるように描いていきます。
 そして、やがてそのモモから変な声が聞こえだし、中に赤ちゃんが入っていたこ
とが明かされて、「あ……」と聞き手が思い始めるや、モモは川にポチャン! ど
んぶらこっこと流れ出し、おばあちゃんが洗濯をしているところへ……。
「それがどうなったか、あなたはよく知っているでしょう」という洒落た結びでお
話は終わりを告げます。
 すぐれたアイデアと、選ばれ、練られた言葉が、しばし子どもを豊かな物語の世
界へつれていきます。長さ短さにかかわらず、物語は、いくらでも大きな広がりを
持った世界を差し出すことができます。
 夜、子どもが寝入るまでのほんの短い時間に、忙しい親でもプレゼントできる、
そんな手のひらの物語を書いてみませんか。


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