あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2014年10月1日 Vol.173
天高く、もの思う、秋……

 いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 ヤブ蚊の脅威もまだ去っていませんが、モズの声をこずえに聞くと、いつのまにかもうすっかり秋になっていたのを感じます。
 月の初めは月刊誌のご案内。この季節にふさわしい11月号をご紹介します。秋の自然を感じながら、どうぞ絵本を味わってみてください。

《1》新刊『アヤカシさん』の作者 富安陽子さんのエッセイ
     記憶の迷い道  富安陽子
     
 東京の生家は千早町という町にあって、西武線の椎名町が最寄駅でした。各駅停車しかとまらない小さな駅です。小さいながらも駅の改札を抜けると、そこは賑やかな商店街で、八百屋や古本屋や焼き鳥屋なんかが、ごちゃごちゃと並び、わくわくするような活気のうちにひしめいていました。その駅前から、スナックと靴屋の間の狭い路地を抜ければ、長崎神社の鳥居前の通りに出ます。この神社は、正月と秋祭りの折には大変な人出でごった返すのですが、それ以外の日は訪れる人もまばらで、境内はいつも、町並の上に抜きんでてそびえる木立ちに包まれ、シンと静まっていました。時折思い出したように参拝に訪れた人が、パンパンと大きく柏手を打つと、その時だけ暗い社殿の奥で神様が目を覚ますのではないか……と、幼い私はそんなことを思ったりしました。あやかしさん
 両親と共に大阪に引っ越すまでの三年間をこの町で過ごし、引っ越した後も私は、夏休みが来るたびに、祖母と伯母の待つ千早町の家を訪ねました。学生時代の四年間は、この家に下宿して、椎名町から電車に乗り大学に通いました。しかし、その後、家のすぐそばに有楽町線の要町という駅ができると、椎名町駅を利用する機会はほとんどなくなってしまったのです。
 去年、とうとう千早町の家を処分することが決まり、私は父と二人、住む人もない家の整理に出かけました。「椎名町から歩いてみようか」――ふと、そう思いたってその日は池袋から有楽町線ではなく、西武線の各駅停車に乗りかえました。
 すっかり様変わりした駅前を抜け、長崎神社の通りを歩きはじめると、それでもあちこちに昔ながらの町並が顔をのぞかせます。すると突然私は、不思議な感覚に捕らわれました。このままこの道をたどっていけば、いつのまにか時間を遡り、私と父は昔のままの生家に到着してしまうのではないか、という感覚です。
 大きな柿の木と小さな井戸と、ミヤコワスレに縁取られた鯉の池と、それから、それから、今はもうこの世にいない祖母と伯母と母がそこで私たちを待っている気がして、胸が震えました。
 もちろん私と父がたどりついたのは埃っぽい空っぽの家でした。でも、私は思うのです。あれは、あの町が、それとも取り壊されようとするあの家が、私に見せてくれた遠い日の鮮やかな残像ではなかったかと――。日々は過ぎ去ってしまっても、残された記憶は、町や家や思い出の品々の内に宿り、耳を傾ける者に、いつでも雄弁に語りかけてくれるのではないかと――。
 『アヤカシさん』の物語のラストは、そんな不思議な体験から生まれました。ウェブに連載を始めた時には、お話がこんな方向に転がっていくとは思いもしなかったのに、おかしなものです。自分の心の奥にしまってあったカラクリ箱が一つ開いたような……今は、そんな気がしています。

著者: 富安 陽子(とみやす ようこ) 1959年、東京生まれ。高校在学中より童話を書きはじめた。主な作品に、『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房 小学館文学賞・日本児童文学者協会新人賞)、「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社 新美南吉児童文学賞)、『やまんば山のモッコたち(新版)』(福音館書店 IBBYオナーリスト賞)「菜の子先生」シリーズ、「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(以上福音館書店)など。大阪在住。

あやかしさん

『アヤカシさん』
富安陽子 文/野見山響子 画
定価(本体1400円+税)
不思議な存在が「見えてしまう」能力を持つ、小四のケイと大学生のメイおばさん。器物のアヤカシを名乗る正体不明のおじいさんに導かれて、世にも奇妙な体験を重ねていく。


うぇぶふくいんかん

2013年3月からはじまったウェブマガジンWEB福音館。ここは、個性豊かな物語が集う小さな家です。『アヤカシさん』をはじめ、この家でそだった物語が、いよいよ単行本として世に出はじめています。また、角野栄子さんによる「魔女の宅急便番外編 ソノちゃんがオソノさんになったわけ」などの新作も掲載されています。ぜひ遊びに来てくださいね。



《2》月刊誌最新号<11月号>のご案内
 
こどものとも0.1.2.『おいでおいで』 こどものとも0.1.2.
『おいで おいで』


佐々木一澄 作
定価(389円+税)

まねき猫が「おいで おいで」をすると、鳩笛が「ほっほ ほっほ」とそばにやってきます。愛らしく描かれた郷土玩具たちが登場する、シンプルで愉快な絵本。







こどものとも年少版『どんぐりずもう』

こどものとも年少版
『どんぐりずもう』


いしだえつ子 作/飯野和好 絵
定価(389円+税)

秋の雑木林でどんぐりの相撲大会がはじまりました。自慢のはらまわしをつけたどんぐりたちが土俵入りをします。最後の大一番に登場したのは……。



 

こどものとも年中向き『サンタルのもりの おおきなき』 こどものとも年中向き
『サンタルのもりの おおきなき』


西岡直樹 文・構成/シブー・チットロコル 絵/西岡まどか コラージュ
定価(389円+税)

生き物たちのいこいの場だった大きな木は、ある日王様の命令で切られてしまいました。インドの絵師が描くプリミティブな世界。

こどものとも『とりよ、とり』

こどものとも
『とりよ、とり』


かなざわ めぐみ 作
定価(389円+税)

男の子が豆をまきながら散歩をしていると、どんどん鳥がやってきました。男の子はたくさんの鳥たちを家に連れて帰ろうと考えます。



ちいさなかがくのとも『かいちゅうでんとう』 ちいさなかがくのとも
『かいちゅうでんとう』


みやこし あきこ 作
定価(389円+税)

暗い夜。懐中電灯のスイッチ、カチ。わあ、なんだかいつものおへやじゃないみたい。お兄ちゃん、いっしょにたんけんしよう!

かがくのとも『かまぼこ ちくわ さつまあげ』 かがくのとも
『かまぼこ ちくわ さつまあげ』


かさはら のりゆき 作
定価(389円+税)

魚の身の水気をとってすりつぶしたら、魚のすり身の完成。このすり身を、蒸すと何ができるでしょう? 焼くと? 揚げると?

たくさんのふしぎ『むらをまもるわらのおにんぎょうさま』 たくさんのふしぎ
『村を守る、ワラのお人形さま』

宗形 慧 文・写真
定価(667円+税)

東北地方を中心に各地で、人形道祖神と呼ばれる大きなワラの人形が立っています。いかついその人形たちは、どんな思いで作られたのでしょう。



母の友

母の友 
特別企画 "こどもに聞かせる一日一話" インタビュー"谷川俊太郎、「母の友」から母を語る"

定価(505円+税)

夜寝る前やちょっとした合間に子どもと一緒に楽しめる30編の童話集と、詩人・谷川俊太郎さんに聞く、母のこと、子育てのこと。


こちらから11月号の目次をご覧いただけます。

《3》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月はこどものとも第一編集部です。

こどものとも第一編集部から

 
 こんにちは! こどものとも第一編集部です。「こどものとも」は、1956年に創刊された月刊絵本ですが、毎月欠かさず刊行を続け、2016年になんと60周年を迎えます。人間で言えば、還暦。その間にどんなにたくさんの方々が楽しんでくださったことでしょう。そんな読者の皆様に感謝の気持ちを込めて、今もうすでに60周年の企画の準備も始まっています。楽しみにしていてくださいね。
 「こどものとも」編集部の目指していることのひとつに作品の多様性があります。誰も見たことのない、新しい表現を追求して絵本の地平を広げることで、子どもたちの好奇心を刺激し、想像を膨らませ、作り手の方々の表現の場も広げられたらと考えています。
 そういう意味で、今月の「こどものとも年中向き」11月号『サンタルのもりの おおきなき』も、あまり見たことのない新鮮な作品だと思います。インドに住むサンタル絵師と呼ばれる人々のうちのおひとり、シブー・チットロコルさんの手による絵本で、泥や草の汁で描かれたその絵は古代の洞窟絵のようなシンプルさで、写実からかけ離れた独自の表現で生き物たちの本質を描き出しています。さらに一見子どもの絵のような愛らしさもあり、親しみを覚えます。見れば見るほど不思議な絵で、原初のパワーにあふれています。サンタル絵師の方々の暮らしについては本誌折込付録にも記事を掲載しましたので、ぜひ手にとってお読みいただければと思います。長年インドに滞在し、昔話の採集などをされながら、現地の方々と交流し、インドの文化に精通されている西岡直樹さんのお力のおかげで実現した一冊です。どうぞお楽しみください。

★こちらから「こどものとも」をご覧いただけます。
★こちらから「こどものとも年中向き」をご覧いただけます。

《4》「あのねぶっくくらぶ」2014年度後期申し込み受付中!

 福音館書店が自信をもっておすすめする、選りすぐりの絵本と童話を毎月1冊 ずつ、お子さまの成長にあわせてみなさまのお手元に直接お送りする「あのねぶ っくくらぶ」は、2014年度後期半年分(2014年10月~2015年3月)のお申し込み を、10月いっぱいまで受付中です!

  ★あのねぶっくくらぶのご案内

《5》2015年の「ぐりとぐらカレンダー」、好評発売中!

2013年に誕生50周年を迎えた絵本の人気者「ぐりとぐら」のカレンダーです。絵本シリーズの中から季節に応じた12ヵ月の絵を厳選しました。予定を書きこめる、使いやすいデザインです。ぐりとぐらと一緒に、1年間をすごしてみませんか。

カレンダー特集ページはこちら(カレンダー中面がご覧になれます)

ぐりとぐらかれんだー

ぐりとぐらカレンダー2015
中川李枝子 作/山脇百合子 絵
価格1300円(本体1204円+税)
サイズ26×37cm(広げると52×37cm)

《6》福音館書店ホームページメンテナンスのお知らせ

福音館書店ホームページをいつもご利用いただきありがとうございます。
このたび、メンテナンスのため、次の日程ですべてのサービスを休止させていただきます。

2014年10月6日(月)21:00~10月7日(火)14:00


この期間、閲覧、購入、会員登録・修正・解除などご利用いただけなくなります。
ご迷惑をおかけし、たいへん申し訳ございませんが、ご理解、ご配慮を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
《7》原画展・イベントのお知らせ

● 中脇初枝展「ちゃあちゃんの里帰り」

会期 2014年9月19日(金)~ 11月3日(月・祝)
休館日 会期中無休
開場時間 9時~17時(入館は16時30分まで)
会場 高知県立文学館 2階企画展示室
高知県高知市丸ノ内1-1-20
問い合わせ先 TEL 088-822-0231
入場料

一般500円、高校生以下無料 

関連作品 『こりゃまてまて』

● 誕生50周年記念 ぐりとぐら展
会期 2014年9月6日(土)~10月13日(月)
休館日 会期中無休
開場時間 9時~17時(入館は16時30分まで)
会場

ひろしま美術館
広島市中区基町3-2

ぐりとぐら展 公式ホームページ

問い合わせ先 TEL 082-223-2530  
入場料

一般1200円(1000円)、高・大学生900円(700円)、小・中学生500円(300円)※( )内は、前売りおよび団体(20人以上)の料金

関連作品 ぐりとぐらの絵本7冊セット

●日本を飛び出した画家たち絵本原画展
会期 2014年9月19日(金)~ 11月18日(火)
休館日

木曜日

時間 9時30分~17時(入館は30分前まで)
会場 絵本美術館&コテージ 森のおうち
長野県安曇野市穂高有明2215-9
問い合わせ先 TEL 0263-83-5670
入場料

一般800円、小・中学生500円 3歳以上 250円

関連作品

『ゆっくりのんのちゃん』


●JBBY40周年記念トーク企画「子どもの本のこれから—未来への贈りもの」
日時 2014年10月12日(日)
時間 14時~16時
会場 川口基督教会
大阪市西区川口1-3-8
問い合わせ先 主催 JBBY(日本国際児童図書評議会) ※申し込み方法はJBBYにお問い合わせください。
TEL 03-5228-0051
参加費 一般1000円、高校生以下無料
概要 角野栄子さんをホスト役に、荒井良二さん、金原瑞人さんをゲストに招き、子どもの本について語ります。
※11月に福岡(ゲスト ひこ・田中さん、令丈ヒロ子さん)、2015年1月に東京(ゲスト あべ弘士さん、穂村弘さん)で開催予定

●ブラティスラヴァ世界絵本原画展
会期 2014年9月27日(土)~ 11月9日(日)
休館日

月曜日(10月13日、11月3日は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)

時間 9時~17時(入館は30分前まで)※10月25日(土)は20時まで開館(入館は30分前まで)
会場

かわら美術館
愛知県高浜市青木町9-6-18

問い合わせ先 TEL 0566-52-3366
入場料 高校生以上600円(480円)、中学生以下無料  ※( )内は前売、20名以上の団体料金  
関連作品

『きこえる?』 『おうさまのおひっこし』 『馬の草子』



 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000