あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2015年7月1日 Vol.191
梅雨も後半戦!

  いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 「陽性の梅雨」といえば聞こえはいいですが、今年の雨の降り方は激しいですね。今月は、美しいオランダの風景が魅力的な『ピーテル、はないちばへ』のエッセイをお届けします。じめじめした空気をふきとばすような、さわやかな絵と文章をお楽しみ下さい。

《1》新刊『ピーテル、はないちばへ』の作者、広野多珂子さん

『ピーテル、はないちばへ』によせて   広野多珂子

ピーテル、はないちばへ

 私がアムステルダムに行ったのは、今から40年も前のことです。そのころ、私と夫はヨーロッパ各地の美術館めぐりをしていました。貧乏旅行のため美術館に行くのみで、市内やオランダ国内を観光してまわる余裕はありませんでした。でも、駅で紹介してもらった安いホテルから美術館までの道は本当に楽しいものでした。運河沿いに並ぶ切妻屋根の建物の、工夫を凝らした釣鐘型の破風や、窓辺の花とレースのカーテンの調和のすばらしさに思わず目を見張りました。古い歴史のある町なのに圧迫感がなく明るく、私にはまるでお祭りの輪の中にいるような感じがしました。
 8年前、大正末期から昭和初期の日本の少し昔を描いた絵本『おひさまいろのきもの』ができあがったとき、長い間日本の風景を描いていましたので、今度はアムステルダムの町並みを描いてみたくなりました。田舎の男の子ピーテルがお父さんの忘れ物を届けに、一人でボートをこいで、町の花市場に行くストーリーを絵巻物風に。
 はじめは文の無い本にしたいと思っていましたので、ストーリーにあわせて絵だけを描いたラフをつくりました。でも、すぐに絵のみでは物足りないことに気づきました。そこで、文をつけることにしました。ラフの絵にそって文を書いていきましたが、絵に捕われすぎて空々しい内容の文になってしまいます。何度書き直しても同じでした。そんなとき、見かねた編集部のTさんが私に助言をしてくれました。「広野さん、いったん絵から離れて文を書いたら」と。そして、Tさんが少年のころお父さんに忘れ物を届けに行ったときのことを話してくれました。そのときのTさんの状況に比べてピーテルの大変さは10分の1にも及びませんが、私の中でピーテルがどんどん動きはじめました。やっと納得のいく文を書きあげることができました。
 さあ、いよいよ絵の本描きです。ピーテルの村があるのは、アムステルダムからブリュッセルに行く車窓から見た平原。ピーテルの家は、ザーンス・スカンスの民家風に。町に行く途中の民家はワルテンの家並み風に。花市場のある町は、アムステルダムであったり、ユトレヒトやデルフトであったりと、いつの間にか私の好きなオランダの風景が重なりあって、実際のオランダとは違う心の中のオランダができあがっていきました。同じ町並みはどこにもありません。ひょっとしたら私の桃源郷の風景かもしれません。
 そんな運河沿いの景色を、ピーテルのこぐボートに乗って、オールの音やアコーディオンの音色を聴きながら、楽しんでいただけたら嬉しいです。
 ちなみに、この本に登場するアコーディオン弾きのヤンさんは、若き日プロのアコーディオン演奏者として活躍されていたTさんをイメージして描きました。

広野多珂子(ひろの たかこ)
1947年、愛知県に生まれる。スペインのシルクロ・デ・ベージャス・アルテスで美術を学ぶ。帰国後、児童書の世界に入る。絵本の作品に「ねぼすけスーザ」シリーズ、『ちいさな魔女リトラ』『おひさまいろの きもの』『おさんぽ おさんぽ』『ハートのはっぱ かたばみ』(以上、福音館書店)、『ようこそ こいぬレキのにわへ』(教育画劇)、『やさいばたけは はなばたけ』『さんぽみちは はなばたけ』(以上、佼成出版社)など多数ある。主なさし絵の作品には、『魔女の宅急便その2』(福音館書店)、『アキンボとライオン』などの「アキンボ」シリーズ、『ぼくのクジラ』『帰ろう、シャドラック!』(以上、文研出版)などがある。千葉県在住。

ピーテル、はないちばへ 『ピーテル、はないちばへ』
広野多珂子 文・絵
定価(本体1500円+税)
男の子ピーテルは、家族とともに運河沿いに住んでいます。ある日、はじめてボートをこいで花屋のお父さんに忘れ物を届けにいきます。はたして、無事に届けられるのでしょうか。
《2》月刊誌<8月号>のご案内


こどものとも0.1.2.『かえるさん くわっくわっ』 こどものとも0.1.2.
『かえるさん くわっくわっ』


廣野研一 作
定価(本体389円+税)

あまがえるが目を覚ましました。頭をきゅっきゅっ。ぽーんとジャンプ。泳いですーいすい。あまがえるの魅力を描いた作品です。
こどものとも年少版『パンダのソフトクリームやさん』

こどものとも年少版
『パンダのソフトクリームやさん』


小川かなこ 作
定価(本体389円+税)

パンダのとんとんくんとらんらんちゃんはソフトクリームやさんです。ある日、くまくんと一緒にはちみつを取りに行きました

こどものとも年中向き『万次郎さんとすいか』 こどものとも年中向き
『万次郎さんとすいか』


本田いづみ 文/北村 人 絵
定価(本体389円+税)

万次郎さんのすいかが、一人でにごろごろ転がりはじめました。慌てて後を追いかけて、万次郎さんはどぼんと川に飛び込みます。
こどものとも『ものうり草子』 こどものとも
『ものうり草子』


井上洋介 絵・文
定価(本体389円+税)

「今は昔、もの売りの男、天狗のうちわを売りにきたと」。不思議なものを売る男が次々に登場します。井上洋介のナンセンス絵本。
ちいさなかがくのとも『はっぱ きらきら』 ちいさなかがくのとも
『はっぱ きらきら』


多田多恵子 文/山本尚明 写真
定価(本体389円+税)

はっぱを空にかざしてみると、あらふしぎ。きらきら光るレースのもよう、迷路やハートの形が出てきたよ!
かがくのとも『かぶとむしの たたかいの おきて』 かがくのとも
『かぶとむしの たたかいの おきて』


本郷儀人 文/小堀文彦 絵
定価(本体389円+税)

夏の夜の雑木林で行われるカブトムシのオスの闘い。じつは、その闘い方には「掟(おきて)」があるのです。
たくさんのふしぎ『しっぽがない!』 たくさんのふしぎ
『しっぽがない!』


犬塚則久 文/大島裕子 絵
定価(本体667円+税)

りくのうえ学校に通う、コアラのふくろいくんとヒトのあだちさんにはしっぽがありません。さてどうしてか、考えはじめました
ははのとも8がつごう

母の友
特集「みんな大好き? う・わ・さ」
対談「自然、子ども、物語」(後編)
定価(本体505円+税)

特集では人がなぜうわさ話をしてしまうのか、考えます。絵本作家、井上洋介さんが絵とことばで語る「昭和」の思い出も必見。
こちらから目次をご覧いただけます。

《3》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月は母の友編集部です。

母の友編集部から

 こんにちは。「母の友」編集部です。「母の友」は福音館唯一の大人向けの月刊誌です。「子育て」と「絵本」、2つの柱で毎月特集を作っています。
 さて、今日は、最近の号で取り上げた、子どもの本にまつわる話題をいくつかお知らせしたいと思います。
 6月号では『やこうれっしゃ』(西村繁男作)など「字のない絵本」について考えました。もし「子どもにどうやって読めばいいのだろう?」と思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ。また、西村繁男さんが「字のない絵本」を描くにいった創作秘話も掲載しています。
 同じ6月号では、『ずいとんさん』『かえるの竹取ものがたり』といった絵本の著者、斎藤隆夫さんのアトリエを訪ね、ロングインタビューにお応えいただきました。銅版画作家だった斎藤さんは、なぜ絵本の道に?
 続く7月号では日本を代表する霊長類学者であり、物語『少年動物誌』の著者でもある河合雅雄さんと、児童文学者、斎藤惇夫さんの対談をお届けしました。河合さんは小さい頃は「ガキ大将」だったとか。それがなぜ"書く"ことに興味を持つようになったのでしょうか。また、「子ども時代に、大事なこと」とは?
 最新号である8月号では、絵本作家、井上洋介さんが近年、制作したシリーズ絵「あぶりだし昭和幻灯館」をご紹介します。井上さんは今年84歳。その絵を描いた背景には、少年時代の記憶と関係がありました。戦後70年の今年、井上さんが「あの頃」の思い出を教えてくれます。「人間は、ごはんだけじゃあ、生きていけないんです」。ずしんと心に響く言葉が満載です。
 いずれの号もぜひお手にとってご覧ください。暑い季節、どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。

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《4》原画展・イベントのお知らせ

● 「本とくらしの文化の宝庫が生まれる日 ラオス 山の村に図書館ができた」展

概要 山の村の暮らしや図書館作りの記録写真、モン族の絵本のはじまりを思わせる伝統の刺繍などが展示されます。また、安井清子さんの講演会も開催されます。
日時 【展覧会】 2015年7月4日(土)~7月26日(日)
【講演会】 2015年7月20日(月)13:30~
会場 木城えほんの郷
問い合わせ先 TEL 0983-39-1141
関連作品 『ラオス 山の村に図書館ができた』

●おぼまこと絵本原画展 『カワと7にんのむすこたち―クルドのおはなし―』

概要

中東にはるか昔から伝わる愛と勇気の物語が、おぼまことさんの繊細なタッチでよみがえりました。怖さと美しさの混じり合う不思議な世界をお楽しみください。

会期 2015年6月23日(火)~ 7月7日(火)
会場 器と珈琲の店 ギャルリ・ド・ぽえむ
問い合わせ先 TEL 03-3325-3403
関連作品 『カワと7にんのむすこたち―クルドのおはなし―』

●ブラティスラヴァ世界絵本原画展

概要

ブラティスラヴァ世界絵本原画展は、実際に出版された絵本の原画を対象にした世界最大規模の絵本原画コンクールです。芸術性の高い作品や、実験的でユニークな作品が集まることでも知られています。 展覧会では、第24回からのグランプリをはじめとする受賞作品および、日本からの出品作品が紹介されます。

会期 2015年7月11日(土)~ 8月30日(日)
会場 うらわ美術館
問い合わせ先 TEL 048-827-3215(代表)
関連作品 『きこえる?』 『おうさまのおひっこし』 『馬の草子』

●長岡まちなかミュージアム2015 絵本作家 松岡達英の世界

概要

長岡を拠点に活躍する松岡達英さんの絵本や原画、作品等を 一堂に会し、これまでの活動・業績を市内外に広く発信します。 まち全体がミュージアムのような雰囲気につつまれます。

会期 6月27日(土)~7月20日(月・祝) 
会場

長岡市 大手通り周辺施設(各所)

問い合わせ先 NPO法人ながおか未来創造ネットワーク「長岡まちなかミュージアム2015」係
TEL 0258-39-2500
関連作品 『よるになると』ほか

●第46回講談社出版文化賞絵本賞受賞記念 石川えりこ 絵本「ボタ山であそんだころ」原画展
概要

『ボタ山であそんだころ』が講談社出版文化賞絵本賞受賞しました。それを記念して原画展がひらかれます。

会期 2015年6月23日(火)~7月5日(日)
会場

ギャラリーおいし

問い合わせ先 TEL 092-721-6013
関連作品 『ボタ山であそんだころ』

●プラネタリウム 夏のオリジナル番組「楽しい星座さがし ~絵本作家H.A.レイの世界~」
概要

ドイツ生まれの絵本作家ハンス・アウグスト・レイ氏が提案した、 オリジナルの星座のつなぎ方や、星座の見つけ方・探し方をプラネタリウムで紹介します。レイ氏の著作権承継者の全面協力を得てつくばエキスポセンターが制作したオリジナルのプラネタリウム番組です。

会期

2015年6月6日(土)~8月31日(月)

会場

つくばエキスポセンター

問い合わせ先 TEL 029-858-1100(代)
関連作品

『星座をみつけよう』


 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000