あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2015年9月2日 Vol.195
短い夏も終わり? 秋雨前線がやってきた

 いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 厳しい暑さはどこへやら、全国的に雨が多い天気がつづいています。涼しい日も多くなり、過ごしやすい気温になるのはありがたいですが、農産物など動植物に影響はないのか、少し心配ですね。

《1》新刊『まちぼうけの生態学』の作者、遠藤知二さん

 草むらで過ごす時間のこと  遠藤知二

まちぼうけの生態学

 私がアカオニグモの研究を川べりの草むらで始めて、少したったころ。草むらの近くにまわりよりも背の高いシラカバの木が2本生えていて、ちょうどよい木かげをつくっていました。私は思いついて、河原から大きめの石を選び、ごろごろと運んできました。木の根もとにそれを据えて、私のとっておきの休み場所にしようというわけです。
 調査地に着くと、まず腰かけてひと息。それから、できるだけ観察しやすそうなアカオニグモの網を見つけるためにあたりをひと回りして、また石に戻ってきてひと休み。ようやく、えらんだ網のまえに陣取って、網のまわりを飛ぶ虫たちの記録をとり始めます。10分単位で記録をとることにしていたので、10分でいったんやめて別の場所に移動することもあれば、そのまま続けて観察することもあります。合間には、もちろん休み場所の石のお世話になっていました。
 『まちぼうけの生態学—アカオニグモと草むらの虫たち』は、このときの野外研究をもとに、草むらのなかを飛んでいる虫たちがどのようにクモの網にかかるのかを描いたものです。このタイトルは、私の研究スタイルとも、なんだかしっくり合っているような気がして、とても気に入っています。空中に網をはって、いつかかるかわからない虫を気長に待つクモ。そのクモの網に虫がかかるのを待つ観察者。岡本よしろうさんのとても繊細な色使いでありながら、茶目っ気のある絵も、まちぼうけにぴったりな感じに仕上がりました。
 はじめは、もっと違った絵本になるはずでした。生きもの同士の出会いに気づくことのできる、とくべつなメガネがあったら……、たとえば生きものが出会った瞬間に出る青い光をキャッチできるメガネがあったら、世界はどんなふうに見えるのだろうというのが絵本の始まり。ある少年(もちろん少女でもいいのですが)が、ある日このメガネをかけて、河原に遊びに行ったところ、草むらの中で光が見える。近寄ってみると、そこにはアカオニグモの網に虫がかかっていた……。そんな話を書こうと思っていたのですが、残念ながらそれはボツになるべくしてボツになり、今の絵本ができあがりました。でも、出会いを軸に生きものの世界を見たいという気持ちは、そのままです。
 いまでは、こんなにのんびりと研究を進めることは望めそうにありません。必要なデータをできるだけ効率よくとることが優先されるのは、どこの世界でもおなじです。それでも、研究者の卵の時代に、のんびりフィールドのただ中で時間が過ごせたのは、とても貴重なことだったと思えます。座ってひと休みする石がなければ、私はこの研究をつづけることはできなかったにちがいありません。研究室で勉強していただけでは得られなかったにちがいない、生きものとその環境についての見方を身にしみこませることができました。草むらに通っている間、何本ものズボンのお尻がすり切れて穴があいたところをみると、いったいどれだけ石の上に座っていたのだろうと思いますが。

遠藤知二(えんどう ともじ)
1956年兵庫県豊岡市に生まれる。北海道大学農学部卒業。神戸女学院大学人間科学部教授。ハチやクモなど陸上節足動物を対象に、生物多様性を保全するための基礎としてそれらの生態、行動をあきらかにし、行動生態学、群集生態学、景観生態学などの手法を用いた研究を行っている。「たくさんのふしぎ」に本作の続編の『おいかけっこの生態学 キスジベッコウと草むらのオニグモたち』(2015年7月号)がある。共訳書に『延長された表現型—自然淘汰の単位としての遺伝子』(紀伊國屋書店)『盲目の時計職人—自然淘汰は偶然か?(上)(下)』(早川書房)などがある。

まちぼうけの生態学 『まちぼうけの生態学—アカオニグモと草むらの虫たち』
遠藤知二 文/岡本よしろう 絵
定価(本体1300円+税)
「網にいるクモは、1匹の虫をつかまえるのに、どのくらいの時間まつの?」 そんな素朴な疑問に答えてくれるのがこの本です。草むらで、虫たちの命の攻防をみつめます。
《2》月刊誌<10月号>のご案内


こどものとも0.1.2.『かあーかあー からすさん』 こどものとも0.1.2.
『かあーかあー からすさん』


増田純子 作
定価(本体389円+税)

からすが赤い実を見つけました。ぱくっと、ひとつ食べます。からすがもう一羽、やってきました。赤い実をひとつずつ、ぱくっと、食べます。
こどものとも年少版『もりはみている』

こどものとも年少版
『もりはみている』


おおたけ ひでひろ 文・写真
定価(本体389円+税)

静かな森の中、ヤマナラシの木の上から見ているのは子グマの兄弟だ。じっとこちらを見つめる野生動物のまなざしをとらえた写真絵本。

こどものとも年中向き『まじょのくに〈再版〉』 こどものとも年中向き
『まじょのくに』


油野誠一 作
定価(本体389円+税)

ヒロミちゃんは空から落ちてきた魔女のおばあさんを助けて、魔女の国に連れて行ってもらいます。色彩鮮やかなファンタジー。
こどものとも『さがしもの』 こどものとも
『さがしもの』


森 洋子 作
定価(本体389円+税)

あっちゃんは、ぬいぐるみのくまくんの片目を、庭でなくしてしまいました。その晩、ふと目覚めたあっちゃんの体は小さくなっていて……。
ちいさなかがくのとも『とんぼ とんぼ あかとんぼ』 ちいさなかがくのとも
『とんぼ とんぼ あかとんぼ』


澤口たまみ 文/サイトウ マサミツ 絵
定価(本体389円+税)

からだの赤いあかとんぼ。顔まで赤いあかとんぼ。秋の草原で、さまざまなあかとんぼに出会います。わたしのゆびにとまるかな?
かがくのとも『ふうせんであそぼう』 かがくのとも
『ふうせんであそぼう』


��橋 淳 文/フィリップ・ジョルダーノ絵
定価(本体389円+税)

ふくらませたり、穴をあけたり、みかんの汁をかけたりすると、ゴム風船はどうなるでしょう。遊びながら考えるゴム風船の絵本。
たくさんのふしぎ『食べられて生きる草の話』 たくさんのふしぎ
『食べられて生きる草の話』


高槻成紀 文/菊谷詩子 絵
定価(本体667円+税)

芝生がひろがり、シカが草をはむ宮城県の金華山。この島ののどかな景色に隠れている生きものたちのつながりをあきらかにします。
ははのとも10がつごう

母の友
特集1「"勉強"ってなんだろう?」
特集2「たくさんの『たくさんのふしぎ』」
定価(本体505円+税)

気になる"早期教育"。特集1では勉強について考えます。特集2では創刊30周年を迎える月刊誌「たくさんのふしぎ」の世界を。
こちらから目次をご覧いただけます。

《3》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月はこどものとも第二編集部です。

こどものとも第二編集部から

 こんにちは、こどものとも第二編集部です。
 私たちは、赤ちゃん向けの月刊誌「こどものとも0.1.2.」と2〜4歳向けの月刊誌「こどものとも年少版」を編集しています。小さな子どもたちのための絵本だからこそ、よいものを届けたい、ことばと絵がつくり出す魅力あふれる絵本の世界をたくさん味わってほしいと日々願って、絵本づくりに励んでいます。
 さて、10月号のご紹介をします。「こどものとも年少版」の『もりはみている』は、写真の絵本です。作者の大竹英洋さんは、十数年間、北米ノースウッズの森で四季折々の自然や野生動物を撮り続けている写真家です。北アメリカ大陸の北部に広がる湖水地方、ノースウッズは、冬の寒さが厳しく、マイナス30度は当たり前。一年の半分は雪と氷に閉ざされ、ときにはマイナス50度にもなる厳寒の土地です。そのような厳しい環境の中、森に緑があふれるつかの間の春から夏にかけて、動物たちは子どもを産み育て暮らしています。広大な土地ゆえに、野生動物に出会うのは非常に困難なこと。大竹さんは、常にあらゆる五感を研ぎ澄ませ、生き物の営みに寄り添いながら、一枚一枚の写真を撮ってこられました。ぜひ読者の皆さんにも、こちらをまっすぐに見つめる動物たちのまなざしに触れ、何かを感じ取っていただきたいです。
 「こどものとも0.1.2.」は、真っ黒なからすが登場する『かあーかあー からすさん』。赤い実をみつけて食べるからすさん。切り絵のはっきりとした形、黒と赤の色のコントラストが新鮮な絵本です。赤ちゃんがどんな反応をするか、楽しみです。

「こどものとも0.1.2.」についてもっと知りたい方はこちらへ
「こどものとも年少版」についてもっと知りたい方はこちらへ

《4》「あのねぶっくくらぶ」2015年度後期申し込み受付中!

 福音館書店が自信をもっておすすめする、選りすぐりの絵本と童話を毎月1冊 ずつ、お子さまの成長にあわせてみなさまのお手元に直接お送りする「あのねぶ っくくらぶ」は、2015年度後期半年分(2015年10月〜2016年3月)のお申し込み を、10月いっぱいまで受付中です!

  ★あのねぶっくくらぶのご案内

《5》原画展・イベントのお知らせ

● 滝平二郎の世界

概要

初期の木版画をはじめ、名作絵本の原画、新聞連載の「きりえ」に加え、貴重なデッサンや下絵など、過去最大規模の約230点によって滝平二郎の画業を振り返ります。滝平が横手市で制作した木版画≪秋田にて≫をはじめ、作家・斎藤隆介との名コンビにより生み出された絵本『八郎』や『三コ』の原画など、秋田ゆかりの作品も併せてお楽しみください。

会期 2015年9月19日(土)〜 11月23日(月・祝)
会場 秋田県立近代美術館
問い合わせ先 TEL:0182-33-8855(9:00〜17:00)
関連作品

『八郎』 『三コ』


●辻村益朗さん講演会「子どもの本に関わって半世紀」

概要 1964年から現在に至るまで、子どもの本の世界で幅広く本作りに関わってきた辻村益朗さん。本という媒体とその歴史、絵画表現の変遷、本をめぐる技術・技法から資材に至るまでに深く通じた辻村さんに、装丁という現場から見た子どもの本の世界を、ぞんぶんに語っていただきます。
※入場料はドリンク付きで1000円(当日払い)
※事前予約要(1階サービスコーナーもしくは電話でお申し込みください)
日時 2015年10月03日(土)19:30 〜
会場 ジュンク堂書店 池袋本店
問い合わせ先 TEL 03-5956-6111
関連作品 『本のれきし5000年』

●講演会 絵本作家アーディゾーニとマーガレット・ワイズ・ブラウンの世界

概要 今も子どもたちの心をつかんで離さないイギリスの絵本作家アーディゾーニと、アメリカの絵本作家であり語り手の名手といわれているマーガレット・ワイズ・ブラウンの世界を、吉田新一さんがひも解きます。

定員:60名(大人対象・無料)
※FAXまたはメールでお申し込みください。(申込〆切 9月10日)
日時 2015年9月13日(日)10:30〜15:30
会場 野洲市市民活動支援センター
問い合わせ先 子ども・本・文化を考える会 TEL&FAX 0748-37-5479
mail:fune_mimizuku@yahoo.co.jp
関連作品 『チムとゆうかんなせんちょうさん』

●かこさとし・ふるさと北陸スタンプラリー開催

概要

今年の夏から秋に、下記施設にて加古里子さん作品の複製画が展示されるのにともない、 スタンプラリーが行われます。 「だるまちゃん」「からすのパンやさん」「ロケットにのる子ども」の3つのスタンプを集めると、 「だるまちゃん」と「からすのパンやさん」がコラボした特製マグネットがもらえます。

●越前市かこさとしふるさと絵本館「石石」【常設展】
 7月17日〜8月31日  『かわ』
 9月3日〜11月15日  『からすのそばやさん』(偕成社)

●福井県ふるさと文学館 【宇宙のものがたり〜かこさとしとめぐる旅〜】
 前期 7月18日〜8月30日
 後期 9月5日〜10月12日
 『宇宙』、『からすのパンやさん』(偕成社)など

●射水市大島絵本館 【かこさとし展】
 7月25日〜9月29日
 『からすのおかしやさん』(偕成社)など

関連作品 だるまちゃんシリーズ

●化け物展

概要

人間によって創造され、信仰され、そしておそれられてきた"化け物"を多彩な造形表現をとおして紹介する展覧会です。福音館書店の作品からは、佐々木マキさんの『おばけがぞろぞろ』が出品されるほか、土橋とし子さんが作品を出品されます。

会期 2015年8月1日(土)〜 9月13日(日)
会場

青森県立美術館

問い合わせ先 TEL 017-783-3000
関連作品 『おばけがぞろぞろ』

●キュッパのびじゅつかん −みつめて、あつめて、しらべて、ならべて

概要

『キュッパのはくぶつかん』のお話を導入にしながら、物を収集する過程の、そのワクワクした気持ちが伝わってくるようなコレクションや、何かを観察し、収集し、並べることを含むアーティストの作品を紹介します。

会期 2015年7月18日(土)〜10月4日(日)
会場

東京都美術館

問い合わせ先 東京都美術館 キュッパ展担当 TEL:03-3823-6921
関連作品 『キュッパのはくぶつかん』

 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000