あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2015年9月16日 Vol.196
幸せな絵本の時間を…

 「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 今月はブックスタートの佐藤いづみさんによるエッセイの後編をお届けします。絵本からひろがるあたたかい輪について、ご紹介くださっています。

《1》月刊絵本「こどものとも0.1.2.」創刊20周年記念
      〜赤ちゃん絵本をめぐって〜 

いつでも立ち戻ることのできる「幸せのかたち」 佐藤いづみ(NPOブックスタート)

 「ブックスタートにはどんな効果があるのですか」
 これは活動が自治体の公的な事業として、主に税金を使って実施されることもあり、よく受ける質問です。
 その答えとしてNPOブックスタートは昨年、『「ブックスタートがもたらすもの」に関する研究レポート』を刊行しました。活動を行う地域や関係者にもたらすものとともに、“Share books”の時間が親子に何をもたらすのかについても検討しています。ブックスタートを受けた保護者からは次のようなエピソードが寄せられました。
 「『ぶーぶーぶー』を何度も何度も読んであげたり、暗記して外でも語りかけるようにしていたら、外で赤や青などの車を見つけると指をさすようになりました!! また、テレビのリモコンに同じ色がついているのに気が付くと、自分で本を持ってきて"同じ!!"という感じに一生懸命教えてくれました。」
 このエピソードからは、絵本の世界が生活の中に広がり、保護者が我が子の成長を丁寧に見つめている様子が伝わってきます。それ以外にも絵本の時間は、色々な遊びを生み出したり、気持ちを穏やかにしたりすること。さらに赤ちゃんの想像力や個性を発見したり、子育ての喜びをパートナーと分かち合う機会を作っていることも分かりました。一方、アンケート調査からは、ブックスタートが多くの家庭において、絵本の時間を持ち始める「具体的なきっかけ」になっていることが明らかになりました。
 これらのことから、ブックスタートは子育ての日常に、喜びや驚き、感動を生み出し、それぞれの家庭では絵本にまつわるエピソードが日々積み重ねられていることが推測されました。この赤ちゃん時代の「絵本のひととき」は、その先も長く続いていく家族の時間の中で、いつでも立ち戻ることのできる「幸せのかたち」として記憶されていくのではないでしょうか。私たちはこれがブックスタートの、ひとつの大きな"効果"だと考えています。


(佐藤いづみさんの2015年8月19日配信のメルマガのエッセイ(前編)はこちらから)

 


ブックスタートについて
0歳児健診等の機会に、「絵本」と「絵本を楽しむ体験」をプレゼントする活動。市区町村自治体の事業として、その地域に生まれたすべての赤ちゃんを対象に行われる。1992年に英国で発案され、日本では2000年「子ども読書年」を機に始まった。2015年7月末現在、全国の53%の自治体に広がり、これまでに約500万人の赤ちゃんが対象になっている(NPOブックスタート調べ)。
もっと詳しく知りたい方は
NPOブックスタートウェブサイト 
『赤ちゃんと絵本をひらいたら ブックスタートはじまりの10年』(NPOブックスタート編著 岩波書店 2010年2月発行)
佐藤 いづみ(さとう いづみ) 

2000年より日本へのブックスタートの紹介と推進団体であるNPOブックスタートの立ち上げ、全国への推進活動等に携わる。2006年にオーストラリアに移住。以降はNPOブックスタートの国際関連事業及び活動に関する書籍やレポートの執筆などを担当している。2012年IBBYロンドン大会では、英国ブックスタート20周年を祝うシンポジウムで日本での広がりを紹介した。

かっと
月刊絵本「こどものとも0.1.2.」
20×19センチ/22ページ
年間購読料5,040円(12ヵ月)/毎月定価420円(税込)

「こどものとも0.1.2.」は、赤ちゃんとお母さんお父さんとの豊かなふれあいの時間を作る絵本です。親子の心のつながりと喜びが生まれる12冊をお届けします。

《2》「絵本に出会える場所」絵本美術館のご紹介
   鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館(新潟県)
☆作家の創作の様子、作品の世界などをより深く楽しめる絵本美術館が全国にあります。
 今月は新潟県十日町の「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」に寄稿していただきました。

  新潟県十日町市の山間に、「鉢」という集落があります。すり鉢状の地形の中に家々が立ち並び、お鉢の底に当たるところに旧真田小学校があります。
 2005年、在校生3人を残し真田小学校は廃校となりました。それから4年後、十日町市と津南町で2000年から行われている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の廃校プロジェクトの一環として、この校舎は「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」として蘇りました。
 アーティストの田島征三は、個人美術館を創るという出発点から再考し「ここは小学校で有り続ける」という想いを持ち、校舎に遺された多くの子どもたちの思い出を作品にしました。「空間絵本」と名付けられたその表現は、校舎がまるごと絵本になり、集落の風景も感じながら物語を体感する新たな試みとなりました。
 「空間絵本」の物語「学校はカラッポにならない」は、最後の在校生であるユウキ・ユカ・ケンタの3人と、思い出をたべるオバケ「トペラトト」が登場します。学校に潜むオバケたちや畑の元気な野菜、カラッポになったはずの校舎には100年以上かけて集まった子どもたちの思い出であふれていました。この物語は絵本としても出版され、空間絵本を味わう要素として多くの人に読まれていますが、まずはこの絵本を読まずに空間絵本を体験してもらいたい、という作者・田島征三の想いがあります。
 この「空間絵本」の完成には、大変多くの方々の協力があります。地元鉢集落の方々は子どもからおばあちゃんまで、新潟県内や関東のみならず全国から何度も通って下さった方々、様々な分野のアーティスト、一人一人の手がそれぞれの想いを持って作品が創られています。
 豪雪地帯の小さな村で起きているユートピアを、是非体感して下さい。
 
鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館
新潟県十日町市真田甲2310−1
TEL&FAX 025-752-0066
開館時期:4月下旬〜11月30日(水・木休館、8月は無休)
入館料:大人700円 小中学生300円

《3》10月の新刊ごあんない 

《10月7日(水)販売開始》
『オニのサラリーマン』 『オニのサラリーマン』

富安陽子 文/大島妙子 絵
定価(本体1400円+税)

赤鬼のオニガワラ・ケン、地獄カンパニーの平社員。今日もびしっとスーツで決め、愛妻弁当を携え勇んで出勤です。閻魔大王の指示で血の池地獄の見張りにつきましたが……。
『クリスマスの森』 『クリスマスの森』
ルイーズ・ファティオ 文/ロジャー・デュボアザン 絵/土屋京子 訳
定価(本体1300円+税)

クリスマスプレゼントを届ける前に森のはずれで一休みしたサンタさんは、そのまま眠ってしまいます。それを見た森の動物たちは、手分けしてプレゼントを届けてあげます。

《10月14日(水)販売開始》
『レッド・フォックス—カナダの森のキツネ物語』 『レッド・フォックス—カナダの森のキツネ物語』
チャールズ・G・D・ロバーツ 作/チャールズ・リビングストン・ブル 画/桂 宥子 訳
定価(本体1400円+税)

カナダ東部の未開の荒野を舞台に、とくべつに優れた知力と体力をあわせもつ雄の赤ギツネ“レッド・フォックス”が、さまざまな危機を乗りこえたくましく生きる姿を描く。
『チャーちゃん』

『チャーちゃん』
保坂和志 作/小沢さかえ 画
定価(本体1400円+税)

「ぼく、チャーちゃん。はっきり言って、いま死んでます」現代文学の旗手、保坂和志が猫を語り手に紡ぐ言葉は、稲妻のような鮮烈さで、思いもかけない死の姿を照らし出します。

『オオサンショウウオみつけたよ』

『オオサンショウウオ みつけたよ』
にしかわ かんと 文/あおき あさみ 絵
定価(本体1400円+税)

秋に巣穴で卵から孵化した幼生は、春、川に出てきます。その1年の成長と、数年後の変態、成熟、そして繁殖とオスの子育てを、人間の成長と重ねあわせて描きます。


《10月21日(水)販売開始》
『ちいさなかいじゅうモッタ』

『ちいさな かいじゅう モッタ』
イヴォンヌ・ヤハテンベルフ 文・絵/野坂悦子 訳
定価(本体1600円+税)

モッタは7人兄弟の末っ子。お兄ちゃんたちみたいな強くてこわい怪獣になりたいのに、みんなはモッタのことを、「かわいいなあ」としかいいません。そこで…。

『オンネリとアンネリのおうち』

『オンネリとアンネリのおうち』
マリヤッタ・クレンニエミ 作/マイヤ・カルマ 絵/渡部 翠 訳
定価(本体1600円+税)

なかよしの女の子オンネリとアンネリは、夏休みのある日、ひょんなことから、二人だけのおうちに住むことになりました。フィンランド生まれの、楽しくて幸せな夏の物語。

《4》『岸辺のヤービ』の特設サイトができました! 

9月9日に発売された、梨木香歩さんによる長編ファンタジー『岸辺のヤービ』の特設サイトができました。特設サイトでは、舞台となるマッドガイド・ウォーターの世界と登場人物について紹介するほか、梨木さんが“ヤービ”の世界に通じる作品として選んだ児童文学11選もあわせてご紹介します。ぜひ遊びにきてくださいね。


『岸辺のヤービ』 『岸辺のヤービ』

梨木香歩 作/小沢さかえ 画
定価(本体1600円+税)

ある晴れた夏の日、わたしが、湖に浮かべたボートの上で出会ったのは、ふわふわの毛につつまれた、二本足で歩くハリネズミのようなふしぎな生きもの、「ヤービ」でした。

《5》編集部だより
☆絵本・童話第一・童話第二・科学書の編集部から毎月交代で読者の皆様にむけたメッセージをお届けします。今月は童話第二編集部です。

童話第二編集部から

 時々、絵本とマンガのどこに違いがあるのか悩みます。絵本って? マンガって? マンガも「絵」の本ですし、逆に絵本も『やっぱりおおかみ』『さむがりやのサンタ』のように、「コマ割り」があります。本当のところ、よくわかりません。現在は休刊中ですが、およそ23年前、小学生向きの月刊誌「おおきなポケット」が創刊されました。そのときの編集方針は、「絵本もマンガも分け隔てなく、とにかく小学生が心の底から楽しめる本物をだしていこう」でした。
 今月の新刊『リトルTの冒険』は、このような背景で誕生した「おおきなポケット」に連載されていた「絵本マンガ」です。作者は古川タク氏。「かがくのとも」「こどものとも年少版」「こどものとも0.1.2.」などの絵本の世界ではおなじみのタクさんですが、実はアニメーション制作が本業です。NHK「みんなのうた」の映像を目にされた人も多いのではないでしょうか。そういった意味で、この作品は数百の「絵」がフィルムのように巻き取られていく「絵本アニメ」といった方が近いかもしれません。(作品のコマも縦に流れていきます。)そして、かつて手塚治虫や杉浦茂が描いたような、素朴かつ奇想天外な空気も漂っています。
 主人公は、大隕石の衝突から地球を救うため、遥か彼方のビッグ星からやってきた男の子リトルT(ビッグ星第5小3年1組!)。この小さな豆つぶのような男の子が、ボウフラ(すぐに蚊に変身!)、アリ、クマンバチ、魚、人間……と、出会いと失敗を繰り返し、大きくたくましくなっていく様子は、まるで身近な子どもの成長とそっくりです。最後に大隕石を止めるため宇宙に飛び出すリトルTの姿は、地球という枠を越えた無限の世界を感じさせます。きっと、この本を読んだ子どもたちは、いろいろな思いで、夜空の星を見上げることでしょう。小学生になって読書を始めるきっかけにしてほしい作品です。

『リトルT』 『リトルTの冒険』

古川タク 作
定価(本体1400円+税)

地球に隕石がぶつかるぞ! リトルTという男の子が、宇宙の彼方ビッグ星から地球を救うためにやってきます。しかし、初めての地球は驚くことばかり…。がんばれリトルT!
福音館Facebookでもくわしくご紹介しています)

《6》原画展・イベントのお知らせ


●辻村益朗さん講演会「子どもの本に関わって半世紀」

概要 1964年から現在に至るまで、子どもの本の世界で幅広く本作りに関わってきた辻村益朗さん。本という媒体とその歴史、絵画表現の変遷、本をめぐる技術・技法から資材に至るまでに深く通じた辻村さんに、装丁という現場から見た子どもの本の世界を、ぞんぶんに語っていただきます。
※入場料はドリンク付きで1000円(当日払い)
※事前予約要(1階サービスコーナーもしくは電話でお申し込みください)
日時 2015年10月03日(土)19:30 〜
会場 ジュンク堂書店 池袋本店
問い合わせ先 TEL 03-5956-6111
関連作品 『本のれきし5000年』

●絵と ことばと 本のこと �`島伸彦さんトークショー
 
概要

三回に渡って、自身の創作の経験を踏まえつつ、絵画や言語、書籍について感じていること、考えていることを�`島伸彦さんが自由に話す予定です。

日時 第一回目 9月20日(日)  —絵について—絵の不思議さ おもしろさについて
第二回目 10月18日(日) —ことばについて—ことばのおもしろさ とりわけことばで遊ぶおもしろさについて
第三回目 11月15日(日) —本について—絵もことばも自由に盛り込める器 本のおもしろさについて
時間:各回 14:00-16:00
参加費:各回 3,000円
会場 ここち Comfort Gallery 器 (広島県福山市田尻町1974-1)
問い合わせ先 TEL 084-956-0117
関連作品 『きこえる?』

● 滝平二郎の世界

概要

初期の木版画をはじめ、名作絵本の原画、新聞連載の「きりえ」に加え、貴重なデッサンや下絵など、過去最大規模の約230点によって滝平二郎の画業を振り返ります。滝平が横手市で制作した木版画≪秋田にて≫をはじめ、作家・斎藤隆介との名コンビにより生み出された絵本『八郎』や『三コ』の原画など、秋田ゆかりの作品も併せてお楽しみください。

会期 2015年9月19日(土)〜 11月23日(月・祝)
会場 秋田県立近代美術館
問い合わせ先 TEL:0182-33-8855(9:00〜17:00)
関連作品

『八郎』 『三コ』


●キュッパのびじゅつかん −みつめて、あつめて、しらべて、ならべて

概要

『キュッパのはくぶつかん』のお話を導入にしながら、物を収集する過程の、そのワクワクした気持ちが伝わってくるようなコレクションや、何かを観察し、収集し、並べることを含むアーティストの作品を紹介します。

会期 2015年7月18日(土)〜10月4日(日)
会場

東京都美術館

問い合わせ先 東京都美術館 キュッパ展担当 TEL:03-3823-6921
関連作品 『キュッパのはくぶつかん』
 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000