あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2015年11月4日 Vol.199
名作の裏側にせまる!

 いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 小学生のころ、『エルマーのぼうけん』をお読みになった方も多いのではないでしょうか。今月は、その作者ガネットさんの生いたちと、作品ができるまでをつづった本をご紹介します。

《1》『「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット 』
    著者・前沢明枝さんのエッセイ

 インタビューの裏側    前沢明枝

「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット
 
 インタビューの仕事をするなんて、思ってもいませんでした。それも、子どものころ大好きだった物語『エルマーのぼうけん』の作者、ルース・S・ガネットさんに。
 ことの起こりは、2010年秋、ガネットさんが来日した際、1日だけ通訳として同行したことでした。初めてお会いする87歳のガネットさんは、生き生きとして可憐で、どこか少女のようです。彼女は、65年まえに作った『エルマーのぼうけん』の鉛筆書きのダミーや、80年まえ、小学生のときに物語を書いたノートなどを見せてくれました。思いもよらぬ貴重な品々の出現に、わたしはすっかり舞い上がってしまいました。同時に、エルマーを読んだ人たちと、この感動と驚きを分かち合えたらと思いました。
 そこで、ガネットさんに手紙を書きました。「インタビューをさせていただき、できればいつか、本にまとめたい」と。インタビューなんて、したこともないのに。
 2011年春、ガネットさんのご自宅に10日間泊めていただいて、インタビューを行いました。限られた時間で、世界中で愛読される物語を22歳で書き上げたガネットさんが、子どもだったころのことや、エルマー・シリーズ完成までの道のり、今のガネットさんのことなど、聞きたいことは山ほどで、頭のなかはパニックです。
 朝からきっちりインタビュー……と意気込んだものの、ガネットさんは忙しいのです。朝食をすませると、「これから、エアロビクスなの。いっしょにどう?」。びっくりしつつもお供をすると、最年少でも70歳は超えているであろうみなさんが集まって、元気に体を動かしています。別の日には、「今夜は環境破壊を引き起こすフラッキングを止めるための会合なの。あなたも行く?」。毎日、こんな具合です。
 大きなダイニングテーブルの上には、ガネットさんが古いアルバムやノートを山のように出してくれているので、それにも目を通さなくてはなりません。
 ふだんの生活のなかでのインタビューですから、とちゅうでオーブンに入れたパンの焼け具合をみなくてはならないし、お友達も訪ねてきます。7人の娘さんたちからは、次々とインタビューの進捗状況をたずねる電話がかかってきて、ガネットさんはそのたびに、わたしに話していた昔のことを、娘さんたちにも話します。「今聞かれたのはね、わたしが小学生のころ、どんなおかしを食べていたかって。あのころは……」。聞き耳を立てていると、わたしに話してくれたよりも詳しく話しているんじゃないかと思ったり。エルマーの物語に出てくる歌のことをたずねれば、フルコーラスを歌ってくれて。
 あわただしいインタビューでしたが、その間、わたしの心の中では、やさしさと正義感あふれるエルマーのような、子ども時代のガネットさんの姿が見え隠れしていました。古いもの新しいもの、つらかったこと楽しかったこと、どれも大切にして生きるガネットさんの人生とエルマー誕生の秘密が書かれた本になりました。

前沢 明枝 (まえざわ あきえ)
翻訳家、日本国際児童図書評議会理事。 アメリカのウェスタンミシガン大学で英米文学、ミシガン大学大学院で言語学を学ぶ。帰国後は海外の絵本や児童文学の紹介・翻訳に力を入れる。訳書に『みっつのねがい』『いつもみていた』『ピンクだいすき!』(以上、福音館書店)、『家出の日』(産経児童出版文化賞推薦)(徳間書店)、『アメリカ児童文学の歴史―300年の出版文化史』(監訳)(原書房)ほか多数。家にはエルマーという名の猫がいる。東京都在住。

『「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット』 『「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット』
前沢明枝 著
定価(本体2000円+税)
1945年、一人の若い女性が物語を書き始めます。それが『エルマーのぼうけん』でした。そのお話は、どうして生まれたのでしょう? 作家へのインタビューが始まります!
『「エルマーのぼうけん」をかいた女性 ルース・S・ガネット』 『エルマーのぼうけんセット』
ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳
定価(本体3600円+税)
エルマー少年とりゅうの子の冒険物語3部作。ユーモアたっぷりのお話は、読むものの心を空想の世界に羽ばたかせながら、物語のリアリティーに引き込みます。幼年童話の最高峰として読みつがれているロングセラー。
《2》月刊誌<12月号>のご案内


こどものとも0.1.2.『おいっちに おいっちに』 こどものとも0.1.2.
『おいっちに おいっちに』


柚木沙弥郎 作
定価(本体389円+税)

男の子がお父さんの足の上にのって「おいっちに おいっちに」と歩きます。親子で遊ぶ楽しさを、素朴に、大らかに描いた絵本です。
こどものとも年少版『てぶくろくん』

こどものとも年少版
『りすと もりのあしおと』


八百板洋子 文/ナターリヤ・チャルーシナ 絵
定価(本体389円+税)

りすがどんぐりを食べようとすると、さっぷさっぷさっぷと何者かの足音が……。美しい雪景色の、冬の森が舞台のお話です。

こどものとも年中向き『はりがね なんになる?』 こどものとも年中向き
『はりがね なんになる?』


たむら しげる 作
定価(本体389円+税)

一本の針金を、切って、曲げて、くっつけると、動物の姿に早変わり。生き物を最小限の曲線で表現した、美しい写真絵本です。
こどものとも『トッケビと どんぐりムク』 こどものとも
『トッケビと どんぐりムク—朝鮮半島の昔話』


イ・サンギョ 再話/おおたけ きよみ 訳/ナ・ヒョンジョン 絵
定価(本体389円+税)

若者がどんぐりムクを売りにいった市場からの帰り道、突然、おばけのトッケビが現れ、大事などんぐりムクを食べてしまいました。
ちいさなかがくのとも『ももんがの ふゆの おうち』 ちいさなかがくのとも
『ももんがの ふゆの おうち』


あかし のぶこ 作
定価(本体389円+税)

北の森にすむももんがの冬のおうちは木の穴。コケやヤマブドウのつるで、ふかふかのあったかいおふとんを作ります。
かがくのとも『ねじ』 かがくのとも
『ねじ』


角 愼作 作
定価(本体389円+税)

腕時計や携帯、自動車や飛行機、大きな橋まで。私たちの身のまわりは、ねじ無しでは作れないものばかりです。ネジの秘密に迫る!
たくさんのふしぎ『南極の生きものたち』 たくさんのふしぎ
『南極の生きものたち』


水口博也 文・写真
定価(本体667円+税)

ペンギンやアザラシなど多くの生きものたちがくらしている南極の海。その秘密は、海に浮かぶ氷のうらがわにかくされていました。
ははのとも12がつごう

母の友
特集「これからの平和のために、わたしたちにできること」
定価(本体505円+税)

特集「これからの平和のために、わたしたちにできること」。絵本作家、中川李枝子さん、加古里子さん、林明子さんらと共に考えます。
こちらから目次をご覧いただけます。

《3》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月はちいさなかがくのとも編集部です。

ちいさなかがくのとも編集部から

 11月になりました。北の森では紅葉が終わり、葉を落としている頃でしょうか。森の動物たちは、冬ごもりの準備をしたり、冬のあいだ食べるごちそうを集めたりと、冬支度で忙しくしているでしょう。「ちいさなかがくのとも」12月号は『ももんがの ふゆの おうち』。冬をすごすあたたかい巣を探すモモンガのお話です。
 昨年のこの季節、作者のあかしのぶこさんといっしょに北海道知床の森を歩きました。落葉後の森は明るく、空が抜けて見えます。モモンガは木にあいた穴を利用して巣にします。そんな穴をさがして、そっと見て回りました。モモンガは夜行性の動物なので、「このなかで寝てるかな?」と思いながら。
 森には穴のあいている木が意外とたくさんありました。この森は大丈夫なのかしらと心配になるくらい。でも目を足元にやると、10センチくらいの幼木があちこちから出ていて、出番をまっていました。
 たくさんの穴をのぞきましたが、この日はとうとうモモンガの巣を見つけられませんでした。そこかしこにモモンガが食べ残したトドマツの葉っぱが落ちていたので、この森にモモンガがいるのはまちがいないのですが。どこにいるのでしょう。ふと視線を感じて振り返ると、エゾシカが立ち尽くしてじーっとこっちを見ていました。
「ちいさなかがくのとも」は幼い子どもたちにみぢかなふしぎをたのしんでもらいたいと願って作っていますが、今回はちょっと遠い世界のお話です。絵本をよんでもらった子どもたちに「いつか会ってみたいもの、いつか行ってみたい場所」ができたらよいなと思いながら、この絵本を作りました。その願いがかなうよう、森と森でくらす動物たちをまもっていきたいと思います。

「ちいさなかがくのとも」についてもっと知りたい方はこちらへ

《4》原画展・イベントのお知らせ

● 縫い その造形の魅力

概要

さいたま市が所蔵する愛らしい裁縫雛形を端緒として、リズミカルな刺し子や模様刺し、表と裏で表情を変える粋な羽織、物語性あふれる刺繍など、繊細でありながら大胆な縫いの造形を展示します。さらに、現代のアーティストによる多彩な表現を紹介します。

会期 2015年11月14日(土)~2016年1月17日(日)
会場 うらわ美術館
問い合わせ先 TEL 048-827-3215(代表)
関連作品

『セミ神さまのお告げ—アイヌの昔話より』


● 滝平二郎の世界

概要

初期の木版画をはじめ、名作絵本の原画、新聞連載の「きりえ」に加え、貴重なデッサンや下絵など、過去最大規模の約230点によって滝平二郎の画業を振り返ります。滝平が横手市で制作した木版画≪秋田にて≫をはじめ、作家・斎藤隆介との名コンビにより生み出された絵本『八郎』や『三コ』の原画など、秋田ゆかりの作品も併せてお楽しみください。

会期 2015年9月19日(土)~ 11月23日(月・祝)
会場 秋田県立近代美術館
問い合わせ先 TEL:0182-33-8855(9:00~17:00)
関連作品

『八郎』 『三コ』


● 五味太郎さんトークイベント

概要

ブックスタマが主催する「絵本作家 五味太郎フェスティバル」にて、五味太郎さんのトークイベントが行われます。11月上旬より、ブックスタマ全店にて、五味太郎さんおすすめの絵本を一挙紹介する“五味太郎スペシャルフェア”も開催します。くわしくはこちらをご覧ください。

日時 2015年11月21日(土) 開場 18時30分~ 開演19時~
会場 東村山市市民ステーション サンパルネ 2Fコンベンションホール
問い合わせ先 TEL:090-4433-5388(担当:土屋)
関連作品

『みんなうんち』ほか


●講演会「赤ちゃんの時から絵本を」

概要

月刊絵本「こどものとも0.1.2.」創刊20周年として、「こどものとも0.1.2.」の初代編集長で、多くの赤ちゃん絵本を編集した田中秀治の講演が行われます。くわしくはこちらをご覧ください。

日時 2015年11月26日(木) 午前10時から11時45分まで
会場 調布市文化会館たづくり
問い合わせ先 TEL:042-441-6181
関連作品

「こどものとも0.1.2.」


●飯野和好+はたこうしろう+村上康成 鼎談|絵本学会フォーラム

概要

3人それぞれの自然をステージとした絵本の中で、人間や社会をも表現している作品を取り上げながら、作り手が送り出す意識とは、また、制作におけるこだわりやエピソードなどを語らっていただきます。参加者がさらに絵本表現の新たな発見や造詣を深める機会となる企画の登場です!くわしくはこちらをご覧ください。

日時 2015年11月29日(日) 14時から16時
会場 東京工芸大学 中野キャンパス
問い合わせ先 東京都中野区本町2-9-5 東京工芸大学アニメーション学科 
絵本学会事務局(陶山恵研究室内)
e-mail: office@ehongakkai.com
絵本学会ホームページ

●村田朋泰さんの人形教室 申し込み受付中です

概要

『とん ころころころ』(こどものとも年少版419号)の作家、村田朋泰さんが主催する人形制作教室が冬期受講生を募集中です。くわしくはこちらをご覧ください。
関連リンク:村田朋泰さんのホームページ

関連作品 『とん ころころころ』(こどものとも年少版 2012年2月号)
 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000