あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2016年2月3日 Vol.205
鬼は外、福は内!

 いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
 今日は節分です。子どもたちは豆まきを楽しんだでしょうか。今月のエッセイは、西加奈子さんの直木賞受賞後第一作となる長編小説『まく子』についてお届けします。

《1》   『まく子』 西 加奈子さんのエッセイ

 「大人」になっても    西 加奈子

 はじめから、子供のことを書きたかった。
 福音館で書く、ということはもちろんものすごく大きかったけれど、兄や友人たちに次々子供ができ、育ち、という状態をここ最近ずっと見ていたことも影響していた。
 「子供って、ちょっと見ない間にすぐ大きくなるよなぁ。」まく子
 幼い頃どこかで会った「大人たち」がそう言っていたけれど、私にとっては「うるせー」という感じ、いつ会っても「大きくなったねぇ」「私も年を取るはずだわ」的なことばかり言われて、何も面白くなかった。もちろん数十年後、自分が同じことを言う「大人」になり果てるなんて、そのときは思いもしなかった。でも本当に「子供って、ちょっと見ない間にすぐ大きく」なるのだ!
 すぐ大きくなるその体に、精神に、私はどう折り合いをつけていたのだろう。
 ふと考え始めると、たちまち苦しくなった。だって全然折り合いなんてつけられていなかったことを、すぐに思い出したから。「大きくなる」体も、「広くなる」視野も、私はこわかった。ずっとこわかった。まく子でもその「こわさ」に蓋をして、「こわさ」なんてなかったふりをして、涼しい顔でいつの間にかここまで来ました、みたいな態度でいる。私は、私が蓋をしてきたことを書きたかった。それが私の仕事だ、そう思った。
 慧くん、という主人公はすぐに現れてくれた。女の子ではなかった。男の子のからだの変化を、それを恐れる気持ちを書きたかった。女の子の方がいつだって「大人びて」いて、男の子はきっとそれが怖かっただろうし、少し寂しかっただろうと思うのだ(女の子がこわがっていることを、彼らはきっと知ることもなかっただろう。そういうことはいつだって、後から知るのだ)。
 どうして君たちの体が「大きく」なるのか、「大人」にならないといけないのか、慧くんに向けて書こうと思った。でも書いてゆくうち、私は、これを慧くんのような「子どもたち」に向けて書いていない、ということに気づいた。
 相手は結局自分だった。私は未だにこわがっているのだった。
 「大人」と呼ばれる範疇にいながら、私は全然「大人」であることに折り合いをつけられていない。初対面の人になめらかに自己紹介をし、久しぶりに会った人に天気の話をし、水道やガス料金をきちんと払い、あまつさえ車を運転していても、それでも私は自分の体が変わってゆくことが、そしてその先がこわいのだ。
 私って、なんで生きてるの?
まく子  それに気づいてからは、大幅な改稿をした。無理して「道理の分かった大人」ぶるのではなく、慧くんと一緒にこわがろう、と思った。正直であろう、と。慧くんはずっと一緒にいてくれた(ありがとう、慧くん!)。
 だからこの作品は恥ずかしいくらい正直な、剥き出しの作品になった。情けないけれど、「分かってほしい」という気持ちはない。作家としてだめだなあ。でも、私は私に、もっともっと正直になることが出来た。

西 加奈子 (にし かなこ)
1977年テヘラン生まれ。2004年『あおい』でデビュー。2007年『通天閣』(筑摩書房)で第24回織田作之助賞、2013年『ふくわらい』(朝日新聞出版社)で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木賞受賞。

『まく子』 『まく子』
西 加奈子 作
定価(本体1500円+税)

小さな温泉街にやってきた一人の少女。彼女には、秘密があった。信じること、与えること、受け入れること、変わっていくこと……。これは、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

《2》月刊誌<3月号>のご案内


こどものとも0.1.2.『みっこちゃん』 こどものとも0.1.2.
『みっこちゃん』


にしむら あつこ 作
定価(本体389円+税)

「みっこちゃん ごはん ごはん」「みっこちゃん さんぽ さんぽ」。子どもの一日を明るくポップな絵で描きます。
こどものとも年少版『こたろうのさかなつり』

こどものとも年少版
『こたろうのさかなつり』


ねぎし たかこ 文/竹中 奨 絵
定価(本体389円+税)

猫のこたろうが魚つりにでかけます。こたろうはぶじに魚をつりあげられるでしょうか? 起承転結の明快な楽しいお話です。

こどものとも年中向き『ポッキーとトム』 こどものとも年中向き
『ポッキーとトム』


かのめ たかし 作・絵
定価(本体389円+税)

少年トムは、子馬がかわいくてたまりません。連れて帰ろうと試みますが……。子どもと動物の関わりをのびやかな線で描きます。
こどものとも『はるちゃんもうすぐいちねんせい』 こどものとも
『はるちゃん もうすぐ いちねんせい』


秋山とも子 作
定価(本体389円+税)

はるちゃんはデパートにランドセルを買いにきました。賑やかなデパートを舞台に、小学校入学を前にしたワクワク感を描きます。
ちいさなかがくのとも『ぴったりこん』 ちいさなかがくのとも
『ぴったりこん』


小野寺悦子 文/池谷陽子 絵
定価(本体389円+税)

腕で大きな輪っかを作るよ。指先ついたら、それが僕のぴったりこん。ぴったりこんの物を探し、男の子は色々な物に抱きつきます。
かがくのとも『1まいのかみのどうぶつたち』 かがくのとも
『エスカレーターとエレベーター』


小輪瀬護安 作
定価(本体389円+税)

エスカレーターは床下から現れて段になり、また床下へ消えていきます。一体どうなっているのでしょう。昇降機の秘密に迫ります。
たくさんのふしぎ『へんてこ絵日記』 たくさんのふしぎ
『家をせおって歩く』


村上 慧 作
定価(本体667円+税)

自分で作った発泡スチロールの小さな家。せおって歩いて、日本各地へ。家を置く土地を借りながら生活した1年の記録。
ははのとも3がつごう

母の友
特集1「災害にそなえる」
特集2「季節と絵本」
定価(本体505円+税)

特集1は「災害にそなえる」。猪熊弘子さんと共に防災について考えます。特集2は「季節と絵本」。季節に応じた絵本を楽しむヒントを。
こちらから目次をご覧いただけます。

《3》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者のみなさまにむけてメッセージをお届けします。

たくさんのふしぎ編集部から

 こんにちは、「たくさんのふしぎ」編集部です。
 20代から30代にかけて、ときどき野宿旅をしておりました。交通手段はオートバイ→自転車→徒歩と、だんだん遅くなっていったのですが、そこで痛感したのが、日本の道路は大型車優先に作られているということ。都市部を除いては安心して歩ける歩道が少なく、トラックに抜かされるときなど、ずいぶん怖い思いをしたものです。
 宿泊はテントを持っていきました(後にそれも面倒になって、晴れた日には外でそのまま寝袋に入るようになり、蚊に悩まされました)。朝、テントをしまっていると子どもたちが寄ってきて、「何してるの?」と問われます。「家を片づけているんだよ」と答えると、「へえー!」と楽しそうに納得してくれたものでした。
 さて、3月号は『家をせおって歩く』です。作者の村上慧(むらかみ さとし)さんは、発泡スチロールをつかって全長120センチの家を作り、それをせおって旅をしています。トイレやお風呂は町にあるものをつかい、「町全体を家の間取りと考える」という発想の自由さで、小さな家がとても大きく見えてきます。
 あるときは、小学2年生の男の子が自分でつくった家をせおって会いにきてくれたとのこと。子どもにとって、自分の家をもつということは大きなあこがれのひとつでしょう。その夢をとてもシンプルな形で実現している村上さん。家をせおっての旅は、現在も続いているそうです。
「たくさんのふしぎ」についてもっと知りたい方はこちらへ

《4》こどものとも60周年記念フェスタ申し込み受付中!(2月15日まで)


 月刊絵本「こどものとも」が、創刊から60周年を迎えます。これを記念し、赤ちゃんから大人までみんながいっしょに「こどものとも」の世界を楽しめる「あそぼう つくろう 絵本のせかい—こどものとも60周年記念フェスタ」を2016年3月より開催します。
 創刊号から最新号までの「こどものとも」を手にとって読むことのできる読書スペースを設けるほか、絵本作家による講演会や親子向けワークショップなど、もりだくさんの内容です。
 詳しい日程・内容は、こちらの特設ページをご覧ください。一部イベントは申し込み(抽選制)が必要です。申し込みは現在受付中、2月15日(月)締切です。たくさんのご応募をおまちしております!

《5》原画展・イベントのお知らせ

●「家も歩けばナニカにアタル」『家をせおって歩く』刊行記念

概要

自作の発泡スチロールの家を背負って移動し、全国各地で寝泊まりしながら暮らしてきた村上慧さんの生活を、くわしく紹介した『家をせおって歩く』(「たくさんのふしぎ」2016年3月号)。著者の村上慧さんと、ブックデザインを担当された、村上さんとは旧知の仲であるという飯田将平さん、そして、担当編集者が、この本ができるまでのこと、村上さんの「家をせおって歩く」生活などを裏話満載でお話しします。

日時 2016年2月12日(金)20:00~22:00 (19:30開場)
会場 本屋B&B (世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F)
問い合わせ先 TEL 03-6450-8272
関連作品 『家をせおって歩く』(「たくさんのふしぎ」2016年3月号)

●中脇初枝さんトークイベント「ふるさとの昔話を語る」

概要

絵本・児童文学から、小説まで、幅広い創作活動で多くの読者に支持されている中脇初枝さん。その原点は、子ども時代を過ごしたふるさと、高知・四万十川流域に伝わる昔話のゆたかな世界だといいます。
1月に刊行した『ちゃあちゃんのむかしばなし』では、慣れ親しんだそれらの昔話を、全国どの地域に暮らす子どもたちにも楽しんでほしいとの願いを込めて再話しました。なぜ昔話を語るのか? 中脇さんの小説の世界に通じる昔話の魅力とは? などなど、作家・中脇初枝の"根っこ"に触れることのできる貴重な機会です。

日時 2016年2月18日(木)19:30~
会場 ジュンク堂 池袋本店
問い合わせ先 TEL 03-5956-6111
関連作品 『ちゃあちゃんのむかしばなし』

●大島妙子絵本原画展「鬼だらけ!」

概要

会期中、『オニのサラリーマン』の原画全点が展示されます。
“2015年は、『鬼』の絵本の仕事が2冊続いたのであります。片や陰陽師の世界、片や地獄勤めのサラリーマン。〈鬼・妖怪もの〉は、子どものころから好きではありましたので、オイデオイデと呼ばれちゃったんですかねぇ……。愛すべき鬼たちの世界へ、いらっしゃ~~い!”

会期 2016年2月19日(金)~2月24日(水)
会場 OPAギャラリー
問い合わせ先 TEL 03-5785-2646
関連作品 『オニのサラリーマン』

●「ことばってたのしいな―木島始の詩と絵本」 展

概要

詩人・木島始(1928~2004年)の詩と絵本の世界を紹介する展覧会です。本展では、今年度練馬区に寄贈された木島始関係資料から、大人も子供も楽しめる詩と絵本の世界を取り上げます。詩人ならではの視点で輝く言葉の数々。絵本になったときの楽しさと面白さ。美術も愛した木島自身が描いた絵や原稿を含め、堅苦しい「展覧会」ではなく、「ことばってたのしいな」と遊んでいただきたい展覧会です。

会期 2016年1月9日(土)~3月27日(日)
会場 練馬区立石神井公園ふるさと文化館分室 展示室
問い合わせ先 TEL 03-5372-2572
関連作品 『はなをくんくん』 『木』ほか

●第22回たかさき絵本フェスティバル「山本忠敬と現代ののりもの絵本たち」
概要

生誕100周年を記念し、乗り物絵本の第一人者、山本忠敬さんの仕事を、豊富な原画、資料、スケッチなどを通してお伝えします。そのほか、『がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん』 『あかくん でんしゃとはしる』 『はしれ、きかんしゃちからあし』など人気ののりもの絵本の原画が出品されます。

会期 2016年1月30日(土)~2月9日(火)
会場 高崎シティギャラリー[第1展示室・予備室]
問い合わせ先 NPO法人 時をつむぐ会  TEL 090-5537-4006
関連作品 『しょうぼうじどうしゃ じぷた』 『のろまなローラー』ほか

● 「世界のブックデザイン2014-15」

概要

2015年3月に開催された「世界で最も美しい本コンクール2015」の受賞図書13点をはじめ、日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国と今回初めて紹介するデンマーク、計8カ国のコンクール入選図書、およそ200点を展示します。福音館書店からは『ふしぎなにじ—かがみのえほん』が出品されます。

会期 2015年12月5日(土)~ 2016年2月28日(日)
会場 印刷博物館(東京都文京区)
問い合わせ先 TEL:03-5840-2300
関連作品

『ふしぎなにじ—かがみのえほん』

 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000