あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2016年9月28日 Vol.214
ようやく涼しくなって、いよいよ読書の秋
いつも「あのねメール通信」をご愛読いただき、ありがとうございます。秋の長雨もようやく終わり、いよいよ読書の秋の到来です。今月は、装い新たに刊行した高楼方子さんの童話3作品や毎年恒例の『ぐりとぐらカレンダー』などをご紹介します。
《1》高楼方子さんのエッセイ

『ココの詩(うた)』を書いていた頃

ココの詩

 窓を押し開いてベランダに出ると、眼下にアルノー川、右にヴェッキオ橋、左にサンタ・トリニタ橋、そして川向こうには、蜂蜜色の建物と赤茶色の屋根屋根、鐘楼の尖端までもが望めるのだった。歴史が降り積もる、溜め息の出るような美しい眺めだった。
  でも私に、ほっと息をつかせてくれたのは、川べりを走るネズミたちの姿だった。栄光のルネサンス? 何だそりゃ、とばかりに元気にちょろつくネズミのほうに心を寄せずにいられなかったのは、私が、満を持してフィレンツェへ留学!というような熱き学徒としてではなく、その「オマケ」として居合わせただけの身だったからだ。勉強に余念のない同居人たちに半ば呆れつつ、私は、初学者向けの語学学校に通ったり、美術館に行ったり、教会を見たりしながら、何となく時間をつぶしていたのだった。
  ところがそうこうするうちに、だんだんフィレンツェの町に魅せられ、絵画や彫刻に魅せられ、私だって私なりに、この町と密かに強く繋がっていたいんだ、という思いが(新参者に過ぎないことのためらいを抱きながらも)如何ともしがたく嵩じてきたのだった。
  そこで、物知らずの人形とネズミたちが、人目を避けつつフィレンツェを跋扈するといった体の物語を書いてみようと思いたったのだ。同居人たちよろしく、机にかじりつく「用事」が自分にもできたのが嬉しくもあり、日の目を見る当てなど一つもないまま、とにかく書き続けた。あの20代最後の日々の熱意と心細さを思い出すと、自分でもちょっといじらしくなってしまう。
  1987年に運よく出版された『ココの詩』が、その後も細々とながら版を重ねてきたことを思うたび、机に向かっていた私の肩を叩いて、「それ読んでもらえるよ、いろんな人に!」と、声をかけたくなったものだが、何と今度はその新装版が出るなんて! あの時の私に教えてあげたくてたまらない。
  さて、『ココの詩』のほか『時計坂の家』『十一月の扉』も同時に刊行されるのだが、3作に通底する思いを一言でいうなら、「憧れ」ということになるのだと思う。―白状すれば、それは我が胸の内に常に渦巻いている思いで、しかも何に対してなのかが今なおわからないために、幸福でありながら厄介でもある現実を生き続けているわけなのです。

高楼方子(たかどの・ほうこ)

北海道函館市生まれ。絵本、童話、児童文学など、子どもの本の世界で幅広く活躍している。作品に『まあちゃんのながいかみ』『まあちゃんのまほう』『みどりいろのたね』(以上、福音館書店)「つんつくせんせい」シリーズ、『おともださにナリマ小』(ともにフレーベル館)「へんてこもりのはなし」シリーズ(偕成社)など。長編の物語に『みどりいろのたね』『ねこが見た話』『おーばあちゃんはきらきら』『緑の模様画』(以上、福音館書店)などがある。札幌市在住。

『ココの詩』

『ココの詩(うた)』
福音館創作童話シリーズ
高楼方子 作/千葉史子 絵
定価(本体2200円+税)
小学校高学年から
金色の鍵を手に入れ、初めてフィレンツェの街にでた人形のココ。無垢なココを待ち受けていたのは、名画の贋作事件をめぐるネコ一味との攻防、そして焦がれるような恋でした。 

『時計坂の家』

『時計坂の家』
福音館創作童話シリーズ
高楼方子 作/千葉史子 絵
定価(本体1900円+税)
小学校高学年から
12歳の夏休み、フー子は憧れのいとこマリカに誘われ、祖父の住む「時計坂の家」を訪れた。しかしその場所でフー子を待っていたのは、思いもかけないことだった…… 

『十一月の扉』

『十一月の扉』
福音館創作童話シリーズ
高楼方子 作
定価(本体1800円+税)
小学校高学年から
偶然見つけた素敵な洋館で、2ヵ月間下宿生活を送ることになった爽子。個性的な大人たちとのふれあい、そして淡い恋からうまれたもうひとつの物語とで織りなされる、優しくあたたかい日々。

《2》『ココの詩(うた)』『時計坂の家』『十一月の扉』刊行記念特典
その1 各作品には刊行当時からこの童話のファンだった漫画家や編集者のエッセイが掲載された3作共通のミニリーフレットがついています。
その2 作品の感想をおよせくださった皆さま全員に、作品オリジナルポストカード(3枚組)をプレゼントいたします。

    
感想の宛先はこちら 
〒113-8686 東京都文京区本駒込6-6-3
福音館書店 童話第一編集部宛
電話 03-3842-2780 FAX 03-3942-9615
《3》今年もあります!!『ぐりとぐらカレンダー2017』
毎年、楽しみにしていただいている方も多い『ぐりとぐらカレンダー2017』の発売がスタートしました。来年のことを考えるのはまだちょっぴり早い気もしますが、数に限りがあるカレンダーですのでぜひお早めにお買い求めください。全国の書店でも取り扱いがございます。店頭に在庫がない場合は、お取り寄せも可能です。
《4》月刊誌編集部からこんにちは
 毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月は「こどものとも第二」編集部です。

「こどものとも第二」編集部から

 こんにちは。こどものとも第二編集部です。気がつけば日も短くなり、少しずつ秋の訪れを感じます。今年の十五夜はいかがでしたか?
 10月号の「こどものとも年少版」は、『にわとりかあさん』です。にわとりかあさんが温める卵は、大きく大きく膨らんでいきます。とうとう卵が割れて、中から出てきたのは……。木坂涼さんは、あっけらかんとしたほら話で子どもたちを思いっきり楽しませたいと、このお話を作ってくださいました。古い童謡のような文章は、聞いている側も声を合わせたくなるリズムです。ひとつの卵から100ぴきのひよこが生まれるという大ぼらに気を取られて、そもそも卵は大きく育たないということを、思わず忘れてしまいそうです。とぼけた味わいの絵を描いてくださったのは、ベテラン絵本作家の高畠純さん。にわとりかあさんと卵と、下に敷かれた草わらだけの最小限の要素を定点的に見せて、この世界を見事に表現してくださいました。高畠さんは絵本制作に際して、お住まい近くの養鶏家を尋ねたそう。原画では貼り絵で描かれた卵の殻ですが、「厚さ1ミリにも満たない殻の裏表で、ちゃんと外側が茶色になって内側が白くなるなんて、すごいと思いません?」とおっしゃっていたのが印象的でした。
 「こどものとも0.1.2.」は『すごいね じょうずだね』。子どもの成長を温かく描いた絵本です。お子さんと一緒に、「じょうずだね」と気持ちを重ねて読んでもらえたらうれしいです。
「こどものとも年少版」10月号  「こどものとも年少版」10月号『にわとりかあさん』
木坂 涼 文/高畠 純 絵
定価(本体389円+税)

「にわとりかあさん あっためた たまごを ひとつ あっためた」にわとりかあさんがあたためる卵はなかなかかえりませんが、あたためているうちにぐんぐん大きくなって、とうとう最後には……。古い童謡のようなフレーズのリズミカルな繰り返しと、とぼけた味のあるユーモラスな絵で、あっと驚きの結末に導かれます。読者の期待の高まりとともに大きく膨らんでいく卵を描いた、愉快な絵本です。

★月刊絵本「こどものとも年少版」くわしくはこちらをご覧ください。

《6》原画展・イベントのお知らせ

●「柳原良平 海と船と港のギャラリー」
概要

油彩画、切絵、リトグラフを中心にイラストレーション、絵本の原画、ポスターなど多彩な作品で、柳原良平の画業を通観する、没後最初の本格的な展覧会です。

会期 2016年8月20日(土)~11月6日(日)
会場 横浜みなと博物館
関連作品 『たぐぼーとの いちにち』『しょうぼうてい しゅつどうせよ』
●石川えりこ原画展「あのころ」
概要

福岡県嘉麻市の織田廣喜美術館にて、石川えりこさんのこれまでの作品を振り返る展覧会が開かれます。

会期 2016年9月10日(土)~10月10日(月・祝)
会場 織田廣喜美術館
関連作品 『ボタ山であそんだころ』 『てんきのいい日はつくしとり』 『ことしのセーター』(「こどものとも」2016年11月号)

●特別企画展「かこさとしの世界」
概要

『だるまちゃんとてんぐちゃん』に代表される「だるまちゃん」シリーズなどで知られるかこさとしは、科学絵本・こどもたちの遊び・伝統行事と幅広い領域での絵本作家である。この展示では、かこさとしの代表的な絵本を紹介し、ユーモアあふれる絵とリズミカルな言葉に表象されるかこさとしの心豊かな世界を展観する。

会期 2016年9月16日(金)~11月23日(水・祝)
会場 ふくやま文学館 (企画展示室)
関連作品 だるまちゃんシリーズ
●ビアトリクス・ポター生誕150周年「ピーターラビット展」
概要

世界中を魅了する主人公の日本初の大規模展!「ピーターラビット」の作者、ビアトリクス・ポターの生誕150周年を記念した日本で初めての大規模な展覧会です。貴重な絵本原画やスケッチなど200件以上をご紹介。創作の原点をたどりながら、知られざる“ピーター”誕生のストーリーに迫ります。本展のオリジナルグッズも盛りだくさんです。

会期 2016年8月9日(火)~ 10月11日(火)
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム
関連作品 ピーターラビットシリーズ
●谷川俊太郎展・本当の事を云おうか・
概要

本展では、少年時代に夢中になったという模型飛行機や、その後のラジオコレクションの一部などを紹介しながら、詩人谷川の原点を探り、谷川自身の手による写真などから、詩人の背後に見え隠れするものを探っていきます。

会期 2016年9月22日(木・祝)~ 12月25日(日)
会場 大岡信ことば館(静岡県三島市)
関連作品 『にほんご』
 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000