あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2016年10月19日 Vol.215
読書の秋? 食欲の秋? 気持ちのよい季節になりました。

いつも「あのねメール通信」をご愛読いただき、ありがとうございます。
葉っぱも色づきはじめ、散歩をするにも気持ちのよい季節ですね。
今月は、読書の秋にぴったりの作品をご紹介します。

《1》『落語少年サダキチ』の作者 田中啓文さんのエッセイ
落語は「おもろいもん」だ
落語少年サダキチ

 落語、とくに上方落語が大好きなので、隙あらば上方落語を扱った小説を書こうと虎視眈々と狙っているのだが、なかなか機会はない。このたび福音館書店さんがなにを思ったか、上方落語好きの小学生を主人公にした小説を書いてみませんか、と言ってきた。たぶん「上方落語好きの小学生を主……」ぐらいのところで、やるやるやる! ぜったい書く書く書く書きます! と返事したはずである。イラストはマンガ家の朝倉世界一さんが描いてくださることになったのだが、これが絶妙なのである。連載時は毎回、絵が上がってくるたびに、ひょえーっ、とそのすばらしさに驚いた。朝倉さんの絵が見たいがために小説を書いてるようなところもあった。今回、それらのイラストがまとまって1冊になるわけで、正直、私の小説を読んでもらいたいというより、朝倉さんのイラストを見てほしい(あかんやろ)。
 私が小学生のころの大阪では、落語はテレビでもラジオでも漫才やコントや新喜劇と並んで放送されていて、こどもにとっては「おもろいもん」という括りでそんなたいそうなものではなかったのに、いつのころからか落語は古臭く、鑑賞するにはそれなりの知識が必要……みたいなことになり、歌舞伎や能・狂言と同じく古典芸能に入れられてしまった。落語は、現代人が予備知識なく聴いてもちゃんと面白いのだ。落語を聴くのにイヤホンガイドの解説がいるようでは、とても気楽な娯楽といえないではないか。お笑いブームで、漫才やコント、ピン芸、喜劇……などがもてはやされているのに、落語という最高の笑芸を黴臭い箱に押し込めるのはもったいなすぎる……と思っていると、最近はうれしいことに、小学生を対象とした落語教室などが各地で催され、こどもたちが落語の面白さに目覚めてくれているようである。
  この『落語少年サダキチ』は、お笑い大好き少年忠志が上方落語の面白さに目覚め、周囲を巻き込みながらそれにはまっていくうちに、江戸時代の大阪にタイムスリップしてしまう……という、わははは……と声を出して笑えるギャグ小説である。落語を扱った小説はなぜかシリアスな内容になりがちだが、上方落語は漫才、コント、新喜劇などに伍して舞台に出ている「現在進行形のお笑い」である一方、古典芸能としての側面もある珍しい芸能だ。なので、とりあえず読んで笑ってもらえれば作者としては満足である。
 しかし、じつは裏テーマもあって、我々現代人の生活は確かに便利だが、江戸時代の暮らしはそれに比べて不便一辺倒だったのか。逆に、江戸時代は公害も原発も核兵器も農薬も自動車事故もない世界だが、それは本当にパラダイスだったのか……そのあたりのことをぼんやり考えていただけるように書いたつもりである。
 というわけで、これほど刊行を待ち望んだ本は私としても珍しいのです。ぜひ手に取ってください。

田中啓文(たなか・ひろふみ)

1962年大阪府生まれ。小説家。神戸大学経済学部卒業。93年「凶の剣士」で第2回ファンタジーロマン大賞佳作入選、ジャズミステリ短編「落下する緑」で「鮎川哲也の本格推理」に入選しデビュー。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第33回星雲賞日本短編部門、09年「渋い夢」で第62回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。上方落語にくわしく、 落語を題材にした笑酔亭梅寿シリーズ(集英社文庫)のほか、新作落語も手がける。

『落語少年サダキチ』

『落語少年サダキチ』
福音館創作童話シリーズ
田中啓文 作/朝倉世界一 画
定価(本体1400円+税)
小学中学年から
それは、あの日あの道端で、べろんべろんの爺さんとの出会いが全ての始まりだった。舞台は大阪、時は……。押しに弱い少年忠志が、落語を武器に、時空を越えて大活躍!

 
《2》『ぐりとぐらカレンダー2017』好評販売中
毎年、楽しみにしていただいている方も多い『ぐりとぐらカレンダー2017』を販売中です。2016年も残すところ2ヶ月半となりました。カレンダーのご用意はお早めに!
全国の書店でも取り扱いがございます。店頭に在庫がない場合は、お取り寄せも可能です。
《3》月刊誌編集部からこんにちは
毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月は、こどものとも第一編集部です。こどものとも第一編集部では「こどものとも」「こどものとも年中向き」という2つの月刊絵本を編集しています。

こどものとも第一編集部から

  皆さんのご家庭では、もう衣替えは済みましたか? 「こどものとも」11月号の『ことしのセーター』は、押し入れにしまわれた冬物を取り出すところから物語がはじまります。去年のセーターやカーディガンを着てみる子どもたち。でも、どれも小さすぎて丈が足りません。そこで“編み直し”のはじまりです。小さくなった服をほどいて、毛糸玉に戻し、また新しい服に編み直すのです。お気に入りの服をほどいてしまうのはさびしいけれど、それ以上の喜びが――新しい服が目の前で編み上がってゆくワクワクや、「どんな服ができあがるのかな」と期待するドキドキが待っています。
 このお話は、作者である石川えりこさん自身の経験が元になっています。子どものころ、お母さんやおばあさんが編み物をする手元を、いつまでも飽きずに眺めていたのだとか。50年ほど経っても、その記憶は全く色あせていないようです。
 石川さんは他にも『ボタ山であそんだころ』『てんきのいい日はつくしとり』など、豊かな子ども時代を元に絵本を描かれています。つい先ごろまで、そうした絵本作品の原画を一堂に会した展覧会が地元・福岡県嘉麻市の織田廣喜美術館で開かれていました。展覧会のタイトルは「あのころ」。当時を知る大人たちには懐かしく、子どもや若い方々には新鮮に映りそうな展示でした。編み直しもつくしとりも今ではあまり一般的ではありませんが、それだけに、子どもたちにはこうした生活風景の温かさに、絵本を通じて触れてもらいたいと思います。
 「こどものとも年中向き」11月号は『ひーじー』。ひいおじいちゃんとひ孫の心の通い合いを温かく描いた作品です。こちらも併せてお楽しみください。
「こどものとも」11月号  「こどものとも」11月号『ことしのセーター』
石川えりこ 作・絵
定価(本体389円+税)

衣替えの季節です。主人公たち一家も、去年の冬物をほどいて新しく編み直すことにしました。お気に入りだったカーディガンをほどくのは少しさびしいけれど、新しいセーターがだんだん編み上がっていく様子は見ていてワクワクします。50年ほど前の一般家庭を舞台に、洋服が生まれ変わる驚きと喜びを描きました。

★月刊絵本「こどものとも」くわしくはこちらをご覧ください。
「こどものとも年中向き」11月号  「こどものとも年中向き」11月号『ひーじー』
東郷聖美 作
定価(本体389円+税)

りつくんは、お父さんと一緒にひーじーの家に行きます。ひーじーはりつくんのひいおじいさん。歩くのがゆっくりで、ちょっと耳が遠いけれど、好物のプリンを食べながら、りつくんに面白いお話をしてくれます。男の子と認知症の曾祖父の交流を描きます。

★月刊絵本「こどものとも年中向き」くわしくはこちらをご覧ください。

 
《4》『絵巻じたて ひろがるえほん かわ』特設ページのご案内
月刊絵本「こどものとも」創刊60周年を記念して、「こどものとも絵本」のロングセラー『かわ』を絵巻じたてにしました。折りたたまれたページをひろげると約7メートル。この迫力を動画でご覧いただける特設サイトを10月21日(金)から公開します。ぜひご覧ください。
《5》原画展・イベントのお知らせ

●『とうだい』原画展

概要

絵本『とうだい』(斉藤倫 文/小池アミイゴ 絵)の原画展を開催します。

会期 2016年10月25日(土)? 10月30日(日)
会場 森岡書店(東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル)
関連作品 『とうだい』 

●柳原良平 海と船と港のギャラリー
概要

油彩画、切絵、リトグラフを中心にイラストレーション、絵本の原画、ポスターなど多彩な作品で、柳原良平さんの画業を通観する、没後最初の本格的な展覧会です。

会期 2016年8月20日(土)?11月6日(日)
会場 横浜みなと博物館
関連作品 『たぐぼーとの いちにち』『しょうぼうてい しゅつどうせよ』

●西村繁男&いまきみち 絵本の原画2人展

概要

「子供もオトナも楽しくなる」をテーマにした、絵本の原画展です。

会期 2016年10月1日(土)? 11月13日(日)
会場 ふじのリビングアート BC工房
関連作品 福音館書店 西村繁男さん作品一覧
福音館書店 いまきみちさん作品一覧

●特別企画展「かこさとしの世界」
概要

『だるまちゃんとてんぐちゃん』に代表される「だるまちゃん」シリーズなどで知られるかこさとしさんは、科学絵本・こどもたちの遊び・伝統行事と幅広い領域での絵本作家です。この展示では、かこさんの代表的な絵本を紹介し、ユーモアあふれる絵とリズミカルな言葉に表象される心豊かな世界を展観します。

会期 2016年9月16日(金)?2016年11月23日(水・祝)
会場 ふくやま文学館 (企画展示室)
関連作品 だるまちゃんシリーズ
●生誕100年 瀬田貞二 ーこころに響くことばー 展
概要

「子どもの本という海を航海する、帆船の航海長」とよばれた瀬田貞二さん。古くから愛され続けてている数々のお話の再話、翻訳、創作にたずさわりました。そんな瀬田さんの絵本の仕事を集めた展覧会です。

会期 2016年9月17日(土)? 11月30日(水)
会場 八ヶ岳小さな絵本美術館
関連作品 福音館書店 瀬田貞二さんのページ
●没後10年「長新太の脳内地図」展
概要

長新太は1949年のデビュー以来、2005年に亡くなるまで、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、絵本画家として多彩な活躍をしました。長さんの全画業を俯瞰し、その特異な発想の源を探る展覧会です。

会期 2016年10月1日(土)? 11月30日(水)
会場 安曇野ちひろ美術館
関連作品 福音館書店 長新太さん作品一覧
●谷川俊太郎展・本当の事を云おうか・
概要

本展では、少年時代に夢中になったという模型飛行機や、その後のラジオコレクションの一部などを紹介しながら、詩人谷川の原点を探り、谷川自身の手による写真などから、詩人の背後に見え隠れするものを探っていきます。

会期 2016年9月22日(木・祝)? 12月25日(日)
会場 大岡信ことば館(静岡県三島市)
関連作品 『にほんご』
 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000