あのねメール通信
福音館書店メールマガジン2017年2月15日 Vol.219
暦の上では、春ですが……

いつも「あのねメール通信」をご愛読くださり、ありがとうございます。
暦の上では春ですが、まだまだ寒い日が続きますね。
2016年、児童文学の創作・翻訳・評論に大きな足跡を残した瀬田貞二さんが、生誕100年を迎えました。今月はそれを記念して刊行された評伝や絵本をご紹介します。

《1》『子どもの本のよあけ』の著者、荒木田隆子氏のエッセイ
瀬田貞二さんに出会う旅
瀬田貞二さん生誕100年

 子どもの本を作るには「猛烈に大人であって、猛烈に子どもであるようにのぞみたい」―これは瀬田貞二先生の言葉ですが、私が入社した1970年当時の福音館書店は、まさにそれを地で行く、活気溢れる状況でした。
  ちょっと寄り道をしてひと足遅れて「母の友」の編集に加わった私は、そんな気合いの入った編集部の雰囲気にたちまち飲みこまれ、立ち往生してしまいました。そこを助けてくださったのが、ほんとに運のいいことに有り難いことに瀬田貞二先生だったのです。当時先生はたくさんの絵本のほか、『ホビットの冒険』や「ナルニア国ものがたり」など長編ファンタジーの翻訳も大方すまされ、“自分流に子どもの本とつきあう暮らし”を続けるなかで、日本の古い時代の子どもの文化に関心が向かっていったころでした。その成果は「落穂ひろい」というタイトルで「母の友」に連載されることになり、私はその担当者として初めて浦和のお住まいに伺ったのですが、このとき先生は、少しはにかみながら、これから書いていくつもりのことをていねいに説明してくれました。その話を聞いているうちに、この人はこれからとても大きなことをやろうとしているんだということが伝わってきて、なんとか役に立ちたいとぞくぞくするような気持ちになったのを覚えています。
 こうして絵本や童話の翻訳など多岐にわたる先生のお仕事のうち、足かけ9年間をたったひとつ「落穂ひろい」の担当者としてだけ私は過ごすのですが、1979年、単行本化を目前に先生が63歳でなくなられてからも、遺されたたくさんの文章を評論集に編む仕事は続きました。それは2009年に三つ目の評論集『児童文学論』を出版することで完結しましたが、そのおよそ30年のあいだ、私にとって先生が「過去の人」であったことはいちどもありませんでした。いつも現在進行中の本の著者として、聞きたいこと相談したいことを山ほど抱えながらのお付き合いでしたから、じっさい「過去の人」になりようがなかったのです。そしてこの30年間に私は少しずつ先生について話したいことを積もらせていったのかもしれません。
 2013年5月から翌年1月にかけて「瀬田先生の仕事」と題して行なった東京子ども図書館主催の講座は、80名余りの方々がほんとによい聴き手になってくれました。会場は第1回目から何か熱気のようなものが満ちていて、それは5回目まで続きました。そしてこの合計12時間半にわたった講座を、「単行本にしたら」と勧めてくださったのが松岡享子さんでした。この、私にとって“とんでもない”話がけっきょく実現してひと苦労することになったのは、強いて言うなら瀬田先生を「過去の人」にしたくない、「伝説の人」のままにしておきたくないという思いに背中を押されたからでしょうか。
 講座の最中にこんなFAXを下さった方がいました。「もしもタイムマシンというものがあって、歴史上好きな場面に飛んでいくことができたならば、オックスフォードのインクリングスの会合に顔を出すか、トキワ荘に参加するか、さもなくば日比谷図書館の(『幼い子の文学』*のもとになった瀬田氏の)講義に参加したいというのが私の長らくの夢でした」。この『子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝』がそんなタイムマシンの役目を担ってくれたら、そしてそのための“時間旅行”に読者の皆様をお誘いすることができたならと願って、私はこの本を作りました。

荒木田隆子(あらきだ たかこ)
元児童書出版社の編集者。在職当時は、瀬田貞二氏の担当編集者として『落穂ひろい-日本の子どもの文化をめぐる人びと』『絵本論-瀬田貞二 子どもの本評論集』『児童文学論-瀬田貞二 子どもの本評論集』などを手掛けた。また、「日本の昔話」全5巻、「にほんのわらべうた」全4冊など、子どもの伝承文化にかかわる本編集の仕事もあり、著書に『鈴木サツ全昔話集』(共著/福音館書店刊)がある。東京都在住。
子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝

子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝
福音館の単行本
荒木田隆子 著
定価(本体3,200円+税)
絵本やファンタジーの翻訳と評論に、古い時代の日本の子どもの文化の研究に、常に温かく豊かな眼差しを注いだ瀬田貞二氏。担当編集者として関わった著者がその仕事の数々を語ります。

《2》瀬田貞二さん生誕100年出版物のご案内

生誕100年を記念して、瀬田氏の仕事をまとめた新刊や翻訳作品を刊行いたしました。「瀬田貞二生誕100年記念出版」ページをご覧ください。

《3》月刊誌編集部からこんにちは

毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。
今月は「「たくさんのふしぎ」編集部です。

たくさんのふしぎ編集部から

 こんにちは、「たくさんのふしぎ」編集部です。
 3月号は『チョウのすきな葉っぱの味』です。チョウのメスは植物の葉に卵を産みつけますが、どの植物でもいいというわけではありません。チョウの種類によって幼虫が葉を食べる植物の種類も決まっているんですね。
 子どものころ、庭にキンカンの木がありまして、毎年、アゲハチョウの幼虫がその葉を食べて育ち、チョウになっていくのを見守るのが、とても楽しみでした。
 アゲハの幼虫は柑橘系の葉を食べるのですが、姿の似たキアゲハが好むのは、セリ。昨年、スーパーで買って食べたセリの根をプランターに植えたら、思いのほか葉が茂って広がり、ときどき摘み取っては、鍋や温かいそばの具として重宝しております。マンション3階のベランダなのですが、今年はそこでキアゲハが育ってくれたらと、楽しみにしております。
 そういえば、マンションの周辺でやたらとアオスジアゲハを目にすることが多く、「チョウの通り道なのかな」などとふしぎに思っていたのですが、アオスジアゲハの食草がクスノキだと聞いて納得。マンションの脇には、クスノキの巨木が3本も立っており、アオスジアゲハはそこで育っていたのでした。
 というわけで、今回も身近なところから「ふしぎ」な世界へいざなう1冊となっております。お楽しみください。

「たくさんのふしぎ」3月号 

「たくさんのふしぎ」3月号『チョウのすきな葉っぱの味』

奥山多恵子 文・絵 定価(本体667円+税)
モンシロチョウの幼虫はキャベツなどカラシナ科植物の葉を、アゲハの幼虫はサンショウなどミカン科植物の葉を食べる。チョウの幼虫たちほど食べられるものが限られているものはいません。気ままに飛んでいるようにみえるチョウたちですが、母チョウたちは、必死に子どものための食草を探しているまっ最中なのかもしれません。チョウたちはいかにして決められた葉っぱに出会うのか、食草探しの世界をご案内します。

★月刊絵本「たくさんのふしぎ」くわしくはこちらをご覧ください。

《5》原画展・イベントのお知らせ
●かんがえるカエルくん展
概要

『かんがえるカエルくん』が1996年に刊行されて20年。4コマでリズミカルにこどもの素朴な疑問を考えていくこの絵本は、各国でも翻訳出版されています。そんな、世界のこどもに愛される『カエルくん』の魅力にせまります。

会期 2016年12月3日(土)~2017年2月26日(日)
会場 いわむらかずお絵本の丘美術館
関連作品 みんなの人気者「かんがえるカエルくん」
●BIB50周年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展
概要

「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」(略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)は、スロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年ごとに開催される、世界最大規模の絵本原画コンクールです。その50周年を記念して、歴代参加作品の中から「日本の絵本の歴史50年」を振り返る展示と、参加50ヶ国からノミネートされ国際審査によって決定した、グランプリをはじめとするBIB2015の受賞作品および、日本からの出品作品を紹介します。

会期 2017年1月4日(水)~2017年2月26日(日)
会場 千葉市美術館
関連作品 『ふしぎなたけのこ』『スーホの白い馬』『旅の絵本Ⅱ』『エンソくん きしゃにのる』『ジャリおじさん』『タンゲくん』『きこえる』『きょうはマラカスのひ』 など
●中村至男展
概要

シンプルで明快、そしてフラットな形と色面のデザインが印象的な中村至男さん。初めての個展となる本展では、新作に加え、これまでまとめて見ることのなかった25年を超えるデザインワークを一挙にご紹介します。

会期 2017年1月13日(金)~2017年2月16日(金)
会場 クリエイションギャラリー G8
関連作品

『どっとこどうぶつえん』『はかせのふしぎなプール』(「こどものとも」2015年9月号)

●走る!飛ぶ!山本忠敬のりもの絵本の世界~『とべ!ちいさいプロペラき』を中心に~
概要

『しょうぼうじどうしゃじぷた』などの乗り物絵本で大人気の山本忠敬さんを特集します。山本忠敬さんは2016年に生誕100年を迎えられ、それを記念した復刊なども各社から出版されています。ナルニアホールでは『とべ!ちいさいプロペラき』(福音館書店)ができるまでの習作をパネル展示。山本さんゆかりの品も合わせてご覧いただきます。

会期 2017年2月1日(水)~ 2017年3月13日(月)
会場 教文館ナルニア国 ナルニアホール
関連作品 『とべ! ちいさいプロペラき』『でんしゃがはしる』『とっきゅうでんしゃ あつまれ』
●てんじつき絵本・さわる絵本フェア
概要 目の見えない人と目の見える人が、同じ絵本を介して、ともに楽しい時間を過ごすことができるようにという願いが込められたてんじつきさわる絵本。そんな絵本が大集合する毎年恒例のフェアが開催されます。
会期 2017年2月4日(土)~3月7日(火)
会場 ジュンク堂書店池袋本店8F
関連作品 『てんじつきさわるえほん ぐりとぐら』
『てんじつきさわるえほん ぞうくんのさんぽ』
*各出版社のてんじつきさわる絵本のページはこちらをご覧ください。
点字つきさわる絵本の出版と普及を考える会
●悦子のブック・バスケット Special
概要

「悦子のブックバスケット」は、翻訳家・作家の野坂悦子さんが絵本作家や翻訳家たちのお話しを聞く小さな集まりです。今回はSpecial企画として、野坂さんの関わった本や紙芝居を一堂に展示します。オランダ・ベルギー・日本のイラストレーターのミニ原画展もあります。

会期 2017年2月4日(土)~ 2017年2月16日(木)
会場 ギャラリー澄光
関連作品 『カワと7にんのむすこたち』『いつも いつまでも いっしょに!』
●かこさとし 展-原画で綴る小湊鐡道沿線の風景-
概要 千葉県市原市を走るローカル線・小湊鐡道のトロッコ列車を描いた絵本原画と、かこさとしさんの代表作品の中から複製画を展示します。

会期 2017年2月14日(火)~ 2017年3月20日(月・祝)
会場 ちばぎんひまわりギャラリー
関連作品 みんなの人気者 「だるまちゃん」のページ
 
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◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000