福音館書店メールマガジン 2017年5月10日 Vol.222
あのね メール通信
新緑がまぶしい季節になりました
いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいまして、ありがとうございます。
今月は好奇心を刺激する新しい写真絵本をご紹介します。
今月の新刊エッセイ このあいだになにがあった?
「生きるための練習問題」 佐藤雅彦

 まずは、次のふたつの文字のグループをじっと見てください。左にある文字のグループに何かが起こり、右の文字のグループになりました。一体、何が起こったのでしょうか。

オセロ

 そうです、右上隅に「黒」が入り、その結果、両端を「黒」で挟まれた「白」が次々とひっくり返って「黒」になったのです。白と黒という二文字だけで構成されているさまや、その並び方、さらには絵柄の変化などから、これは私たちが子供の時から慣れ親しんでいるオセロゲームを模したものだということが「分かる」わけです。
 実は、人間は、妙な違いを示すふたつの事象に少なからぬ関心を寄せます。そして、そのふたつの事象の差分から何かを「分かろう」と、かなりの集中力を持って、その謎に挑みます。みなさんも、冒頭のオセロの問題に対して、ほんの短い時間ではあったとは思いますが、日常の些事をすっかり忘れて、その謎めいた差の意味を解き明かすことに没入したのではないでしょうか。そして、この正体不明なものに、自分がオセロゲームという枠組(パラダイム)を与えることができた時に、小さな悦びを覚えたのではないでしょうか。
 差を取って何かを「分かる」ことは、必ずしも悦びだけを生むとは限りません。時として、それは心配や危惧や希望なども生み出します。
 例えば、友人が電話を受けた後と前とで、すっかり表情が変わった時、ある重大なことが、その友人に起こったことが分かります。例えば、朝、旦那さんが出かける時に着せてあげた背広を、夜、洋服ダンスに戻すとき、そのポケットに見知らぬ薬のカラが入っていたら、何か言い出せないような変調が旦那さんに起こっていることが分かります。例えば、まだ寒い冬の通学途中で、昨日まで見かけなかった梅の蕾を見つけた時、春の訪れを予感します。これで分かることは、差を取って「分かる」ということは、とても人間的なふるまいであるということです。
 私と慶応大学・佐藤研の卒業生からなるクリエーティブグループであるユーフラテスは、この「分かる」ということをテーマに研究を重ね、その成果物としていろいろな表現を作っています。『このあいだに なにがあった?』も、私とユーフラテスは、読者に新しい分かり方を提供し、それによって生まれる人間的な悦びを感じてもらいたいと考え、作ったものです。
 私たちは無意識に絶えず変化をチェックして生きています。その殆どは空振りに終わりますが、この空振りこそが平穏さに相違ありません。平穏さを破るような差分が取れた時、私たちは、その背景にある真実を見抜き、次の行動を速やかに取らなくてはなりません。顔色が変わった友人や、隠れて薬を飲んでいるご主人に対して、差を取ることで、私たちは次の行動に出るきっかけを自ら知り得たのです。
 『このあいだに なにがあった?』は、生きるための練習問題なのです。しかも、それは悦びを伴う練習問題です。お子さんと一緒に生きるトレーニングをお楽しみいただけたら、幸いです。

佐藤雅彦(さとう・まさひこ)
1954年静岡県生まれ。東京大学教育学部卒業後、電通を経て、94年に企画事務所TOPICSを設立する。99年より慶應義塾大学環境情報学部教授、06年より東京藝術大学大学院映像研究科教授。NHK・Eテレ「ピタゴラスイッチ」「0655」「2355」「考えるカラス」などの企画・監修を担当。著書に『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞出版社)、『プチ哲学』『毎月新聞』(ともに中央公論新社)、『勝手に広告』(マガジンハウス)、『砂浜』(紀伊国屋書店)、『考えの整頓』(暮しの手帖社)など多数。

ユーフラテス●独自の研究活動を基盤として活動しているクリエーティブグループ。慶應義塾大学 佐藤雅彦研究室の卒業生により2005年活動開始。NHK・Eテレ「0655」「2355」「ピタゴラスイッチ」「大人のピタゴラスイッチ」「考えるカラス」の映像制作等を手がける。著書に『コんガらガっち どっちにすすむ?の本』『あたまがコんガらガっち劇場』(小学館)、佐藤雅彦+ユーフラテスとしての著書に『ぴったりはまるの本』(ポプラ社)など。

このあいだに なにがあった?
佐藤雅彦+ユーフラテス
定価 : 本体900円+税 ページ数 : 28ページ サイズ : 26×24cm
その他の新刊はこちらです。
今月の月刊誌 6
                                        月号のラインナップ
今月のおすすめ作品
ちいさなかがくのとも『しずく』 越智典子 文/野口満一月 絵
雨があがった。おもてはしずくでいっぱいだ。大きな葉っぱに大きなしずく、小さな葉っぱに小さなしずく。葉っぱの縁にずらりとならんだまんまるのしずくや、クモの巣を飾るレースのようなしずく。そんな美しいしずくの数々に出会える絵本です。 いつもの散歩道がしずくに彩られてきらきらと輝く様子が、日本画で美しく描かれます。雨あがり、子どもたちがすてきなしずくと出会えますように。
● 月刊誌編集部より
今月は「ちいさなかがくのとも」編集部です

  雨あがり、宝石のように輝くしずくを見たことがありますか? 葉っぱの縁にずらりと並ぶまんまるのしずくや、葉っぱが揺れるところころ転がる元気なしずく、くもの巣をレースのように飾るしずく。「ちいさなかがくのとも」6月号は、そんな美しい雨あがりの宝物に出会える絵本です。タイトルは、『しずく』。
 作家の越智典子さんと画家の野口満一月さんとともに、雨あがりの公園に取材に行きました。葉っぱについたしずくが太陽の光を集め、「こっちを見て!」ときらきら輝きます。しずくの形は葉っぱの表面構造によって決まってくるそうで、サトイモの葉の上ではしずくは球になってころころ転がり、カエデの葉についたしずくは今にも落ちそうに垂れ下がります。越智典子さんが、取材で出会ったしずくたちのそんな個性を、リズミカルな文章で表現してくださいました。
  日本画家の野口満一月さんは、雨あがりのきらきらした空気感を金箔で、光り輝くしずくを銀泥(銀粉をにかわで溶いた絵の具)で表現されました。見慣れたはずの散歩道がしずくに彩られてきらきら輝く特別な瞬間を、夢のように美しく再現してくださっています。

 雨あがり、ぜひおもてに出かけて、すてきなしずくと出会ってください。大人より目線が低い子どもたちのこと、葉っぱの上の宝石をきっとたくさん見つけてくれることでしょう。子どもたちが、身近な自然の「きれい!」「すてき!」に目を輝かせてくれますように!

ちいさなかがくのとも 詳しくはこちらから
月刊誌 すべての最新号はこちらです。
お知らせ イベント原画展のご案内 お出かけしませんか?
絵本原画展・イベントの予定を「お知らせ」コーナーのイベント欄よりご覧いただけます。ぜひ休日のおでかけの参考にしてください。
詳しくはこちらから
今月の特集ページ

5月14日は母の日です。お母さんと一緒に楽しめる本、お母さんにプレゼントにぴったりの本をご紹介しています。ぜひご覧ください。⇒詳しくはこちら

福音館書店の最新情報
福音館書店 facebook 福音館書店 twitter たくさんのふしぎ facebook 母の友 facebook
◆このメールマガジンのバックナンバーは、次のページからごらんいただけます。
また、配信先の変更および解除は次のページからおこなうことができます。
http://www.fukuinkan.co.jp/mail_magazine
◆このメールの再配信、および掲載された
記事・画像の無断転載を禁じます。
◆発行:株式会社福音館書店 広報宣伝部広報宣伝課
Illustrations (C) Yuriko Yamawaki 2000