☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 ★ あのねメール通信~福音館書店メールマガジン 2004年1月7日 Vol.26   ★
                

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 絵本論の原点は、これ 松居直
《2》 月刊誌最新号<2月号>のご案内
《3》 「母の友」編集室の窓から
《4》 話題の新刊『きつねとうさぎ』の訳者こじまひろこさんのエッセイ
《5》 1月の新刊のご案内

*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*∴*∵*
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《1》絵本論の原点は、これ 松居直
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 社会現象として絵本ブームという言葉が使われるほどに、新しい絵本がつぎつぎ
と書店の店頭に並び、新聞にも広告されます。それとともに絵本に関する評論・
エッセイ・研究も単行本として出版されるようになりました。
 さらに絵本について特集した雑誌も眼を引きます。新聞紙上にも絵本に関する記
事の掲載が日常化しています。こうした絵本情報の氾濫をみていますと、絵本の液
状化現象とでもいうべきことが起きているのかと感じます。
 現在の社会において、日常の生活のなかで絵本とは一体何を意味するものか、
「絵本」とは何かを、改めて考える必要があるのではないでしょうか。
 半世紀も前の1956年4月に、「こどものとも」という月刊の物語絵本を創刊したこ
ろは、絵本論や絵本研究の文献はほとんどありませんでした。そこで読者向きに、
“絵本とは何か”を理解していただく手引きの連載記事を、「こどものとも」の付
録にのせることにしました。
 当時、教育学者や心理学者の絵本をめぐる解説風の記事は散見できたのですが、
絵本そのものの本質について考察した本格的な絵本論はまったくありませんでし
た。そのなかで絵本の文学性と芸術性について、内外にわたる広い視野で、確かな
認識にもとづき、わかりやすく解説できる人は瀬田貞二さん以外にはないと思い、
連載をお願いしたのです。
 この連載記事が、わが国における本格的な絵本論の草分けとなりました。そして
私たちは今、この瀬田貞二さんの絵本論から学び直す必要に迫られています。
 『瀬田貞二 子どもの本評論集 絵本論』は部厚く手ごわい本ですが、決して難
解な研究書ではありません。内容のごく一部をご紹介しますと、「ひとの最初に出
あう本」「絵本はおもちゃか」「どんな絵本があるでしょう」「動物はなかま」
「乗物絵本のあり方」「大人の見方、子どもの見方」「絵本の絵の性質」「大人と
子どものあいだ」「物語る絵」などなどの語りかけにはじまり、内外の絵本作家や
その作品についての深い洞察と示唆とが、ユーモアに富んだ軽妙な語りでくりひろ
げられます。
 一気に読むもよし、ボツリボツリと読むもよし、どこから読もうと読み手の自由
といえる興味深い本です。絵本の感じ方、見方、味わい方、考え方、本質のつかみ
方まで教えてくれる貴重な本です。新しい年の絵本との出会いには、ぜひこの一冊
からはじめてください。日本における絵本論の白眉です。

                            松居直

★『瀬田貞二 子どもの本評論集 絵本論』 瀬田貞二 著



松居直(まつい ただし)
児童文学家。京都生まれ。1951年同志社大学法学部卒業後、福音館書店の創業に参
画し、編集部長、社長、会長をへて、1997年より相談役、現在に至る。1956年月刊
物語絵本「こどものとも」を創刊し、編集長として赤羽末吉、長新太、堀内誠一、
安野光雅、加古里子、中川李枝子など、多くの絵本作家を世に出す。また、『もも
たろう』(1965年サンケイ児童出版文化賞受賞)『だいくとおにろく』や、陶淵明
の詩をもとにした『桃源郷ものがたり』など多数の絵本を執筆。著書は、『絵本と
は何か』『絵本の森へ』(日本エディタースクール出版部)、『絵本・ことばのよ
ろこび』『子どもの本・ことばといのち』(日本基督教団出版局)、『にほんご』
(共著、福音館書店)、『絵本の力』(共著、岩波書店)など多数。

★『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 画

★『だいくとおにろく』 松居直 再話/赤羽末吉 画

★『こぶじいさま』 松居直 再話/赤羽末吉 画

★『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵

★『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵

★『にほんご』 安野光雅・大岡信・谷川俊太郎・松居直 編


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《2》月刊誌最新号<2月号>のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆月刊誌最新号<2月号>発売中です。


◇◆ こどものとも0.1.2. 『しっぽ しっぽ』
                             くれたにゆき 文/三沢厚彦 絵             ◇◆

  ひょろり細くて長いしっぽ、くるりと一回転しているしっぽ、丸くておだんごみ
たいなしっぽ‥‥。いったい誰のしっぽかな?

◇◆ こどものとも年少版 『びっくり ぎょうてん』
                     小長谷清実 文/ペテル・ウフナール・ふりやなな 絵 ◇◆

  月曜日、突然テーブルが空から降ってきた。火曜日、花びんがテーブルに生え
た。こうして次々と奇想天外な出来事が一週間続きます。

◇◆ こどものとも年中向き 『ボールガエル』
                            風木一人 文/平出衛 絵                    ◇◆

  ボールはふしぎ。ぎゅうっと押してもすぐもどる。それはなぜ?ボールの中には
ボールガエルがいてね、押し返しているんだよ。

◇◆ こどものとも 『さかだちぎつね』
                    槇ひろし 作/前川欣三 画                          ◇◆

  たけしが出会ったのは、なぜかさかだちをしてすましている変なきつね。文も絵
も、ついには本までひっくり返る、ふしぎな絵本。

◇◆ ちいさなかがくのとも 『ねむたい ねむたい ももんがたち』
                            あかしのぶこ 作                           ◇◆

  森の木のあなの中で、ももんがたちがねむっています。きつつきがきても、えぞ
りすや鹿がきても、ぐーぐーぐっすり。いつおきるの?

◇◆ かがくのとも 『わたしのあかちゃん』
                    澤口たまみ 文/津田真帆 絵                        ◇◆

  抱擁、沐浴、授乳…、生まれたての赤ちゃんと母親との濃密なコミュニケーショ
ンを描き、読者を大きな愛で満たす科学絵本です。

◇◆ おおきなポケット 【かがく】「やまおやじの木」
                                  今森光彦 写真・文
                  【ものがたり】「ひみつのたからチョコラーテ」
                                  平山暉彦 作                         ◇◆

(かがく)クヌギの古木・やまおやじの一生を通じて雑木林の四季を紹介します。
(ものがたり)チョコレートの発明をめぐる冒険漫画。

◇◆ たくさんのふしぎ 『エンザロ村のかまど』
                        さくまゆみこ 文/沢田としき 絵                ◇◆

  ケニアのエンザロ村では、かまどとぞうりが大はやり。日本から遠く離れたこの
村に、どうしてそんなものがあるのでしょう?

◇◆ 母の友 特集 「子どもの“こころ”を考える」                       ◇◆

  カウンセリングのかかえる問題を中心に、子どもの心ついて、臨床心理学研究家
の小沢牧子さんのお話をお届けします。
★こちらから「母の友」2月号の目次をご覧いただけます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《3》「母の友」編集室の窓から
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 もしかしたら、日本人は権威というものに非常に弱い民族なのではないでしょう
か。恐らく、少々疑り深い人でも、「これは何々というエライ先生が言っていたこ
とだから、間違いない」と言われると、「ほんとかなあ」と首を傾げつつもなんだ
か納得してしまいます。それでも得心しない頑固な人でも、耳慣れない専門用語を
魔法の呪文のごとく唱えられれば、「おっしゃることは、なんだか至極ごもっとも
のような気がいたします」と、白旗をあげるよりほかありません。

 どうやら、私たちは、頭のどこか片隅で、何々博士あるいは、何々の専門家と呼
ばれる人たちにはあらゆる問題の原因をずばりと言い当て、そして解決する神通力
が備わっていると、そう思っている節があります。

 2月号「子どもの“こころ”を考える」では、臨床心理学の研究家である小沢牧
子さんにお話をうかがいました。小沢さんは、「『こころ』の問題は素人では扱え
ないからプロに任せてしまおう」と、子どもたちにまつわる様々な問題を、心理学
者や、カウンセラーなどの専門家に安易に委ねてしまうことに警鐘を鳴らしていま
す。ぜひご一読ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《4》話題の新刊『きつねとうさぎ』の訳者こじまひろこさんのエッセイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

絵本『きつねとうさぎ』をめぐって

  『きつねとうさぎ』は何とも古いロシア民話である。冬の長いロシアでは暖炉に
あたりながら、おはなしを語り、耳にしたのだろう。語り手は、きっと自分の思い
を重ね、さまざまなニュアンスを添えたことだろう。このように語りつがれてきた
おはなしをダーリ(1801-72)という作家、民俗学者でもあるひとが採集し、文字
に移した。採集されたものも、いくつか微妙にことなる部分もあるようだ。
 そこで、このお話を構成したノルシュテインさんに、お聞きしてみた。「うさぎ
は、ロシアの民族楽器バラライカを弾き、にんじんを植え、季節ごとに衣更えを
し、まるで弾けるほど陽気に暮らしていました。しかもちゃんと調和のとれた生活
でした。ところが信じられないようなことが起こり、一瞬にして家を乱暴に追い出
されます。助けてあげようという強そうな動物が現れ、希望と絶望を繰り返します
よね。あれは、実は私なのです。一生懸命やってきたことがあっという間に、いじ
めにあって引っくり返されたことがあるのです…」やはり、現代の語り部も自分の
思いをひしとこめていたのだ。
 このおはなしの絵を描くにあたって、ヤールブソワさんは、ノルシュテインさん
の勧めで、ロシア美術館に民衆絵画を見に出かけた。とくにボルガ川の岸辺にある
ガラジェーツカヤ村に伝わる絵に心引かれた。村の各家庭で使われた衣装函、ソ
リ、機織、つむ棒などに、ただ自分たちが楽しむために絵を描いた。それらの道具
が使いこまれると、絵も、少しこすれたりして、何か別の雰囲気を持つようにな
る。その家の生活の息吹が、そこに反映されるのだろうか。もともと動物や植物が
大好きなヤールブソワさんだが、「『きつねとうさぎ』では、きつねも、おおかみ
にも、くまも、うさぎの目だって、みんなガラジェーツカヤ絵画からやって来たの
よ」と微笑んだ。
 きつねは、とてもどうどうとして、伝統模様のスカートがよく似合う。しっぽも
立派だし、あんなにきれいなスカートをはいているのだから、今度は、あんなふう
に他人の家を乗っ取ったり、怒鳴ったりしないでね、と言いたい。でも、なぜかき
つねは、なかなかいいひとになれないみたい。うまれつき、どうも立派過ぎるのか
もしれない。
 おおかみには、いいイメージはあまりない。どうしても“騒ぐ血”に結びつく。
ほんとうは、うさぎを食べたかったのに、つい同情してしまった。あの大きな目か
ら涙がこぼれるのを目にしたので、おおかみは、ますます自分の力を認識させら
れ、きつねなんかなんでもないと思ったのだろう。決して怒鳴られたことのない強
いものの弱さを露呈させられて、ちょっと気の毒なおおかみさん!
 くまは、大昔のロシアでは人間の生まれ変わりと思われていた。人間の魂をもつ
森の住人として、ロシア人はくまと上手につきあってきた。スカマローヒと呼ばれ
た昔の道化師も必ずくまをつれていた。今だってボリショイサーカスなどで、くま
は活躍している。そんなわけで、くまは花輪なんかつけて、とても粋に描かれてい
る。根っから善良なので、やはり悪意にはもろいようだ。
 牛は、穏やかでおおどかな力を表す。「実はね、アニメーションでは、牛がチェ
ロで、哀しいエレジーを弾いているところにうさぎがやってくる、というふうにし
ようと思ったのだけど…」とノルシュテインは牛になってチェロを弾く真似をしな
がら、らーらーら、とエレジーを口ずさむ。チェロを弾きながら「どうしたのだ
ね?」と、ノルシュテインは、そばにうさぎがいるかのように、牛声で訊ねる… 
彼は、どうも牛が好きなようだ。
 時を告げるおんどりは、世界中でとびっきり格好よく描かれる果報者! 悪魔
も、魔女も、魑魅魍魎も、夜が明けて、おんどりの声を限りの叫びで、一瞬にして
姿を消す。ああ、いつも、そんな夜明けが来て、すべての悪が、この世から消えま
すように!
 
                                                      こじまひろこ


★『きつねとうさぎ』 F・ヤールブソワ 絵 /Y・ノルシュテイン 構成/
                     こじまひろこ 訳


こじまひろこ(児島宏子)
  東京都出身。1972年に日ソ学院(現・東京ロシア語学院)本科卒業後、モスクワ
大学ロシア語教師養成セミナーで研鑽を積む。以後、映画、音楽分野で、通訳、翻
訳、執筆などに従事。訳書に『きりのなかのはりねずみ』(福音館書店)『チェブ
ラーシュカ』(平凡社)『ソクーロフとの対話』(河出書房新社)『チエーホフは
蘇る』(書肆山田)など。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《5》1月の新刊のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
≪1月13日(火)配本≫
★『文庫版 語りつぐ人びと*アフリカの民話』
    江口一久、中野曉雄、西江雅之他 著・訳

◎アフリカの多様な文化を伝える37編の民話とともに、その語り手や採集者の
エッセイにより、語りつがれる状況を総合的に伝える民話集です。

★『文庫版 西遊記(上)』
    呉承恩 作/君島久子 訳/瀬川康男 画

◎ご存じ孫悟空の物語。天宮を騒がせ、お釈迦様に五行山下に閉じこめられた悟空
は、五百年後に三蔵に救われ、取経の旅にのぼります。

★『文庫版 西遊記(中)』
    呉承恩 作/君島久子 訳/瀬川康男 画

◎取経の旅を続ける一行の行く手を阻む妖怪魔物は数知れず、身を挺して三蔵を護
りぬく悟空、猪八戒、沙悟浄の苦難と活躍やいかに。

★『文庫版 西遊記(下)』
    呉承恩 作/君島久子 訳/瀬川康男 画

◎手を替え品を替え現れる妖怪変化の群れ。偽悟空の出現に万策つき果て、菩薩の
助けを求める悟空。遂に三蔵一行は満願を遂げました。

≪1月14日(水)配本≫
★『えんぎかつぎのだんなさん-らくご絵本』
    桂文我 話/梶山俊夫 絵

◎「うえ」「かみ」は好きだが「した」「しも」は嫌い。そんなだんなさん相手に
丁稚とザル売りはある計画をたてました。

≪1月21日(水)配本≫
★『しあわせいっぱい荘にやってきたワニ』
    アーシュラ・ウィリアムズ 作/吉上恭太 訳/堀川理万子 絵

◎ワニにのみこまれてしまったミネアポリスさんを助け出そうと、ジョニーはあの
手この手をつくしますが……。ちょっと風変わりで、とても愉快なお話です。

★『鹿よ おれの兄弟よ』
    神沢利子 作/G・D・パヴリーシン 絵

◎「おれは鹿の肉を食う。それはおれの血、おれの肉となる」。力強い詩と、東洋
的な細密画によって、シベリアの神秘的な森へと、どんどん引き込まれていきま
す。


*************************************
このメールの再配信、および掲載された記事の無断転載を禁じます。
◆配信先変更・解除 
◆発行者:株式会社 福音館書店 販売促進部 宣伝企画課
*************************************