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 ★ あのねメール通信~福音館書店メールマガジン  2004年2月4日  Vol.27 ★
                

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         ◆◇◆  CONTENTS  ◆◇◆          

《1》 絵本の文章力 松居直
《2》 月刊誌最新号<3月号>のご案内
《3》 「母の友」編集室の窓から
《4》 話題の新刊『鹿よ おれの兄弟よ』の作者神沢利子さんのエッセイ
《5》 2月の新刊のご案内
《6》 復刊絵本のご案内

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《1》絵本の文章力 松居直
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 1979年の秋のこと、私のもっとも尊敬するアメリカの絵本作家のマーシャ・ブラ
ウンさんから、突然、電話をいただきました。
 「今、中国からの帰りで東京に来ています。ぜひお会いしたい」とのことです。
私はびっくりするやら嬉しいやら、早速、宿泊先のホテルヘとんでゆきました。
 そしていろいろお話をしていた中で、いちばん印象的だったのは、絵本『三びき
のやぎのがらがらどん』のことでした。この絵本は文も絵もブラウンさんで、彼女
の代表作です。
 「どうしてあの絵本が、あれほど日本人に読まれるのですか? 日本の子ども
は、あのノルウェーの昔話がなぜ好きなのでしょう」と質問されたのです。とっさ
のことで私は答えに窮し、「あのドラマティックな力強い物語と、それにピッタリ
合ったすばらしい挿絵の魅力でしょう。要するに絵本としてみごとな出来栄えです
から」といった、ありきたりのことしか言えませんでした。
 「でも、アメリカでよりも、日本での方がよく売れているのですよ。なぜでしょ
うか」とたたみかけられ、その場で納得のゆく説明ができませんでした。その後
ずっと、これは私にとって大きな課題となっていました。そして日本での読者の反
応や評価などをもとに、考えつづけました。その結果、あの絵本が日本の子どもに
受けいれられ歓ばれる最大の理由は、訳者の瀬田貞二さんの日本語の文章の力だと
思いいたりました。
 わが国の古典文学に精通し、日本語の粋と、言葉が子どもに働きかける力を知り
つくしていた瀬田さんの文章力が、ブラウンさんの絵にゆたかに秘められている物
語る力を、みごとに引き出しているのです。
 瀬田さんの訳文は、いわゆる子ども向きの甘くやさしい表現ではなく、幼児には
むずかしい言葉やいいまわしが、大胆に使われています。しかしその言葉の選び方
や組みたて方はみごとで、文体の力強い響きやリズム、そして調べが、子どもの耳
にまっすぐに伝わり、気持をわくわくさせます。子どもは本来、実に良い聴き耳を
もっていて、言葉の力を微妙に鋭く感じとり、我を忘れて言葉の世界にはいりこみ
ます。
 子どもが歓ぶ絵本には、共通した特徴がみられます。声に出して語られる文章
が、それぞれ個性的ですばらしいのです。絵本はその文章を音読し、耳で聴いてみ
てはじめて評価できるのです。因みに、『三びきのやぎのがらがらどん』は1965年
の初版以来、約200万部の発行部数を記録する大ベストセラーです。

                            松居直


★『三びきのやぎのがらがらどん』 北欧民話/ブラウン 絵/瀬田貞二 訳



松居直(まつい ただし)
児童文学家。京都生まれ。1951年同志社大学法学部卒業後、福音館書店の創業に参
画し、編集部長、社長、会長をへて、1997年より相談役、現在に至る。1956年月刊
物語絵本「こどものとも」を創刊し、編集長として赤羽末吉、長新太、堀内誠一、
安野光雅、加古里子、中川李枝子など、多くの絵本作家を世に出す。また、『もも
たろう』(1965年サンケイ児童出版文化賞受賞)『だいくとおにろく』や、陶淵明
の詩をもとにした『桃源郷ものがたり』など多数の絵本を執筆。著書は、『絵本と
は何か』『絵本の森へ』(日本エディタースクール出版部)、『絵本・ことばのよ
ろこび』『子どもの本・ことばといのち』(日本基督教団出版局)、『にほんご』
(共著、福音館書店)、『絵本の力』(共著、岩波書店)など多数。

★『ももたろう』 松居直 文/赤羽末吉 画

★『だいくとおにろく』 松居直 再話/赤羽末吉 画

★『こぶじいさま』 松居直 再話/赤羽末吉 画

★『ぴかくんめをまわす』 松居直 作/長新太 絵

★『桃源郷ものがたり』 松居直 文/蔡皋 絵

★『にほんご』 安野光雅・大岡信・谷川俊太郎・松居直 編


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《2》月刊誌最新号<3月号>のご案内
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☆月刊誌最新号<3月号>発売中です。


◇◆ こどものとも0.1.2.『ぶたさん こんにちは』
                       ベーラ・フレーブニコワ 原案・絵/松谷さやか 文 ◇◆

  「トン トン トン」「どなたですか?」の繰り返しが楽しい“あてっこ”絵本。
ぶたさんの家に次々とやってくる友だちは誰でしょう?

◇◆ こどものとも年少版 『バルンくんと おたすけ3きょうだい』
                          こもりまこと 作                             ◇◆

  バルンくんが散歩に出かけると崖崩れで道が通れません。そこへブルドーザー、
ペイローダー、ダンプカーの3兄弟がやって来て……。

◇◆ こどものとも年中向き 『エレーナのインコ』
                            直江みちる 作/今井俊 絵                  ◇◆

  エレーナはインコのこどもをペロンと名付けて大切に育てます。ところがある
日、ペロンは雨に打たれて動かなくなってしまい……。

◇◆ こどものとも 『まゆとりゅう』
                    富安陽子 文/降矢なな 絵                          ◇◆

  山姥山に春のめざめをもたらす竜の親子がやってきました。山姥の娘のまゆも竜
の背にのって空をかけめぐります。

◇◆ ちいさなかがくのとも 『でんしゃは うたう』
                            三宮麻由子 文/みねお みつ 絵             ◇◆

  電車はいつでも歌っています。踏切を越えるとき、鉄橋を渡るとき、いろんなう
たを歌っています。電車の歌に耳をすましてみよう。

◇◆ かがくのとも 『あれこれ たまご』
                    とりやま みゆき 文/中の 滋 絵                    ◇◆

  茶碗蒸、オムレツ、マヨネーズなど、どれも卵をつかった料理を紹介します。
「かがくのとも」では、はじめて関西弁で語ります。

◇◆ おおきなポケット
    【かがく】「なつほの島旅」
           河田真智子 文/伊藤秀男 絵
        【ものがたり】「イワーシェチカと白い鳥」
          I・カルナウーホワ 再話/松谷さやか 訳/M・ミトゥーリチ 絵 ◇◆

  (かがく)重い障害をもつ5歳の女の子とお母さんが、遠い南の島を旅します。
ふたりが旅で出会ったのは……。
  (ものがたり)子どもを食べようと追いかける恐ろしいバーバ・ヤガーと、にげ
るイワーシェチカ。スリル満点の、ロシアの昔話。

◇◆ たくさんのふしぎ 『ツバメ観察記』
                        孝森まさひで 文・写真                         ◇◆

  野鳥写真家による、ツバメの巣作りから巣立ちまで、52日間にわたる貴重な観察
記録。知ってるようで知らないツバメの暮らし。

◇◆ 母の友  特集「交通事故から子どもを守る」                         ◇◆

  小学校に上がると子どもは一人で道路を歩く機会が増えます。交差点での巻き込
み事故を防ぐ「分離信号」についてレポートします。
★こちらから「母の友」3月号の目次をご覧いただけます。


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《3》「母の友」編集室の窓から
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 今回の特集は、「子どもを交通事故から守る」がテーマです。繁華街で見かける
スクランブル交差点のように、人と車が分かれて通行できる「分離信号」を中心に
考えました。卒園して小学校に入ると、登下校ばかりでなく一人で道路を歩く機会
が増えてきます。記事の中にありますが、歩いている子どもの交通事故で一番多い
のが交差点での事故です。通学路の中にある危険な交差点は、すべて「分離信号」
になって欲しいという願いを込めて記事を書きました。
 誌面の関係で書けませんでしたが、交差点の交通事故で、自転車に乗った子ども
が事故にあうケースも大変多くあります。町中でよく見かけるのは、信号の変わり
目に横断歩道を自転車に乗ったままスピードを出して渡ろうとして右左折車と接触
するケースです。道路交通法では、自転車は車両として区分されているため、自転
車に乗ったまま横断歩道を渡るのは違反です。ということは、子どもが自転車に
乗ったまま横断歩道上で事故にあった場合、子どもの方にも交通違反を問われるこ
とになります。大きな交差点では、横断歩道の横に自転車横断帯を設けているとこ
ろもあり、自転車はそこを通行することが義務づけられています。しかし自転車横
断帯は交差点側に設けられるため、右左折車と出会い頭にぶつかる可能性が高まる
ので安全性には疑問が残ります。面倒ですが交差点をわたる際は、自転車を降りて
歩くよう子どもに教えていくしかないようです。それには、まず親から実践を…
…。

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《4》話題の新刊『鹿よ おれの兄弟よ』の作者神沢利子さんのエッセイ
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  いのちへの畏敬を

 この物語の舞台はロシア沿岸州を横ぎって流れるビキン川です。
 わたしがビキン川畔のウデヘ族の村に泊り、川をさかのぼったのは1995年夏のこ
とでした。おびただしい枝流と中州を持つこの川に、案内人なしに舟をだすのは危
険でした。旅の仲間たちはウデヘの猟師と共に小舟に分乗することになりました。
小舟の底に敷かれた毛皮に気づいて、わたしは鹿の絵を描いて「この毛皮か?」と
目顔で猟師にたずねました。答は否でした。彼はそくざに二本の人さし指を牙にし
て、唸って見せたのです。
  「あ、猪だ」とわたしは笑いだし、猟師たちもどっと笑いました。彼らは同じモ
ンゴロイドのわたしたちにそっくりでしたから、言葉が通じないのがふしぎで、も
どかしく思ったものです。目ざす上流の川原について、そこできのこ汁をすすり、
川原で泊ることになりました。最年長だったわたしはウデヘ猟師の白い蚊帳つきの
天幕に招き入れられ、毛皮の上で眠りました。
 その思い出深いウデヘの村や猟師の姿をTVで見たのは、旅から一、二年後だっ
たでしょうか。小舟上の猟師が二ツ折りした銃を鹿笛代りに吹くところや、水草を
食いにくる鹿の語りなどが面白く、うなずきながら見終りました。これがきっかけ
となって物語のイメージがふくらんできました。
 ウデヘ語の特色であるというゆたかな擬音を使って、詩のような形でまとめた
かったのですが、ウデヘ語の擬音についてはよくわかりません。そこでニブフ族の
使う擬音をとり入れ、自分でも考えながら綴りました。絵はハバロフスク在住の画
家パブリーシン氏に依頼しました。氏は少数民族と親しく多くの優れた本を描かれ
た方です。快諾を得てうれしく絵の完成を心待ちにしつつ、何年か過ぎました。連
絡のとれぬことも多く、この間編集のTさんは大変な思いをされたのですが、結果
よければすべて善し! 実にすばらしい絵が戴けました。丹念に描かれた樹の幹に
枝に草のそよぎに精霊を感じます。森に生きる動物たち川原の小石に水の流れに精
霊が宿るのを感じます。胸が一杯になりました。
 思えばわたしの処女作もカムチャッカのネイティブの少年を、動物植物ばかりか
天の月や星までが守り力を貸す物語でした。あれから42年余。こうしてウデヘの若
者のの絵本を出す-。うれしく有難いわたしの80年の生のしめくくりとなりまし
た。
 欲ばらず、むさぼらず、すべてのものに精霊の宿りを信じ、いのちへの畏敬を忘
れなかったわたしたちの祖先の思いを伝える少数民族の人びと。その思いをわたし
も伝えたいのです。今を生きる日本の子どもたち、世界の子どもたちへ。そしてこ
の物語の故郷、ウデヘ族や少数民族の人々、なかでも子どもたちへ。そしてできる
ならば彼の地へもう一度訪れて、この物語のうまれるきっかけを与えて下さった猟
師のスサンさんに、この本を見て戴き、よろこんで戴きたいと心から願っておりま
す。

                                                          神沢利子


★『鹿よ おれの兄弟よ』 神沢利子 作 /G・D・パヴリーシン 絵


神沢利子(かんざわ としこ)
1924年1月29日、福岡県に生まれる。北海道、樺太(サハリン)で幼少期を過ごす。
文化学院文学部を卒業。詩、童謡、童話の創作に長年活躍し、巖谷小波文芸賞、路
傍の石文学賞、モービル児童文化賞、日本児童文学者協会賞、産経児童出版文化賞
大賞、日本童謡賞など、数々の賞を受賞している。著書は、『神沢利子コレクショ
ン(全5巻)』『ふらいぱんじいさん』(以上、あかね書房)、『ちびっこカムのぼ
うけん』(理論社)、『くまの子ウーフ』(ポプラ社)、『おやすみなさいまたあ
した』(のら書店)、『銀のほのおの国』『流れのほとり』『天の橇がゆく』『た
んたんぼうや』『たまごのあかちゃん』『いいことってどんなこと』『おっとせい
おんど』『おばあさんのすぷーん』『ぽとんぽとんはなんのおと』(以上、福音館
書店)など多数ある。東京都在住。

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《5》2月の新刊のご案内
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≪2月10日(火)配本≫
★『文庫版 雪の夜に語りつぐ ある語りじさの昔話と人生』
    笠原政雄 語り/中村とも子 編/吉本宗 画

◎昔話の第一級の語り手、笠原政雄氏が、雪深い山里で母親から語りきかされてき
た70余話の昔話を、語り口そのままに紹介します。

★『文庫版 冬のデナリ』
    西前四郎 作

◎米国人ヒッピーと日本人の若者が出会い、大きな夢に向かって歩きはじめた。厳
冬期マッキンレー初登頂をめぐる感動のドラマ。

≪2月18日(水)配本≫
★『ばばばあちゃんのなぞなぞりょうりえほん むしぱんのまき』
    さとう わきこ 作/佐々木志乃 協力

◎ばばばあちゃんがつくる「むしぱん」には、ダンゴムシがはいっているんだっ
て。え、本当? 本当に食べられるの? それが食べられるんです。

★『ばばばあちゃん 絵はがきの本』
    さとう わきこ 作

◎ばばばあちゃんが絵はがきになりました。作者自身が絵本の名場面から選んだ19
枚と未発表の絵が1枚。ゆかいで楽しい絵はがきセットです。

★『ねずくんとらくんの さむい さむい さむい』
    たるいし まこ 作

◎池に落ちてカチンカチンに凍りついたねずくんをとらくんが温めようとしますが
…。仲良しコンビがゆかいな騒動をくりひろげる楽しい絵童話。

≪2月24日(水)配本≫
★『おばけさんとのやくそく』
    上田真而子作/梶山俊夫絵

◎まな子はトイレのおばけとどういう約束をしたでしょうか。日本の原風景ともい
える古き良き時代の暮らしぶりが、やさしい筆致で描かれています。


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《6》復刊絵本のご案内
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  今年も2月に、長らく品切になっておりました本を限定復刊いたします。今回は
5点の幼児絵本です。お早めにご注文ください。

≪2月10日(火)販売開始≫
★『こぐまのたろ』
    きたむら えり 作・絵

◎こぐまのたろとうさぎのなーちゃんは、山へきいちごをとりにいきました。そし
て、かごいっぱいとってうちへ帰ってくると……。

★『たろのえりまき』
    きたむら えり 作・絵

◎おかあさんに赤いえりまきをあんでもらったこぐまのたろは、うさぎのなーちゃ
んとそりすべりに出かけますが、風でえりまきをとばされて……。

★『たろとなーちゃん』
    きたむら えり 作・絵

◎雪がとけると、うさぎのなーちゃんは、おばあさんからもらったデージーの花の
種をまきました。苦労して育てたなえにやっと花が咲くと……。

★『ぞうさん』
    まど みちお 詩/中川李枝子 選/中川宗弥 絵

◎「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」など、幼い子どもたちに親しまれている、
まどみちおの詩を12編選び、中川宗弥が美しく楽しい絵本にしています。

★『ぼくのおじいちゃんのかお』
    天野祐吉 文/沼田早苗 写真

◎泣いた顔、笑った顔、しかられた顔、聞こえないふりの顔……千変万化する顔の
表情を、今は亡き名優加藤嘉さんをモデルに写真でとらえたユニークな絵本。



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