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シリーズと作者の紹介

 ヨーロッパが、まだつかのまの平和と繁栄をむさぼっていた1929年のこと、ブリュッセルのとある新聞社で、かけだし記者として働いていたジョルジュ・レミのもとに、ある日、突然の上司命令がくだりました。週に一度出すことになっている子供版のために、なにかおもしろい企画をたててくれというのです。
 そのころすでに「エルジェ」というペン・ネームで雑誌に漫画を発表していたレミ青年は、続きものの冒険漫画を連載しようと思いつき、さっそく描きはじめたのが、ニッカーボッカーをはいた少年記者とその相棒の白い犬の物語。当時まだできたての国だったソビエト連邦を舞台にしたその話は、子供ばかりか大人の読者までも夢中にさせ、それからというもの、彼は本業そっちのけで、この少年記者の物語を描きつづけることになったのでした。「タンタンの冒険」は、こうしてこの世に誕生しました。
 第2次大戦が終わると、エルジェは戦争中から手がけていた改訂版を発表、時代にふさわしい内容をたっぷりと盛りこんで、美しいカラー刷り絵本として生まれかわった「タンタンの冒険」は、本国ベルギーやお隣りのフランスはおろか、全世界の人々のあいだで爆発的な人気を呼びました。ストーリーのおもしろさ、アメリカン・コミックスとは一味ちがう欧風エスプリの深い味わい、そしてなにより綿密な観察と研究にもとづく事物の的確な描写が、科学の世紀を生きる人々の心を強くとらえたのです。
 「タンタン ソビエトへ」に続く作品の中で、タンタンとスノーウィは、南北アメリカ、アフリカ、インド、中国、中東、はては北極、月までも旅し、世界中をところせましとかけまわります。ふたりのめぐりあうその数々の冒険の中に、わたしたちは、テレビが生まれ、人が自由に空を飛び、あらゆる技術が飛躍的に進歩した、20世紀の生き生きとした歴史を、そのまま読みとることができるでしょう。
 タンタンとその仲間たちは、現在テレビ・アニメや、映画、CD、キャラクター・グッズなどでも大活躍。24冊ある「タンタンの冒険」は英語、ドイツ語、スペイン語、中国語ほか、世界中のことばに翻訳され、新しい世紀をむかえた今も、変わらず愛読者を獲得しつづけています。
エルジェ
1907年、ブリュッセル生まれ。1929年に、子ども向け週刊新聞に「タンタン ソビエトへ」を連載し大評判となる。その後、次々と「タンタンの冒険」シリーズを発表し、世界中の人々の間で爆発的な人気を呼ぶ。24冊あるシリーズは、多くの言葉に翻訳され読みつがれている。1983年没。

川口恵子
1953年福岡県に生まれる。東京大学教養学科フランス科卒業。「タンタンの冒険」シリーズ(福音館書店刊)の訳で好評を得ている。東京在住。

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