日々の絵本と読みもの

伸びた鼻毛は自由に生きることへの応援歌―絵童話『ふつうやない! はなげばあちゃん』

鼻毛が伸びすぎた「はなげばあちゃん」が主人公? ちょっと驚く方もいるかもしれません……。
でも実は、この鼻毛には作者・山田真奈未さんの思いがこめられているのです。

鼻の穴からもっさりと毛がはみ出し、その鼻毛を縦横無尽に伸ばせる「はなげばあちゃん」。ばあちゃんは「汚らしいねえ」「まったく困ったもんや」と周囲に噂されてもおかまいなしで、鼻毛を駆使して手に入れたごちそうを味わい、鼻毛ブランコで遊んだり、昼寝をしたり……自由気ままにすごしています。

そんなあるとき、ばあちゃんの鼻毛から美しい植物が生えだして「はなげグリーン」としてもてはやされ、町は観光で活気づきます。そして、その美しさとユニークな鼻毛で、世界中から称賛をうけるようになった、はなげばあちゃん。でも、なぜかばあちゃんは退屈そう……。奇想天外でナンセンスな物語に加え、全ページカラーの力強い絵が見どころの絵童話です。


このユーモラスな「はなげばあちゃん」が初めて登場したのは2008年ボローニャ国際絵本原画展でした。ユニークな絵が評価され、この展覧会で作品は入選し、パロル舎で絵本化されました。今回は絵童話として再登場しました。

「はなげばあちゃん」の生みの親、山田真奈未さんは、絵画教室の先生もしていて、絵を通して日々子どもたちと接しています。そんな山田さんがあえて「鼻毛」をテーマにした童話を描いたのは「なぜ、女の人は身だしなみを気にするのに、男の人はそうでもないのか?」といった、幼少期の疑問が根底にあったからだそうです。「鼻毛が出ているということは相当インパクトがあり、多くの人は気にするところ。でも、人からどう見られるかを全く気にしないで、自分の好きなことをしているはなげばあちゃんを見て“もっと自由に生きていいんだよ”ということを、子どもたちに伝えたい」という思いがあるそうです。

奇想天外なこの絵童話を読んで、子どもたちは人目を気にしないで、もっと自由に好きなことをしてもいいのかも……と、きっと気づいてくれることでしょう。

また、『ふつうやない! はなげばあちゃん』刊行を記念して、山田真奈未さんが絵画教室の講師をしている埼玉県・新所沢幼稚園でお絵かきワークショップを開催しました。子どもたちが想像のおもむくまま「はなげばあちゃん」を描きました。ワークショップのレポートも合わせてぜひご覧ください。

新所沢幼稚園 はなげばあちゃんワークショップ

桜の花が咲き始めた3月。春休みの小学生に向けたはなげばあちゃんのワークショップが開催されました。山田真奈未先生のはなげばあちゃんはすでに子どもたちに知られていて、大人気のキャラクターです。子どもたちはどんなばあちゃんを描いたのでしょうか。

山田先生「はなげばあちゃんをみんなで描きましょう!」

思い思いのはなげばあちゃんを描き始めました。はじめはおしゃべりをしながら……。イメージが膨らみ始めたら皆集中して取り組んでいます。

そして、それぞれの「はなげばあちゃん」が完成しました!
鼻毛が怪獣になったり、自由自在にお菓子を取りに行ったり……。「はなげばあちゃんの若い頃」という鼻毛が生えていない頃のばあちゃんを描いてくれた子もいました。

それぞれの想像を広げて「はなげばあちゃん」を描きました。子どもたちの中に広がったそれぞれの物語が、いつか大きくなった時に、自由に生きることを思い出すきっかけになってくれればよいですね。造形教室・つくる会のみなさん、山田真奈未先生、ありがとうございました!




「日々の絵本」月曜担当・H
入社14年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月2~3本鑑賞しています。

2018.05.21

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