日々の絵本と読みもの

体当たりで治療する姿がかっこいい! 『すいぞくかんの おいしゃさん』

体当たりで治療する姿がかっこいい!


『すいぞくかんの おいしゃさん』(「かがくのとも」8月号)

ライバルらしき相手が泳ぎだすと、横に並んでなにがなんでも追い越そうとするペンギン、冷たい水のはずなのに、温泉につかっているかのようにくつろいだ表情をするアザラシ……。水族館に足を運ぶと、普段は見ることのできない水の中の生き物の個性豊かな表情に出くわしたりして、行くたびに楽しい気持ちにさせられます。そんな生き物たちの生き生きとした姿は、水族館に勤務する人々の努力の賜物。今回は、生き物たちの生活を支える縁の下の力持ちの一人、水族館のお医者さんの働きを描いた絵本をご紹介します。

『すいぞくかんの おいしゃさん』の主人公は、水族館で働く獣医さん。生き物の体調管理や病気の治療はもちろん、新しい水槽の用意やショーへの出演までこなす、大忙しのお医者さんです。

お医者さんの一日は、館内のみまわりから始まります。朝の声がけをしながら、水槽の中の生き物たちが、いつもどおり元気に泳いでいるかを確認します。何事もなければ、えさの準備などに取り掛かるのですが、おやおや、飼育員さんからマダラエイの様子がおかしいとの連絡が入ってきました。

お医者さんは、ダイビングスーツを着て注射器を持ち、「ざぶん」と水槽に飛び込みます。マダラエイのしっぽには毒針がついていますが、お医者さんはひるみません。ヒヤッとする一瞬を乗り越えて、お医者さんは無事にマダラエイに注射を打つことができました。

絵本にはほかにも、腕をけがした赤ちゃんガメや肺炎になってしまったイルカなど、様々なけがや病気を患った生き物が登場します。そんな一匹一匹に対して、優しいまなざしを向けながら、的確な診断を下し、丁寧に処置を施してゆくお医者さんの姿は本当にかっこいい! 治療してもらった生き物たちの表情からも、お医者さんへの信頼が伝わります。

作者の大塚美加さんは、実際に水族館で勤務しているお医者さん。ジンベエザメの体調管理の方法や、イルカの熱の測り方など、専門家ならではの知識を分かりやすく描いているのが、この絵本の大きな特徴です。また、お医者さんの温かいまなざしや、献身的な治療によって徐々に元気になってゆく生き物たちの豊かな表情を、柔らかな色合いで表現した齋藤槙さんの優しい絵にも、ぜひご注目ください。

日に日に暑さが増す今日この頃。おひさまがカンカンと照りつける日には、ぜひ涼しい室内で『すいぞくかんの おいしゃさん』を開いてみてください。絵本を読んだあとに、ひんやりとした水族館に足を運んでみるのも素敵かも。お医者さんの優しいまなざしに思いを馳せながら巡ってみると、今までとは全く違った、生き物たちの生命の営みが見えてくるかもしれません。



「日々の絵本」金曜日担当・U
チームふくふく本棚のNew Face。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

※冒頭の写真は、サンシャイン水族館のサンシャインラグーン前にて撮影。

2018.07.20

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