ねこだってロングバケーションがほしい! 『ねこのオーランドー』
ねこだってロングバケーションがほしい!
『ねこのオーランドー』
オーランドーは、みどり色の目を持つママレード色のねこ。ある日、一家そろってキャンプに行きたいと思い立ちますが、ご主人から「おまえが留守にしたらネズミどもがどんな悪さをするか考えてごらん」と言って反対されます。それでもオーランドーはしぶるご主人を説き伏せ、めでたくお休みをもらえることに。
せっせとキャンプの道具をそろえ、オーランドーは、奥さんのグレイスと3びきの子どもたちを連れて、車に乗り込みキャンプに出かけます。途中の農家に寄ってミルクをもらったり、お弁当を食べたりしながら、キャンプをするのにいい場所を探し、川べりにぴったりの場所を見つけてテントを張ります。さあ、キャンプ生活の始まり! 川に行くと、オーランドーはひげの先だけが水にさわるように顔を突き出します。すると、魚が虫と間違えてひげに食いつくので、どんどん魚が捕まえられます。オーランドー流の見事な魚釣りです。
焼き魚のご飯を食べ終えたら、川で泳いだり、山登りを楽しんだり。さらに、村の郵便局に出かけてご主人に電報を出し、あたりの景色の写生を楽しみ、夜にはキャンプファイヤーで歌を歌います……。
オーランドーと家族が愉快にキャンプの日々を過ごす様子を描いたこの絵本、鮮やかな色彩でユーモアたっぷり、ぜんぜん古さを感じさせない絵本ですが、本国イギリスでは今から80年も前の1938年に最初に刊行された絵本です。作者キャスリーン・ヘイルさんは、学校では勉強しているよりも廊下で立たされていることのほうが多い問題児だったそう。でも、絵と作文の才能を認められて美術を学ぶようになり、やがて、自らの飼いねこをモデルにした、この『ねこのオーランドー』が人気となって大成功。その後、「オーランドー」の絵本シリーズは20冊近くも発表されているので、相当な人気だったのでしょうね。
ねこの絵本は数あれど、ママレード色でふくよかなオーランドーの存在感ときたら! じつは本のサイズも特大(ぴったりB4サイズです)で、表紙を見るだけでその存在感に圧倒されます。でもオーランドーの魅力は体の大きさだけにあらず。けっして威張らず、子どもたちにはいつも優しいおとうさん。雨の時はあやとりを教えてあげたり、山登りで疲れた子どもはリュックに入れて背負ってあげたりします。そして、家に帰ればきっちり仕事(ネズミを追い払う)もする、家庭と仕事を両立させる頼れるおとうさんなんです。ねこといえば、茶トラのふてぶてしいねこが好きな私にとって、オーランドーは理想のねこですが、それにも増して、おとうさんとして憧れの存在です(体型だけは似ているんですけれどね……)。
「日々の絵本」水曜担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。
※今回、『ねこのオーランドー』とあわせて、『しあわせな ふくろう』『わたしのおふね マギーB』も復刊されました。この機会にぜひおもとめください。
2018.09.12