作者のことば

作者のことば みやまつともみさん『のりたいな』

赤ちゃんから楽しめる『のりたいな』は、2012年に月刊絵本「こどものとも0.1.2.」で登場して以来、大人気の乗りもの絵本です。この度、ついにハードカバーになりました。『のりたいな』制作過程のエピソードと作品への思いが語られている、刊行当時の「作者のことば」をご紹介します。

『のりたいな』 みやまつともみ

 こども、特に男の子はどうしてこんなに乗り物が好きなのでしょう。自然に乗り物に惹かれていく様子は本当に不思議です。3歳になったばかりの息子も、飛行機に始まり、電車、バスなど乗り物全般大好きです。
 『のりたいな』は、ふだん生活の中で目にする機会の多い、働く車11台を選びました。登場する乗り物は全て、取材し、写真を撮りました。わたしは神奈川県の湘南、藤沢市に住んでおり、地元の路線バスやコミュニティバス、ごみ収集車を始め、郵便車、パトロールカー、消防車、宅配車など、多くを近隣の営業所で取材させていただきました。いずれも親切に対応していただき、藤沢消防署では、思いがけずはしご車に試乗、足をすくませながら地上22mの高さまで上がるという体験まですることができました。ミキサー車の取材に伺った会社、KYBさんでは、大きな鉄の板からミキサー部分であるドラムを作る工程など、社会科見学のように丁寧に案内していただきました。
 貼り絵は、和紙や包装紙など、ストックしてあるさまざまな紙の中から適した紙を選び、はさみで切って、のりをつけ、指と、細かいところはヘアピンを使って貼っています。よく質問されますが、カッターやピンセットは使っていません。ペンなどで描き加えることはせず、文字なども同じように普通のはさみで切って貼っています。貼り重なった紙の質感で、かたい印象の車が、優しく表現できていたらいいなと思います。
 身近な働く車、男の子にも女の子にも楽しんでもらえたら嬉しいです。

(「こどものとも0.1.2.」2012年5月号 折り込み付録より)


みやまつ・ともみ
1972年、神奈川県生まれ。東邦大学理学部生物学科卒業。ウミガメの生態研究、県史自然誌編纂、水族館勤務を経たのち、2001年よりイラストレーターとして貼り絵で動物、植物、生活まわりのものなどを雑誌、書籍などに描く。絵本に『なかよし だあれ』(「こどものとも0.1.2.」2018年6月号)『たべたいな』(「同」2009年7月号)『おなまえ なあに』(「こどものとも年少版」2015年7月号)『さわらせて』(アリス館)などがある。神奈川県在住。

 

2019.03.22

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