ゆうべのおもちゃ

ゆうべのおもちゃ 2 サルのお面

子どもとの時間を楽しみたいのに、公園に連れて行くことも、絵本を読むこともままならない……。そんな日々のすきま時間に、がんばらずに楽しめる手作りおもちゃを、毎月1つご紹介します。第2回は「サルのお面」です。

サルのお面


おもちゃ箱の中に、赤いセロハンを見つけたぴょん子が、それを顔に当てて窓の外を見ていました。ぴょん一兄ちゃんの工作の残りです。

小学生時代、半透明の下敷き越しに景色を眺めたものですが、あれは色がついて見えるというより、たくさんあった色が消えてしまうんですよね。光が当たっている部分ばかりがやけに強調され、とても不思議なものでした。

ぴょん子も、ところどころ日があたっているお隣の庭木に見入っていました。サングラスを作ってやろうかな。でも、セロハンはちょうど顔をおおっていて、ぴょん子の顔は真っ赤です。赤い顔といえばサル。ここはやっぱり、赤メガネというよりはお面でしょう。

ぴょん子からセロハンを奪いとり、サルっぽい顔の形にくりぬいた画用紙に貼りつけました。両耳のあたりから紙のバンドをつけて、ゴムでつないだら出来上がりです。ほら、おサルさんのお面だよ、つけてごらん!

あら、つけてみたら赤いのっぺらぼうになってしまいました。セロハンの色が濃いので顔が透けて見えないのです。サルに見えるように油性ペンでちょっと補足。目、鼻の穴、おでこのしわ・・・・・・ごめんね、ぴょん子、そのまま動かないでね。

しかし、描けども描けどもそれらしくなりません! サルの顔って、どうだったっけ。えっ、苦しい?もう取りたいって?

とうてい愛らしいおサルには変身させてやれないのでした。


堀内紅子(ほりうち・もみこ)
1965年、東京都生まれ。翻訳家。訳書に『ラバ通りの人びと』『三つのミント・キャンディー』『ソーグのひと夏』『わたしの世界一ひどいパパ』、絵を担当した絵本にくまとりすのおやつ(以上福音館書店)などがある。東京都在住。昨年、保育士の資格を取り、世田谷区の子育て支援拠点「おでかけひろば」で修行中。

※ 月刊絵本「かがくのとも」の折り込みふろく(2008年4月号から1年間連載)より転載。当時12歳の長男”ぴょん一くん”と3歳の長女”ぴょん子ちゃん”と一緒に楽しんだ手作りのおもちゃについて綴ったエッセイを、当時のままにお送りします。

2019.05.28

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