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「うみのおばけ」出没で、 真夏の浜辺は大騒ぎ! 『うみべのハリー』

「うみのおばけ」出没で、 真夏の浜辺は大騒ぎ!



『うみべのハリー』

ハリーは、黒いぶちのある白い犬。海は好きだけれど、暑い日のおひさまは苦手です。ある日、家族で海水浴にでかけますが、あいにくのカンカン照り。照りつける太陽にたまりかねて、ハリーは日かげを探すことにしました。

最初に見つけた日かげは、ビーチパラソルの下。けれどもパラソルの中は満員で、さっさと追い出されてしまいました。次は子どもたちの作った砂のお城に入ってみますが、こちらもお城を崩してしまい、大失敗。それならと、太ったおばさんのかげに隠れてみると、見つかったとたん「どっかへ いっておしまい!」と怒られ、追い払われてしまいました。日かげを探しているだけなのに、なんともかわいそう。

日照りのなか、長いこと歩いて疲れてしまったハリーは、ついに波打ち際に座り込んでしまいます。するとなんと、頭の上から「ざんぶりこ」と大波が。

波が去ると、ハリーのからだはすっぽりと海藻におおわれ、まるで「うみのそこから でてきた おばけ」のような姿になっていました。ハリーを目撃した人たちが口々に「うみのかいぶつだ!」と言いだし、浜辺は一瞬にして大騒ぎに。挙句の果てには、ハリーを「けのはえた おばけなまこ」と勘違いした警察官たちが、ハリーを捕獲して水族館送りにしようと画策しだして、絶体絶命のピンチに追い込まれます。さて、ハリーの運命やいかに……!?

ロングセラー絵本「どろんこハリー」シリーズのなかの一作です。『どろんこハリー』では、お風呂がいやで逃げ出し、どろんこのなかで遊んだせいで、誰にも気づいてもらえない憂き目にあうハリーですが、今回はなんと海藻! しかも、一生懸命に日かげを探していただけなのに巻き込まれる騒動とあって、なんだかちょっと気の毒な気持ちにも……。けれども、そんな読者の心配をよそに、どこまでもわが道をゆくハリー。

自分では何をしているかわかっているつもりなのに、周りにはなぜかなかなか伝わらない。そんなもどかしい経験はどなたにでもあると思いますが、特に子ども時代ってそんなことが多かったような気がします。この愛嬌のあるやんちゃなハリーが、長く愛され続けている理由のひとつは、知らぬ間に騒動に巻き込まれてゆくハリーの姿に、子どもたちが自分の姿を重ね、応援したくなるからかもしれませんね。

さてさて、ハリーは無事に「おばけ」の衣を脱ぎ捨て、おうちの人と再会できるのでしょうか。家族でハラハラ・ドキドキ、ときにクスリと笑いながら、お楽しみいただけたらと思います。



担当・U
チームふくふく本棚の2年目。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

2019.07.12

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