あのねエッセイ

今月の新刊エッセイ|名久井直子さん『100』

今回ご紹介するのは、鮮やかな写真とともに“100”をまるごと感じられる新刊『100』。小さな子どもにとって、少しイメージしづらい“100”という数字を、身近にあるものを使って目に見える形で楽しく表現した絵本です。あのねエッセイでは、作者の名久井直子さんが、身の回りにひそむ100、憧れの100、頑張って集めた100など、絵本作りの中で出会った色々な“100”について語ってくださいました。

いろんな100を見てみよう

名久井直子


100ってなんだかキリがいいけれど、一体どんな数でしょう? 友だち100人できるかな? って歌はあるけれど、みんなで勢揃いすることは、あまりないし、100人友だちをつくるのはとても大変。お風呂で数える100は永遠に終わらない長い時間のようで、途方もなかった記憶があります。

 今回の絵本では、そんな100というものを、ぱっと感じられるものにしたいなと思って、目に見えるいろいろな100を探して、並べて写真を撮ってみました。

 積み木1個ではできないお城も、贅沢に100個並べてみたら立派なお城になりました。輪ゴムは、ぐちゃっと100本まとめていれば小さいかたまりだけれど、きれいに並べればぐんと世界をひろげます。食べきれなさそうな100個の金太郎飴は、もともとは一本の長い飴でした。姿を変えて100は身の回りに潜んでいるのかもしれません。

 金魚を100尾飼ったり、スーパーボールを100個はずませたり、は難しいかもしれないけれど、実際にやってみたら、その迫力に、わたしはどきどきしてしまいました。ちょっと手の届かない憧れの100。そういえば表紙には風船が写っていますが、風船をたくさん持つのも、小さい頃からの夢で、それも叶えることができました。100個の風船を持っても、わたしの体は1ミリも浮かなかったけれど、心はうきうきと空に浮かんだような気がします。

 貝殻や、どんぐりは、がんばれば集まると思うので、たくさん拾って是非100個集めて数えてもらえたらなあと思っています(この撮影のために、がんばって拾ってくれた男の子がいます)。身近に感じてもらいたいものは、実際の大きさと同じ大きさで見られるように原寸で絵本に載せています。

他にも思いついたけれど絵本に載せられなかった100もたくさんあって、100匹の猫だとか、100個のスイカだとか、壮大なものはあきらめたのですが、そんなものでなくても、身の回りの石ころを拾ってみてもいいし(きっといろんな表情の石ころが集まって楽しいでしょう)、クッキーを食べるときに数えてみたりしてもいいし、お米を100粒並べてみたり(これは簡単にできそう)、シールを100枚貼ってみたり、どうぞチャレンジしてみてください。

 個数だけじゃなく、あやとびを100回とか、ウインクを100回とか、目に見えにくい100もあります。体験型の100とでも言いましょうか。そちらも是非発見してみてください。

 絵本の写真を見ながら、ひとつふたつ…と数えていくと、必ず100に到達します(金魚はむずかしいけれど、ちゃんといます)。100は100という単体ではなくて、ちいさな1の集合したものだということを、実感してもらえたら、とてもうれしいです。



名久井直子(なくい・なおこ)
1976年、岩手県生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。広告代理店勤務を経て、2005年に独立。ブックデザイナーとして、谷川俊太郎詩集『あたしとあなた』(ナナロク社)などを手がける。雑誌の連載記事をまとめた『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる 紙ものづくりの現場から』(グラフィック社)も。「ちいさなかがくのとも」の作品として『ない!』(井上佐由紀 写真/2019年9月号)がある。

2020.02.28

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