山脇百合子さん子育てインタビュー

山脇百合子さん 子育ての日々をふりかえる〈後編〉

『はじまりは愛着から』の挿絵を手がけ、『ぐりとぐら』や『そらいろのたね』など数多くの絵本の生みの親として、またフランス語翻訳者として知られる山脇百合子さん。山脇さんご自身も3人の子育てを終えたお母さんでもあります。後編ではご家族と本について、お話をうかがいました。

―父の読んでくれた、福岡弁の昔話―

私が子どもだった頃、父は仕事から帰ってくると「勉強したか?」とか聞かなくて「おまえたち今日はお母さんを手伝ったか?」って聞いてたの。母が体が弱かった時期があって、私は高校生の時も大学生の時も、心配だし手伝いはしないとだし、とにかく早くうちに帰りたかったのよ。母は岩波少年文庫をよく読んでいたの。父が夜寝る前に(山脇さんに)「昼間に読んだ本の内容を聞かせてくれ」っていうのよ。なかなか眠れなかったみたいでね。それで私もお昼に必死で読んで、夜、父に話していると母が「あら百合子さん、そこちょっと違うでしょ」なんて指摘するの。幼いころは父は絵本も読んでくれたのよ。『さるかに合戦』とか。福岡出身の父は、蟹や猿の台詞をお国言葉の福岡弁で読んでくれたわ。今になってみると、父からお国言葉をもっと何度も、よく聞いておけばよかったなぁって。もうかなわないわね。そこが残念。

―今は、子どもたちが新聞や本を読んでくれます―

子どもたちが小さい時には、よく絵本を読んだわね。姉、兄でそれぞれ3冊ずつで「わ、いっぱい」と思っていたら、まだ歩けない赤ちゃんの三女までが絵本を持ってきて。昼に夜に、ずいぶん読んだわ。息子はね、何かをお願いすると「けちじゃないよ ぐりとぐら」と言いながらやってくれたりするのよ。あとは瀬田貞二さんの作品は色々読みました。『げんきなマドレーヌ』の中の言葉はしばらく流行ったわよ。「電話がかかったわよ」って言ったら「ジー、トン、ジートン、ジージートン」なんていって、絵本の言葉っておぼえやすいのよね。そんな風にして、読んでやった絵本は覚えているみたい。今は、子どもたちが新聞や本を読んでくれます。今度長女が来たら『厄除け詩集』(井伏鱒二/講談社文芸文庫 刊)を読んでもらおうと思って用意しています。耳で聞くのってすごくいいのよ。本を読んでもらうと、お話の世界を倍楽しめる感じがするわね。

子育て中のみなさんへのメッセージ
―「お母さん」って話しかけてきたら、話を聞いてあげて―


私はね、自分が母親に育てられたようにしか、育て方がわからなかったの。だから「勉強しなさい」とは言われたことはなかったから、私も夫も言わなかったし……。子育てに、あまり欲がなかったのは良かったのかなと思います。つくづく思うのは、子どもが「おかあさん」って話しかけてきたら、話を聞いてあげて、ということです。前に電車の中で隣に座っていた子が「ねえ、お母さん」って話しかけたの。私はそれを見て「どんなに面白いお話が聞けるんだろう」ってわくわくしたんだけど、お母さんが返事をしないばっかりに、その子は話をやめてしまった。どんなに面白いお話があったかもしれないのに……、あのお話はどこに行ったのかしらって思うのよ。でもね、色々と気を遣いながら子育てをしてるけれど、結局はみんなすくすくと立派に育ってるわよね。だから、特別なことをしてあげるより、子どもたちをただかわいがるって、やっぱり大切かもしれないって思います。

 


東京に生まれる。上智大学卒業。絵本の絵の仕事に、「ぐりとぐら」シリーズ、『そらいろのたね』(以上、福音館書店)『木いちごの王さま』(集英社)など。童話の挿絵に、『いやいやえん』(福音館書店)など。ほかに、自作のお話に絵をつけた『そらをとんだけいこのあやとり』などがある。また翻訳の仕事として絵本『ペトロニーユと120ぴきのこどもたち』、単行本『ユーリーとソーニャ』(以上、福音館書店)などがある。東京都在住。

2017.12.19

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