日々の絵本と読みもの

ハイカラでべっぴんさん!! おはなはんの正体は?『きつねのおはなはん』

ハイカラでべっぴんさん!! おはなはんの正体は?

『きつねのおはなはん』

予想外のことがおこって何が何だかわからなくなることを「きつねにつままれる」といいますが、昔からきつねは人を化かす特技があるといわれています。今日は、きつねがハイカラなべっぴんさんに化けるユーモラスな絵本をご紹介します。

村のお寺に住んでいる、きつねのおはなはん。袴にブーツをはき、結った髪にはリボンの飾り。そして、パラソルを持って村中歩きまわるハイカラさんです。村人たちは「あんな まねをしたら、あかんで。わらいもんになるだけや」とおはなはんを避けていました。そんななか、ただ一人お寺のそばに住む「マンケはんのおっさん」が自分の娘をハイカラにしたいと、お寺に連れていきました。


おはなはんは、娘によみかきやお金の勘定を教えます。といっても、いきなり英語から始めたり、木の葉を「ぷわぷわ ぷいの ぷい」とお金にかえたり、何やらあやしげ。「おなごは あるく すがたが、たいせつであります」と、雪の中をしゃなりしゃなりと歩く練習をした翌日、娘は高熱を出してしまいました。あわてて病院に連れて行ったら、即入院。その夜、娘の病室に看護婦さんが入ってきて熱心に手当をしてくれました。翌朝、病室に残されたものは何だったでしょう。そしてお寺には、もう一つの秘密が……

このおはなはんが住んでいるお寺は「ぜんきょうじ」といいますが、実は作者の中川正文さん(1921-2011)の生家は、奈良県にある善教寺というお寺です。お寺の長男として生まれた中川さんは、10代の頃から創作に励み、「こどものとも」の創刊当初から作品を発表しています。ロングセラー絵本の『ごろはちだいみょうじん』は、いたずら好きのたぬきのお話ですが、こちらに出てくるお寺も生家がモデルとなっているそうです。

ユーモラスでどこか哀愁のある、味わい深いお話が多い中川さんの作品は、本格的な物語絵本を読みたいという方に特におすすめです。「ぼくは生まれつき狸と狐が大好きで」という中川正文さんの物語の世界を、ぜひお楽しみください。
 

2018.02.26

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