赤ちゃん絵本ができるまで

下絵を描く③|『まるくて おいしいよ』の作者・小西英子さんに聞きました

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こちらははじめに描いた、卵焼きをつくっている場面です。まな板がまっすぐに描かれていて、卵がございますといった感じで全然面白くない。卵の断面を上からみている感じ。もっと動きを出さなくちゃ、お料理進行中なんだから!と思って描いた絵が次の絵です。


これいいと思いません? まさにお料理進行中でしょう? 描いている時、私はちょっと得意になりました。ところが卵を焼いている絵の動きがありすぎて、肝心なお弁当箱に目がいかないんですよ。それはやっぱり絵本としてバランスが悪く、本当に残念だったのですが、ぼつにしました。


そこで次に描いた絵がこちらです。こちらは本番に使った絵です。まな板をななめに描くことによってこのあたりもちょっと動きを出しました。それでこの画面が美しくなりました。今焼きたてでほわほわの卵焼きをトンと切っただけ。ふわふわの卵焼きをトントンと切っていますよという最中を表したつもりです。

絵本の最後は、大技を決めてフィニッシュ!
もうひとつ、私がこの絵本をつくる時に心がけていたことがあります。それは絵本の最後のページにいくにしたがってだんだん気持ちが高まり、最後に大技が決まってピタッと着地する。まるで体操のように盛り上がってフィニッシュという形にしたいと思っていたんです。

はじめにこの絵本で考えたフィニッシュは、最後のページは真っ白なご飯の上に真っ赤な梅干しと黒いゴマをぱっとかけて、ごはんの表情をがらっと変えてフィニッシュという形にしようと考えていました。だけどこのラスト、保育園のリサーチによると、2・3才の子どもって梅干しがすっぱすぎてあまり好きじゃないというお子さんが多かったんです。だいたい3人に1人の割合。それほど多くのお子さんが苦手なものがラストページに出てくるのでは、ちょっと絵本として悲しいでしょう。だからなくなくアイデアをやめました。

そこで発想の転換をしなくてはと思いました。最後にご飯の上にぱっと何かをのせて終わりにするというのをやめにして、お弁当なんだから、最後に食べるものを登場させようと。と、なるとデザートですよね。そこでできた絵がこちらです。


真っ赤なイチゴを登場させ、色が重なるプチトマトはやめました。ポテトサラダ、ごま……実際に絵本で描いたゴマは、このように地味におとしています。その次にイチゴをぱっと描くことで、イチゴのおいしさをひきたてているんですね。これでやっと決まったなと思いました。
最後のページには、「おいしそうでしょうこのお弁当、絵本でお弁当を食べてね」っていう思いを込めて、大きな大きなお弁当を描きました。


 

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2018.04.06

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