日々の絵本と読みもの

一度行ったら帰りたくなくなる、雲の上のかみなりの国! 『だるまちゃんとかみなりちゃん』

一度行ったら帰りたくなくなる、雲の上のかみなりの国!


『だるまちゃんとかみなりちゃん』

かみなりがやってくる! そういわれたら、みなさんはどんなものがやってくるところを想像しますか?3歳頃の私の頭の中では、サンタクロースよろしく袋を背負ったひげもじゃの鬼が、サンタクロースらしからぬガハハという笑い声をあげながら子どものおへそを片っ端から摘み取って、袋にぱんぱんに入れてやってくるイメージがはじけていたように思います。我ながらなかなかの想像力ですが、おかげでその後数年、かみなりと聞けば必死におへそを押さえて布団に飛び込むという運命を背負うことになりました。

そんな私を、恐怖から解き放ってくれたのが、かこさとしさんの絵本『だるまちゃんとかみなりちゃん』。どんなかみなり嫌いでも、いつの間にか夢中になって見入ってしまう、みどころ満載のかみなりの国を描いた一冊です。かみなりが多くなりがちなこの季節に、みなさんが笑顔で過ごせるようにとの願いを込めてご紹介いたします!

ある雨の日、傘をさしてお散歩に出かけた、だるまちゃん。するとあれれ、空から丸くて変なものが落ちてきます。びっくりするまもなく、小さなツノをはやしたかみなりちゃんまで真っ逆さまに落ちてきました。

かみなりちゃんは、落ちたはずみで木に引っかかってしまった丸くて変なものをとってほしいと、だるまちゃんに頼みます。よしきたと、手持ちの傘であれこれ試してみるだるまちゃん。けれどもなかなかとれません。あげくのはてには、大事な傘まで引っ掛けてしまい、どうしたものかと困っているところへ、かみなりちゃんのお父さんのかみなりどんが、雲にのってやってきました。

かみなりちゃんに親切にしてくれたお礼にと、かみなりどんはだるまちゃんを雲に乗せてかみなりの国へと招待してくれるのですが、この世界がとにかく面白い! 雲の車が電気の力を使ってびゅんびゅん飛び交う様子は、まるで映画に出てくる未来都市のようだし、立ち並ぶビルからご婦人のさしているオシャレな日傘まで、この世界で目に入るものにはことごとくかわいいツノがついているのです。

そしてなによりも素敵なのは、街にビリビリみなぎるエネルギーを活用して、にこにこ楽しそうに生活している人々の表情。3歳の私が想像していたような、ひげもじゃかみなりの恐ろしい姿はどこにもみあたりません。おへその山もありません。かみなりの世界で遊ぶだるまちゃんの嬉しそうな顔を眺めているうちに、かみなりが怖かったこともすっかり忘れて、あの雲の隙間からかみなりちゃんとかみなりどんが迎えにこないかなぁなんて、想像したことを思い出します。

最後に、空から降ってきた丸くて変なものや、かみなりちゃんの服装にもご注目。実は、絵本の中には夏休みの楽しみも満載なのです。けれどもこちらは絵本を読むときのお楽しみ。暗い雲が立ち込める日には、晴れ渡る雲の上の世界を想像しながら、絵本のページをめくってみてください。

現在、神奈川県の川崎市市民ミュージアムにて、かこさんの創作活動を振り返る「かこさとしのひみつ展-だるまちゃんとさがしにいこう-」が開催されています。かこさんに「ありがとう」のメッセージを届けるコーナー「いつまでも いつまでも かこさとしさん」も設けられています。ぜひ足をお運びください。詳しくはこちらから。



金曜担当・U
チームふくふく本棚のNew Face。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

2018.08.03

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