日々の絵本と読みもの

ハロウィンの晩、友だちのために大冒険!『ジェニーのぼうけん』

ハロウィンの晩、友だちのために大冒険!

『ジェニーのぼうけん』

 ジェニー・リンスキーは、小さな黒いみなしごネコ。
 やさしいご主人キャプテン・ティンカーに拾われていっしょに暮らしています。キャプテンに守られての生活は平和で幸せだけれど、ご近所のネコの集まり「キャットクラブ」に入りたいジェニー。でも、キャットクラブに入るためには、なにか特技を披露して、会員にみとめてもらわなくてはいけません。はにかみ屋で引っ込み思案なジェニーは、自分にはなんにもできないとしょげていましたが、意外な特技、スケートの実力が認められて、晴れてキャットクラブの会員に。
 それからは、乱暴者のネコを懲らしめたり、パーティーでキャプテンに教わったダンスを披露して人気者になったりと、自らの勇気と行動ですこしずつ成長してゆきます。(第1巻『ジェニーとキャットクラブ』)


 さて、今夜はハロウィンの晩。美しいペルシャ猫のマダム・バタフライがコンサートを開いて、ぞくぞくするような魔女の調べを鼻笛で吹いてくれることになっていました。ところがマダムは、うっかり窓枠から落ちて怪我をしてしまい、大事な鼻笛もなくしてしまいます。ジェニーが鼻笛を発見したものの、誰かがマダムのもとにそれを届けなくてはいけません。通り道には恐ろしい犬たちがうろついています。その役目を引き受けたジェニーは、犬たちに捕まらずに、無事にマダムに鼻笛を届けられるでしょうか? ジェニーの冒険が始まります……。

「黒ネコジェニーのおはなし」シリーズは全3冊。1冊に2つから3つのお話が入っています。お話のおもしろさもさることながら、作者のエスター・アベリルさんが自ら描いた挿し絵も魅力的。キャプテンが編んでくれた赤いマフラーを首に巻くジェニーの姿がチャーミングで、多士済々なキャットクラブのメンバーもユーモアたっぷりに描かれています。それもそのはず、アベリルさんは、若い時はアメリカの地元の新聞に漫画を描いていたそうですよ。


 アベリルさんは、その後大学を出てしばらくののちパリに渡り、パリで児童書の出版活動を始めます。編集者としてフェードル・ロジャンコフスキーさん(のちに、アメリカの権威ある絵本賞・コルデコット賞も受賞した絵本作家。福音館でも数作の作品を刊行していました)を見出し、デビュー作を世に出したというから、これまた驚き。1941年に帰国し、出版の仕事と、公共図書館での仕事をするかたわら書き始めたのが、この「黒ネコジェニーのおはなし」シリーズ。またたく間に子どもたちに大人気になって、アメリカではシリーズ全体で13冊も刊行しています。

 作家、画家、そして編集者としても活躍したアベリルさんの、類まれな才能の集大成といえる作品です。にぎやかなハロウィンの夜、眠りに向かう前には少しゆったりとした気持ちで、ぜひジェニーのお話をお楽しみください。


「日々の絵本」水曜担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。

2018.10.24

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事