日々の絵本と読みもの

世界中の母親たちを励まし続ける一篇の詩『今日』

世界中の母親たちを励まし続ける一篇の詩

『今日』

子育てしていると、毎日があっという間ですね……。子どもの世話に家事、仕事……、今も昔も親がやることはたくさんあります。自分はちゃんとできているのだろうか? と立ち止まって悩むこともしばしばあるのではないでしょうか。かくいう私も、ちらかった部屋を見てため息が……。時短料理を作りながら、もっと子どもと丁寧に向き合わなくては……と落ち込むことも、よくあります。

そんな忙しいお母さんの気持ちにそっと寄り添ってくれる1冊の本『今日』をご紹介します。『今日』は、赤ちゃんを育てているお母さんに向けて書かれた英語の詩を、子育てエッセイを数多く手がけてきた、詩人・伊藤比呂美さんが訳した本です。

「今日、わたしはお皿を洗わなかった ベッドはぐちゃぐちゃ……」
床に落ちた食べかす、掃除していない窓ガラス……。「人に見られたら なんていわれるか」「いったい一日 何をしていたのかな」と、気にしてしまうお母さん。
けれども、その日一日、自分が子どもとしたことを思いうかべます。かくれんぼをした、ブランコをゆすった、歌をうたった、眠るまでおっぱいをやっていた……。そして、お母さんは「赤ちゃんをいつくしんでやれているのなら、それで大丈夫」という、大切なことに気づいていきます。


『今日』は、元々ニュージーランドの子育て支援施設の壁に貼られていた“Today”という詩で、よみ人知らずのまま、ネットの口コミで英語圏に広がっていった詩なのだそうです。日々の子育てに追われ、大切なことを見失いそうになった親たちが、この言葉に励まされ、広がっていったのではないでしょうか。本書には、柔らかな筆致で親子の様子を描いた下田昌克さんのカットが添えられ、まるで1冊の絵本のように読む人の心を温めてくれるでしょう。

いつでも手に取れるコンパクトなサイズの本で、お母さんになった(本を読む時間のない)方へのプレゼントにもうってつけの1冊です。お父さんになったばかりの弊社社員が、理想と現実のギャップに悩む奥さんに「いっしょにがんばろう」というメッセージをこめて、この本を贈ってよろこばれたそうです。他にも「おばあちゃんからプレゼントされてうれしかった」というお母さんからのおたよりも届いています。

「わたしはちゃーんとやったわけだ」という言葉が、子育て中のお母さんに届きますように……。


「日々の絵本」担当・H
入社15年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月2~3本鑑賞しています。

2019.05.10

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