日々の絵本と読みもの

登ろう、登ろう、険しい道をどこまでも 『おとうさんやま』

登ろう、登ろう、険しい道をどこまでも

 『おとうさんやま』(「こどものとも年中向き」2019年6月号)

子どもがふたり、手をつないで歩いていると、目の前に山がありました。
「登ってみよう」「そうしよう」……ふたりは山を登り始めます。
まずは、「つるつる石」を渡り、「もじょもじょの坂」をよいしょよいしょ。坂の途中の「はげちょろ岩」ではちょっとひと休み。

さらに先へ進むと、そこには「落とし穴」が! 落ちないように気をつけて、「ひらひらの池」を泳いで渡り、最後は険しい「ちくちくの崖」をよじ登り「でこぼこの壁」を進んで……さあ、このぼさぼさ山のてっぺんまで、無事に登れるでしょうか?

タイトルと見開き場面の様子を見て、これはもしや……と思われた方、正解です。
そう、じつはこの山は、「お父さん」。
Tシャツと半ズボンで、おへそを出して寝ているお父さんの姿を山に見立てて、つま先から登り始め、頭のてっぺんへと向かう、ちょっと奇抜な山登りの絵本。月刊絵本「こどものとも年中向き」2019年6月号として刊行されています。

考えてみたら、お父さんって、ごつごつしていたり、あちこちぼさぼさだったりしていて、なかなか登りがいがありそうですよね。この絵本に登場する「おとうさんやま」を解説すると、「つるつる石」は足の爪、「もじょもじょの坂」は、ぼうぼうのスネ。「はげちょろ岩」はひざ頭、「落とし穴」は、もちろんおへそです。「ひらひらの池」はしわだらけのTシャツのお腹、そして、「ちくちくの崖」は、無精ひげのアゴ、「でこぼこの壁」はまぶたと眉毛。

リアルに考えれば、絵本で登山をするふたりの子どもは身長が10センチぐらいのこびとになってしまうけれど、そこは想像力で味わう絵本ならではの楽しさ! 絵本を読んでもらう子どもも、はらはらどきどき、不思議な山登りの気分を味わうことでしょう。そして絵本では、下山の途中で「ふたつのほら穴」をのぞいて、たいへんなことが起きてしまいます……。何が起きたのかは読んでのお楽しみ!

親子で絵本を楽しんだら、お父さんの体を山に見立てて遊んでみたくなることうけあいです。この絵本に登場するお父さんはガッチリと締まった体格だけれど、お父さんによっては、お腹にもうひとつ大きな山があるかもしれないし、「もじょもじょの坂」が、つかまりどころのない「つるつるの坂」の方もいると思います。それぞれのお父さんを自由に見立てて、スキンシップの醍醐味を!
また、「おとうさんやま」だけでなく、反対に子どもを山に見立てて指先で登ってみてもいいし、「おかあさんやま」に登ってみるのも、山の形状や登山道が違っていて楽しいかも。ご家族でいろいろな登山を楽しんでみてくださいね。


「日々の絵本」担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。

2019.06.12

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