あのねエッセイ

特別エッセイ|千葉聡さん『カタツムリ 小笠原へ』

6月の新刊『総天然色自然科学漫画 カタツムリ小笠原へ』は、子どもたちを進化学の入り口へと誘う1冊です。小笠原のカタツムリを長年研究してきた著者の千葉聡さんから、作品をより深く理解できるエッセイが届きました。コマツシンヤさんの書き下ろしイラストとともに、お楽しみください!

かわりゆくカタツムリの楽園より

千葉 聡


小笠原のカタツムリ――とても愛らしく、コマツシンヤさん描くマイマイ・キャラそのものです。彼らの何百万年もの歴史は、まさにファンタジー。天敵のいない楽園での生活は、きらめくように多彩で、平和でのどかな夢の世界です。

でも、いま、この何百万年とつづいてきたカタツムリたちの夢の世界は、残酷な現実に直面しています。
島にやってきた人間たちが、世界をすっかり変えてしまいました。彼らは、次々と恐ろしいエイリアン―もともと島にはいなかった外来生物を連れてきたのです。

ニューギニアヤリガタリクウズムシ、ネズミ……。外来生物たちは、カタツムリたちを次々と襲いました。二十年前まで、たくさんの小笠原固有種のカタマイマイで賑わっていた父島では、恐ろしい天敵にカタツムリたちはことごとく食い殺され、林の中は無数の死殻で覆われたのです。今ではそれも白く朽ち果て、どこかに消えてなくなりました。

本書を通して、カタツムリたちの楽しくて、魅力いっぱいの進化の話だけでなく、そんな悲しい現実にも、皆さんが目をむけて、彼らを救い出す手立てをいっしょに考えてくださるとよいのですが。

「ところで……、カタマイマイさんのカタって、どうゆう意味ですか? 気になって夜も眠れません」
はい。ずばりお答えしましょう。この絵本を読んでください。そうするとわかります、たぶん。



千葉 聡(ちば・さとし)
1960年東京に生まれる。東北大学・大学院生命科学研究科教授。大学院修士課程でカタマイマイに出会い、その不思議な進化に興味を抱き、研究に着手。それ以来小笠原諸島のカタツムリの謎を解くべく、研究に取り組んできた。専門は進化生物学と生態学。小笠原を出発点に研究を始めて以降、北はシベリア、南はニュージーラ ンドまで、世界中のカタツムリを相手に研究を進めているが、小笠原には毎年必ず戻ってきて、新しい発見に努めている。子どものころは、(学校の勉強はほどほどに)野山をかけめぐり、いろいろな生きものを見たりつかまえたりしてすごした。そうしてすごした時間が、研究の一番の礎になっている。子どもにむけた出版は本作がはじめて。

2019.06.28

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