あのねエッセイ

特別エッセイ|共田鍾貴先生「“ねむたくない” も 受け入れてみませんか?」〜『ねられん ねられん かぼちゃのこ』刊行によせて〜

おやすみなさい絵本の新定番『ねむたい ねむたい』の姉妹作、『ねられん ねられん かぼちゃのこ』が刊行されます。「ねられん」と主張するかぼちゃの子が眠るまでの、お月さんとのやりとりが楽しいお話です。
日々、「ねられん」子どもたちとお昼寝の時間を過ごしている保育園の先生に、おやすみなさいの絵本について語っていただきました。

“ねむたくない” も 受け入れてみませんか?

共田鍾貴

「子どもたちの“ねむたい瞬間”が、浮かび上がって見えればいいのに……」

外でいっぱい遊んだはずなのに、お昼寝の布団の中で目をキラキラさせている子どもたちを見て、保育士として長く子どもたちと関わっていても、そう思うことがあります。

「まだねたくない」と、顔に書いてある時は「寝るのがもったいない!」と思っているのかも知れません。しかも、大人の気持ちや行動に子どもは敏感で、早く寝かそうと少しでも背中を「とんとん」するスピードが早めようものなら、あっさり伝わってしまうものです。

保育園では、お昼寝前に絵本や素話を読んでから布団に入ります。これまで、私にとって乳児に読む、寝る前の絵本ナンバーワンは『おやすみなさい コッコさん』でした。「まだねないもん」と、返すコッコさんの言葉を、だんだん小さくゆっくり読んでいき、おしまいに向かうと、なんともいえないゆったりした時間が流れ「おやすみなさい」と私もゆったりした気持ちで、子どもたちに声をかけられます。絵本が寝る雰囲気に導いてくれている気がしています。

コッコさんと同じくらい頼りにしている絵本のシリーズもあります。それが、赤ちゃん向きの『ねむたい ねむたい』、2才くらいの子に向けた『ねられん ねられん かぼちゃのこ』です。

「ねむたい」「ねられん」と、子どもたちとの攻防を思わせるタイトルの2冊。共通しているのは、わらべ歌のようなリズムのゆったりしたことばです。『ねられん ねられん かぼちゃのこ』で、お月さまがかぼちゃの子に語りかける「はやくねなさ~い」と伸ばす部分をはじめ、優しく読んでいくと、ゆったりした時間が流れる気がします。間違っても「早く寝なさい!」の勢いではなく、です。

「もうちょっと遊びたい」と布団に入らずにいた、2歳の男の子と『ねられん ねられん かぼちゃのこ』を読んだ時のことです。ページをめくるたびに「かぼちゃバイバイ?」などと、絵を指さしながら質問を繰り返していました。読み終わった後に「絵本を読んだから、はやく ねなさ~い」と伝えると、「はーい」とあっさり布団の中へ入っていきました。

「寝る時間だから」と、一方的に大人の思いを押し付けるのではなく、「寝たくない」という子どもの思いを、絵本を読んでちょっと受け入れたことで、頑なだった気持ちが緩み、最後の「はやく ねなさ~い」のことばも、すんなり受け入れられたのかもしれません。

私も子どもの頃のお昼寝後、目を覚ました時に母のいない瞬間が何とも淋しくて嫌だったので、子どもたちがまだ寝たくないという気持ちはなんとなくわかるのです。しかし、子どもが寝た後に始まる家事と、それを終える事でようやく訪れるほっとできる時間は、大人になってみないとわからないもの……。

まさに、親の苦労子知らずではありますが、おやすみなさいの絵本を読んで、皆さんも子どもの頃の寝たくなかった気持ちをちょっとでも思い出してみてください。少しでも肩の力が和らげば、そんな気持ちが子どもに伝わり、コロッと寝てしまうかもしれませんよ。

共田鍾貴
社会福祉法人 豊川保育園
としま みつばち保育園 園長
三人の子どもの父親で、寝かしつけ時に『ありのフェルダ』読むものの、子どもが次を気にしてしまい、寝かしつけに失敗した経験をもつ。

2020.09.01

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