日々の絵本と読みもの

カブトムシの幼虫飼育のヒントに!『カブトムシの音がきこえる』

カブトムシは土の中でもすごかった! 幼虫の知られざる土の中の暮らしにせまる

『カブトムシの音がきこえる』

皆さん、カブトムシと聞いて思い浮かべるのは、立派なつのをはやした大きなオスの成虫ではありませんか?
でも、実は成虫の姿で過ごすのは、約1年のカブトムシの一生のうち、わずかひと月ほど。それ以外の時期は「地面の下でひたすら腐葉土を食べてすごしている」……と、図鑑や本などには書いてあります。では、カブトムシの幼虫たちは11か月もの長い時間を、地中でどんな風にくらしているのか? ずっと腐葉土を食べ続けているの? 天敵はいる? などなど、地中での幼虫の暮らしぶりを生き生きと描く、これまでにないカブトムシの本が登場しました。


カブトムシの幼虫を育てたことのある方も多いかと思います。我が家でも、昨夏、息子の友だちから幼虫2匹を譲り受けました。「どうやってお世話するの?」「土が減ったら少し補充、うんちは捨てて、霧吹きで水をかけるだけだから!」というざっくりとした友だちの説明を受けて幼虫を自宅に迎えると、確かに土が減っていくだけ……そして幼虫2匹はなんだか寄り添いながらどんどん大きくなっていきます。「なかなかさなぎにならないけど、これで大丈夫なのかな?」「急に土が減らなくなったけど…」などふと疑問に思った時には、ぜひこの本をひらいてみてください。幼虫の土のなかでのくらしぶりがよく分かり、成長がさらに心待ちになる、幼虫飼育のヒントにおすすめの1冊です。

文章を担当された小島渉さんは、カブトムシ幼虫の最先端の研究にあたり、様々な謎を解き明かしている若き研究者です。そしてこの本には、菌類、生態など、様々な分野の第一線の研究者の方々が監修者として力をかしてくださっています。そんな本格的な内容ですが、廣野研一さんが描くリアルながらもほのぼのした絵と幼虫たちがいろいろなセリフを話す構成で、子どもたちにも読みやすく理解が深まります。

2021年に夏休みの自由研究で「日本のカブトムシは夜行性」との定説を覆し、その成果が米国の生態学専門誌「エコロジー」にも掲載された当時小学6年生の柴田亮さんも、じつは、月刊誌刊行時この作品の愛読者だったそうです。

カブトムシが好きな方はもちろん、幼虫を育てたいと思っている方にはぜひ読んでほしい1冊です。

担当A
最初は幼虫にさわることができなかった子どもたちですが、だんだん慣れてきて、長男は触れることができました。

写真:東京大学大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 応用昆虫学実験室より
 

2021.05.21

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