作者のことば

作者のことば 小西英子さん『ピッキのクリスマス』

クリスマス・イブに、木の人形ピッキが繰り広げる大冒険『ピッキのクリスマス』は、2011年12月、月刊絵本「こどものとも」で刊行され、たくさんの子どもたちを魅了しました。実はこのお話の主人公、ピッキにはモデルとなった人形がいます。月刊絵本刊行当時、小西英子さんの「作者のことば」には、ご自身がクリスマスに込めた思いや絵本制作のエピソードが書かれていました。今回、ハードカバー化にあたり、モデルとなったピノッキオ人形と一緒の小西さんのお写真とともにご紹介します。

クリスマスの旅を絵本に

小西英子


もうすぐクリスマス・・・・・・。部屋にツリーを飾ったら、きゅうに気持ちが華やいできました。私は小さいころからクリスマスが大好きで、おとなになった今でも大好きです。そんな私が子どものころからずっと憧れていたのが、本場ヨーロッパのクリスマス。その憧れはずっと消えずに残っていて、いつか本場を体験したいと願い続けていました。そしてようやく夢が叶い、ウィーン、バイエルン、アルザスなどのクリスマスに行きました。石造りの古い街並みを舞台に、長い伝統と人々の熱い思いに支えられたクリスマスは、「さすが本物!」と圧倒される迫力と幻想的な美しさに満ちています。街中にイルミネーションが輝き、広場にはクリスマスマーケットの小屋が並び、人々は真剣な表情で商品を見つめ・・・・・・まさに夢のような世界でした。

印象深いクリスマスの旅を重ねるうちに、その素晴らしい世界を絵本に描きたい、と強く思うようになりました。主人公に選んだのは人形のピッキ君です。ピッキのモデルは、私のアトリエの机の上にいるピノッキオ人形です。もう20年ほど前にローマで買って、日本に連れて帰ってきました。それ以来ずっと、頑張っているときも、へこんでいるときも、いつもいつも私を見守ってくれています。この長年の友だちをいつか絵本に登場させたいな、とずっと思っていたので、今回の作品の主人公になってもらうことにしました。

クリスマスの夜は不思議なことがおきる特別な夜です。だからピッキにも不思議な体験と特別な出会いをしてほしい、そう思ってお話を作りました。どうか皆さんにも、素敵なクリスマスが訪れますように・・・・・・。


(「こどものとも」2011年12月号 折り込みふろくより)

小西英子

1958年、京都市生まれ。京都市立芸術大学卒業、同大学院(日本画)修了。絵本に『サンドイッチ サンドイッチ』『おべんとう』『カレーライス』『のりまき』『まるくて おいしいよ』『スプーンちゃん』『みやこのいちにち』『めん たべよう!』『パパゲーノとパパゲーナ』『うりひめとあまんじゃく』(稲田和子再話/「こどものとも」1991年11月号)『ケーキ』(「こどものとも年少版」2020年4月号/以上、福音館書店)、『きょうはクリスマス』(至光社)、『うばのかわ』(岩波書店)など。さし絵に『小公子』『小公女』(ともに岩波書店)など。大阪市在住。

2021.12.03

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