あのねエッセイ

特別エッセイ|島田拓さん『アリのかぞく』

アリは子どもたちにとても身近な虫ですが、他の多くの虫とは違い、卵を産みっぱなしにせず、巣の中で家族が協力して卵や幼虫の世話をして暮らす昆虫です。そんなアリの高度な社会性を捉えた絵本『アリのかぞく』は、2017年に月刊絵本「かがくのとも」で刊行され、大きな反響がありました。
このたび、本作のハードカバー化を記念して、文章を書かれた島田拓さんに特別エッセイをお寄せいただきました。島田さんは、アリに関する著書多数の昆虫写真家。さらに、アリに特化したペットショップの代表でもあり、おそらく世界の誰よりもアリを飼育観察し続けている方です。ぜひ、絵本と一緒にお楽しみください。

身近なアリの、驚きの暮らし

島田 拓


幼い子どもたちが、虫や自然に興味を持ったとき、最初に目につきやすい昆虫のアリ。
皆さんも子ども時代、巣穴から出てくるたくさんの働きアリの姿や、大きな食料を仲間と協力して運ぶ様子などを観察したことのある方も多いのではないでしょうか?

私にも3人の息子がいるのですが、現在10歳になる息子は、2歳のころから公園に行くたびに、アリやダンゴムシなどの小さな生き物に興味を持ちはじめました。そのうち、保育園に行く前とお迎えの後は公園で虫探しをするのが日課となり、どこへ行くにも虫かごを持ち歩き、見つけた虫を持ち帰って飼育もしました。
帰宅すると「この子のおうちを作るんだ~」と言いながら、楽しそうに拾ってきた石や木の枝などを並べたり、キレイな花で飾りをつけたりして、その中に虫を入れてエサを与えて育てていました。
普段、身の回りのことや食事作りなどは親にしてもらう幼い子どもが、自分より弱く小さな生き物に優しく接して大切に育てる姿を見ていると、親としてはとても嬉しく、同時に息子の心の成長を感じたものです。

さて、アリは子どもにも親しみがあり、身近で暮らしているので人目につきやすいのですが、実は普段私たちが目にするのは、巣から出てくる一部の働きアリだけです。
どのようにして、アリは巣をつくるのか? そして、巣の中ではどんな暮らしをしているのか? アリの暮らしには見えない部分がとても多いのです。そして、そんな見えない部分にこそ、アリの本当の魅力や、驚きや発見が隠れているのです。
このような、隠れた生態と言うのはアリに限った話ではなく、全ての動植物にも言えることで、興味を持って意識して見ることで、今まで見えなかったものが見えてくるのです。
絵本『アリのかぞく』を通して、たくさんの子どもたちにアリの暮らしを知ってもらい、さらにアリだけではなく、身近に暮らす虫や植物、それらが暮らす自然にも興味を持ってもらえたらと願ってこの絵本を作りました。

今回の絵本で主役となるアリは、日本で一番大きなアリのクロオオアリです。
街中の公園でも見ることができるアリですが、暮らしていくにはある程度自然が残っている必要があり、木や草の少ない公園では数が減ってきています。クロオオアリのことを知ってもらい、公園で見つけたときには大切に見守ってもらえたら嬉しいです。
また、アリはとても種類の多い昆虫です。日本だけで約300種ものアリが生息していて、街中の公園でも30~40種ものアリを見ることができます。それぞれ見た目も暮らしも異なりますので、この絵本を読んでアリに興味を持った方は、公園や野山に行った時には、ぜひ他のアリも観察してみてください。
きっと、今まで知らなかった小さなアリの驚きの世界が広がっているはずです。


島田 拓(しまだたく)
1981年東京都生まれ。幼い頃から、虫や動物の生活に魅せられ沢山の生き物を飼育。ペットショップや動物園で勤務の後、2001年にアリのペットショップAntRoomを開業。アリの素晴らしさを知ってもらうために日々活動中。著書に『アリとくらすむし』(第62回課題図書・ポプラ社)『アリの巣のお客さん』『アリのくらしに大接近』(あかね書房)など。現在も毎日生き物にまみれて暮らす。「情熱大陸」「又吉直樹のヘウレーカ!」「香川照之の昆虫すごいぜ!」「タモリ倶楽部」「月曜から夜ふかし」などのテレビ番組にも出演。

2022.04.06

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