学校図書館だより

【エッセイ】子どもを変えるのは、「子ども」|白坂洋一さん

子どもを変えるのは、「子ども」

白坂洋一

 「こうたくんが選んでいた本、ぼく、読んだよ。おもしろかった!」「それなら、わたしも読んだ!」
1冊の本を囲んで、子どもたちの会話がはずみます。

 私の学級では、子どもたちがもっと読書好きになることをねらいとして、「学級文庫づくり」という活動を取り入れています。学校図書館で、教師もいっしょにおすすめの本をひとり1冊、選びます。選ぶ本は、子どもたちがこれまでに読んだ本からでも構いませんし、これから読んでみようかな、挑戦してみようかなという本でも構いません。そして、貸し出された本を教室のスペースに学級文庫として並べるのです。「〇〇くんが選んだ本、読んでみようかな」と子どもたちは自然と手に取るようになります。定期的に活動することによって、本棚の入れ替えとともに、読書活動を進めることができます。
 教師や親がいくら本を読みなさいと言っても、なかなか本を手に取ってくれません。しかし、学級の仲間がすすめると、自然と本を手に取って読むようになります。

 子どもを変えるのは、「子ども」なのです。

 子どもたちが本を手に取るきっかけをいかにつくり出すか、その「場を設定する」ことが、教師の役割だと考えています。この活動に加えて、自分が選んだ本の紹介カードやポップづくりを取り入れています。伝えたいことや心に残った場面を入れてまとめ、掲示するのです。環境づくりが子どもの読書を推進します。
 子どもを読書好きにするために大切にしているもう一つが、子どもの「中心軸」を壊さないことです。子どもたちの中には、虫が好きな子がいたり、花が好きな子、折り紙が好きな子もいたりと、子どもの興味や関心は、ひとりひとり違います。それを均質化してはならないと思います。低学年のときに虫が好きでも、中学年になって視野が広がって宇宙が好きになったり、高学年になると歴史に興味を持ったりするなど、その子の興味や関心ごとは常に変化していきます。
 つい大人がしがちなのが、歴史が好きな子に他のジャンルも読んでもらいたくて、その本を読むのをやめさせようとすることがあります。そうではなく、「歴史が好きなら、だったら、伝記も読んでみたら」など、子どもの興味や関心の「中心軸」に沿って、「だったらこれはどう?」と幅を広げていくことが大切です。「だったら」には、「同じ立場で、活動の流れに従って、その先へと考えを進める」という効果があります。
 まわりの大人の言葉によって、子どもたちの反応は変わります。その何気ない言葉に着目することで、対話を生む言葉があることに気づくのです。

白坂洋一(しらさか・よういち)
筑波大学附属小学校教諭
 

2022.02.01

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