『ぐりとぐら』60周年記念連載「ぐりとぐらとわたし」

60周年記念連載 「ぐりとぐらとわたし」第2回:清美堂 秋田秀明さん

『ぐりとぐら』刊行60周年を記念し、日頃「ぐりとぐら」と関わって下さっている方へのインタビューをお届けする企画「ぐりとぐらとわたし」。第2回の舞台は、「安心・安全・丈夫な本づくり」にこだわりながら、『ぐりとぐら』『おおきなかぶ』『ちいさなうさこちゃん』など、福音館書店の絵本の製本を数多く手がけてくださっている製本会社の株式会社 清美堂。お邪魔した時には、ちょうど『ぐりとぐらのおきゃくさま』の製本が行われていました。同社の社長の秋田秀明さんに、60周年を迎えた『ぐりとぐら』について伺いました。

――『ぐりとぐら』が60周年を迎えましたが、その製本を長らく手がけて下さっているのが、清美堂さんです。

秋田)はい、「ぐりとぐら」シリーズ作品は、今でも2~3か月に1回のペースで、製本を行っています。私はこの会社の3代目で、幼少時代から、その風景を見てきましたから、今でもこうやって変わらずに関わらせて頂いているのは光栄なことだなと感じます。

――秋田さんにとって絵本『ぐりとぐら』はどんな存在でしょうか?

書店に行っても、必ずと言っていいほど置いてくださっていますよね。フェアで積んで下さる書店さんも多いですし、当然のことながら作品を知っている方もとても多い。そういう意味では弊社にとっても非常に大きな存在ですし、その製本を行っているということをとても誇りに思っています。『ぐりとぐら』の製本を手がけている、というのは率直に申し上げて宣伝効果もすごいんですよ(笑)



――製本の上で、こだわっているポイントなどはあるのでしょうか?

基本的には、印刷所さんから出来上がった紙を受け取ったところから製本はスタートします。詳しい工程は、弊社のホームページ をぜひご覧頂ければと思うのですが、届いた紙を断裁するところから始まり、本文部分の背中に強度を補うための寒冷紗という布を貼ってミシンをかけたり、整った本文部分と表紙とを貼り合わせたりなどなど…、一見するとシンプルな構造にみえる絵本には、出来上がりまでに実に様々な工程が存在しています。
技術が進歩するなかで、各工程ごとにやりやすくなっている部分も色々とあるのですが、一方で細かな工夫が必要になる部分は今でも無数にあります。たとえば、絵本を作る上で「糊」というのは、固い表紙と本文部分を貼り付けるのに使用するなど、重要な役割を担っていますが、紙質と合う「糊」を使用しないと、乾いた際に紙が波打ってしまったり、反ってしまったりします。そのため、ブレンドをあーでもないこーでもないと工夫するのは日常茶飯事です。疑似的な乾燥ルームを作って乾き方を見たりするなど、綺麗に仕上がるように常に工夫しているんです。

――一見すると変わらないように見えますが、常に細かく工夫してくださっているから、絵本の質が保たれているんですね。

そうですね、安心して作品を楽しんでもらうために、常に高い品質を維持し続けられるよう頑張らせて頂いています。

――秋田さんの『ぐりとぐら』に関する思い出は何かありますか

幼い頃から工場でいつも作っている絵本でしたから、本当に身近な存在だったのですが、逆にあまりにも身近過ぎて、こんなにも多くの方達に長い間読み続けられている凄い絵本なんだ、というのはいまいちピンときていなかったかもしれません(笑)。社会人になり会社を継いだとき、刷数や発行部数などを振り返り、その歴史の積み重ねに改めて「なんて凄い絵本なんだ」と驚いた覚えがあります。

――改めて60周年を迎えた『ぐりとぐら』への思いと、読者の方へのメッセージをいただけますか

シンプルですが、これからも親子が楽しく読み続ける存在であってほしいですね。そして、そのためにも弊社としては、引き続き安全な本を作り続ける努力をしていきたいと思っています。
先日、ぐりとぐら60周年のニュースを見たある読者の方が、数十年前に買って今も手元にある『ぐりとぐら』の写真をSNSに上げていらっしゃったんですが、それって凄いことだと思うんです。読み継がれ、人の心に残り続けているということですから。これからも2世代、3世代と読み継がれていくような、丈夫で品質の高い製本を続けていきたいと思います。

2023.11.14

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