日々の絵本と読みもの

大浴場、卓球勝負、大広間での夕食……孫とおじいちゃんの二人旅『りょこう』

『りょこう』

こうたくんは、おじいちゃんと二人で旅行にでかけます。目的地は、山あいの温泉旅館。近くには湖もあります。

「ダタンタタン ダタンタタン」。電車はどんどん進み、二人はお昼に駅弁を食べます。車内には、新聞を読んでいる人やおしゃべりしている学生、窓の外を眺めている親子連れなど、さまざまな人が乗っています。



駅からバスに乗り、ようやく旅館に到着です。眺めのいい部屋でひと休みしたら、ボートに乗り、湖を一周します。旅館に戻ると、お風呂へ。温泉の広い大浴場で、「きゅっ ごしごし」。二人は背中を流しあいます。
お風呂から出たら、卓球で真剣勝負。そして、待ちに待った夕食の時間です。大広間にはずらりとご馳走が並び、どのテーブルも賑やかです。こうたくんとおじいちゃんはジュースとビールで「かんぱーい!」。ところが夜、こうたくんは、ホームシックになってしまいます。すると、おじいちゃんは……。



どことなく懐かしい日本の風景が描かれ、ページをめくるたびに、だんだんと旅気分が高まっていく『りょこう』。駅のホームの売店、電車の車内、旅館の和室、お風呂の脱衣所や洗い場、お土産屋などがていねいに描かれます。真上から見たようなユニークな構図はすべてを見渡せるので、思わずじっくり見入ってしまいます。「この人は何をしているのかな」と、こちらの想像力もふくらみ何度も眺める楽しさがあります。さらに、部屋のしつらえからお弁当の中身まで、ひとつひとつ細やかに描かれているので、生き生きとした空気や人々の生活感が伝わってきます。

作者は、俯瞰(ふかん)したような独特の構図で作品を手がけてこられた麻生知子さん。大みそかの様子を定点で描いた『こたつ』、産経児童出版文化賞美術賞を受賞した『なつやすみ』に続くシリーズ3作目になります。ご自身のお子さんとその祖父が、旅をきっかけに大の仲良しになったことが、今作の着想のもとになっているそうです。

絵本のなかの二人も最後の場面、帰りの電車のなかで「ねえ、おじいちゃん。また りょこうに いこうよ」「そうだね、こうた。また いこう」と話します。二人にとってたいせつな思い出となる旅だったことは、この場面に描かれた“あるもの”から感じとることができます。
ぜひ、おじいちゃんと孫の二人旅をたっぷりお楽しみください。

担当M
麻生さんの絵本では、場面ごとに登場するいろいろな食べ物を見るのも楽しみのひとつです。たとえば、二人が食べた駅弁、お母さんに内緒で買ったアイスクリーム、夕食や朝食のお膳、お土産に買ったお菓子などなど。売店や自販機で何を買ったのか、ページを行きつ戻りつ(あるいは、カバージャケットを外してみたり)しながらあれこれ考察したり、発見したり。絵をよむ喜びがいっぱいつまった1冊です。

2025.05.21

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